臨床産業医オフィス
<高円寺南労働衛生コンサルタント事務所>
産業医・労働衛生コンサルタント・第一種作業環境測定士・衛生工学衛生管理者
飯嶋正広
産業医による就業上の措置に関する意見のあり方について(No2)
―健康管理のための制度面の課題-
一般定期健康診断の事後措置は、労働安全衛生法で事業者の義務として定められ、一定の指針が示されています。しかしながら、 健康診断の結果をもとに判断される業務と健診結果の関係については言及されていないという制度面の課題があり、産業医実務の実践の上での悩みを生んでいます。
適切な就業上の措置の実施のためには、適切な手順、エビデンスに基づく参考基準、適切な対応ができる医師(産業医)等の確保、事後措置の重要性に対する事業者の理解が不可欠です。
産業医による事後措置は、国内の産業保 健活動における主な日常業務の一つです。
しかしながら、多くの場合、企業文化・慣習、 医師の方針、労働者の健康状態、業務内容 などを総合的に考慮しながら実施されており、 事後措置の適用範囲、内容、手順について 共通の認識が存在しているとは言えません。
事業場の中で労働者の健康診断を実施し、その結果に基づく事後措置を継続いて行うことを一人の非常勤嘱託産業医が担うことは実際上、不可能です。
労働安全衛生法には、衛生管理者の規定があり、労働安全衛生規則第14条で、「産業医は、衛生管理者に対して指導し、もしくは助言することができる」とされています。そこで、法制度上は、健康診断とその事後措置については産業医と衛生管理者が協力して行う形になっています。
衛生管理者の資格は、労働安全衛生法に基づく国家資格です。この資格は都道府県労働基準局長の免許で与えられていますが、免許の要件となる資質としては、「健康診断の結果を個々の労働者に的確に返していくことができる」レベルまでは求められていません。
そのため、産業医と衛生管理者の組み合わせで、健康診断とその事後措置を行う体制を組む場合には、衛生管理者の健康管理に関する素養を高める仕組みや工夫が必要になります。
健康診断の事後措置では、疾病の種類や重症度の異なる有所見者に対応することができなければなりません。そのため、本来であれば、疾病に関するより高度の訓練を受けたチームを構築していくことが必要になってくるわけです。
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