からだの健康(心身医学)

 

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内科認定医、心療内科指導医・専門医 アレルギー専門医 

 

飯嶋正広

 

 

呼吸器病学とアレルギー学の接点

 

特発性肺線維症(IPF)

 

肺の間質に線維化がおこる病気を「肺線維症」(はいせんいしょう)とよびます。

実は、私共のようなリウマチ専門医は、関節ばかりでなく、常に全身をモニターするように教育を受けているのです。

 

肺もその一つです。リウマチ肺といって、関節リウマチで、肺にこの障害が現れることがあります。

リウマチ肺とよばれる間質性肺炎や肺線維症は、症状として息切れや空咳などがみられます。また、肺に水がたまる胸膜炎が起こることもあります。なお、リウマチの治療薬や感染症でも肺障害を起こすことがあるので、その原因についてよく調べることが重要です。

 

原因が不明な「肺線維症」のなかで最も多いのが「特発性肺線維症」、英語の頭文字をとった略称がIPF(アイピーエフ)です。

 

これは肺胞に“傷”ができ、その修復のためにコラーゲンなどの蛋白質が増加して間質が厚くなる病気です。

 

その結果、咳が出たり、酸素がうまく取り込めず息苦しくなったりします。特発性肺線維症は次第に進行し、肺が固くなり膨らみにくくなる(拘束性障害といいます)ため、呼吸が維持できなくなる場合もあります。初めの頃は安定していても、ある時期から急激に進行しはじめることもあります。
 

一般に肺線維症の約半数は、発症原因がわかりません。このような肺線維症を「特発性肺線維症」(特発性とは原因不明という意味です)と呼びます。しかし、喫煙が、特発性肺線維症を発症する危険因子であると考えられています。50歳以上で発症することが多く、男性に多い傾向があります。
 

特発性肺線維症は、「特発性間質性肺炎」の一種で、国の指定難病に指定されています。一定の条件を満たせば、医療費助成制度が受けられます。

 

まず特徴的な所見を確認します。そして、診断のためには詳細な病歴聴取や診察、各種検査による他疾患の排除が前提となります。

 

他疾患の除外診断を行った上で、臨床所見、病理所見、画像所見により総合的に判断します。

 

・確定診断は外科的生検によるが、急性増悪の誘因となる可能性があるため、典型的臨床像と胸部高分解CT(HRCT)で特徴的な画像所見が見られた場合には臨床的診断が可能になります。

 

主症状:乾性咳嗽と徐々に増悪する労作性呼吸困難

 

・ばち指

 

・進行例:チアノーゼ、右心不全、浮腫

 

合併症:肺癌、気胸、胃食道逆流、肺高血圧、右心不全

 


このように、リウマチ専門医は、リウマチ肺の例でも説明しましたように、関節や骨・軟骨などの運動器以外に、呼吸器、循環器、消化器その他に対しての観察と注意を怠らないように常に心がけていなければならないことになります。