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臨床産業医オフィス

<高円寺南労働衛生コンサルタント事務所>

 

産業医・労働衛生コンサルタント・第一種作業環境測定士・衛生工学衛生管理者

 

飯嶋正広

 

 

ハラスメント対策の本質論(No4)

 

Ⅲ 各論(防止措置の概略)

 

(2)望ましい取り組み(努力義務)

 

B.一元的相談体制の整備:相談窓口を設立する

 

相談窓口を設けて、従業員が安心して相談できる体制を作ることが推奨されています。

 

その際に鍵になってくることは、まず相談窓口の担当者としては、「ハラスメント」に関する知見と解決に向けて誠意を持って取り組める従業員を人選することです。

 

次にプライバシーの保護に努めることです。「ハラスメント」の対応を進めるにあたっては、相談者が何も心配せずに相談できるようプライバシー保護に配慮する必要があります。

相談を対面で行う場合には、他の社員に気兼ねなく出入りできる場所に相談スペースを設け、同じ時間帯に相談者が重ならないように事前予約制にするのが望ましいです。

こうしたプライベート重視の姿勢を社内報や社内のホームページで発信し、社員に周知することも必要となってきます。

 

なお相談方法も対面だけでなく、文書やメール、電話などのやりとりなど多様な方法を組み合わせて行うことが望ましいです。

 

他にも、働きがいに不可欠なのは、働きやすさであるという視点を忘れないことです。

働き甲斐や働きやすさを実感できる職場環境を作り上げて行くためにも、「ハラスメント」が起きないような制度やルールを整える必要があります。

 

また、万が一起きてしまった場合にはうやむやにせず、当事者にしっかりと向き合い解決していくように努めていただきたいところです。「ハラスメント」に本気で取り組む覚悟が、今個人だけでなく、組織全体にも問われているからです。

 

 

C.原因解消の取組

 

(コミュニケーション活性化や円滑化のための研修*、適正な業務目標の設定、など)

*一般的な内容に終始したコンテンツで研修をおこなっても、望む研修効果は期待できません。成功のカギとなるのは、各企業の風土などに合わせたケーススタディです。そのためには各現場での事前取材等を通じ、「オーダーメイド型」のコンテンツを準備して、事例演習グループワークすることによって実現可能になります。

 

「ハラスメント」に関する専門家を外部から招き、その基本的な知識や実態、対策の必要性、具体的な対処方法などを社内の研修やセミナーなどの場で説明してもらうのも良い施策でしょう。厚生労働省もこの点について積極的で、委託事業として全国各地でセミナーや講習会を開催しているので、それらを利用するのも良いでしょう。

 

 
D.労働者や労働組合等の参画

 

(アンケート調査実施、意見交換会実施、衛生委員会活用など)

 

上記の3つのいずれもが、私が顧問となっているいくつかの企業では、すでに自主的に実施されています。

やはり、職場において毎月定期的に衛生委員会が開催されていることが基本になります。

その衛生委員会の議題は年間を通じて必要に応じたテーマが検討されます。季節とは無関係に継続して検討されるべき重要テーマの一つが「ハラスメント」問題であるといえるでしょう。
 

なお「衛生委員会」での議事録は、職員全体に周知されることをもって原則としますが、その前提として、職場全体を集約的に検討するのではなく、より広く、セクションごとに「意見交換会」を実施することによって実効性のある取り組みとすることができます。

その場合、いきなり意見を交換し合う場を持つのではなく、事前に、可能な限り匿名での「アンケート調査」を実施し、その解析からはじまって基本情報を共有することから始まることが効率的なようです。

 

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番外編:水戸駅と隣接する無人駅と臨時駅

 

私は水戸に帰省する際は、決まって常磐線を利用しています。

水戸市は、茨城県の県央からやや北に位置します。東京からの鉄道によるアクセス法としては、古くから水戸線(栃木県小山市小山駅⇒茨城県笠間市友部駅⇒水戸駅:1889年・明治22年開通)と常磐線(茨城県土浦駅⇒友部駅:1895年・明治28年開通)が開通していました。

 

ただし、現在の水戸線は水戸線の名称は旧水戸鉄道の路線だったことに由来しますが、水戸線と称しながら水戸駅及び水戸市域を通らない路線であるというミステリーがあります。

それは、常磐線の開通により、旧水戸鉄道区間のうち友部駅 - 水戸駅間が常磐線に編入されたためです。そのため、残りの小山駅 - 友部駅間が水戸線として残ることになりました。

 

常磐線は、「本線」を名乗らないJR線の中では、国内最長の路線です。山手線内の東京都荒川区の日暮里駅から千葉県北西部、茨城県、福島県の太平洋側を経由して宮城県岩沼市の岩沼駅までを結ぶ東日本旅客鉄道(JR東日本)の鉄道路線(幹線)です。

列車運行上の常磐線は、東北本線の上野駅 - 日暮里駅間及び岩沼駅 - 仙台駅間を含めた、東京都台東区の上野駅から宮城県仙台市青葉区の仙台駅まで (363.5 km) です。

 

水戸から上京するには、近年までは上野駅で下車し、乗り換えて目的地に向かったものでした。

しかし、品川駅 - 上野駅間を含めた「上野東京ライン」の運行開始に伴い、「品川駅 - 仙台駅」を常磐線として表記している例もあり、乗り換えの実際からすれば、常磐線が延長したような感覚です。上野駅は私にとっても永らく東京の玄関としての「心の駅」だったのですが、現在では単なる通過駅になってしまっているのを感じています。

 

さて、水戸市の駅は水戸駅だけではありません。

水戸市と周辺の自治体との合併により、常磐線沿線では東京から近い順に、内原駅(旧、東茨城郡内原町)、赤塚駅、偕楽園駅(臨時駅)、水戸駅と続きます。

偕楽園駅は、偕楽園の梅まつりの時期に合わせて営業する臨時駅です。営業時間中(当該期間の土曜・休日の9時10分頃 - 15時30分頃)の下り列車(水戸方面)のみ停車します。

普通列車の他特急列車「ひたち」「ときわ」も停車し、臨時の快速列車や急行列車も停車するものもあります。 2012年まで、IC乗車カード(Suica等)は当駅では利用できなかったが、2013年2月20日から簡易Suica改札機が設置されました。

 

私は、赤塚駅-水戸駅間の風景は、県庁所在地としては最高水準であると評価しているのですが、未だに偕楽園駅で下車したことはありません。また、途中下車が可能であればよいのですが、そもそも、この駅の上野方面ホームは設置されていません。

そのため上野方面からの下り列車で水戸駅までの切符で乗車した場合に限り、偕楽園駅で精算済券を受け取れば再度偕楽園駅から水戸駅まで乗車可能なようです。

 

また水戸駅から福島県郡山市の安積永盛駅に向かう水郡線では、水戸駅の次の常陸青柳駅(無人駅)も水戸市の駅です。無人であるばかりでなく簡易Suica改札機も設置されていないため不便を感じます。

しかし、この駅の近くには水戸市営の青柳プールがあり、水戸の古泳法である水府流の稽古場にもなっています。私は単独で水氣道の新航法創出のインスピレーションを得るためにしばしば通っています。

中心駅に隣接する駅が無人駅であるというのはインパクトがあるのではないでしょうか。

 

かつては那珂川駅という貨物駅もありました。1890年(明治23年)に水戸鉄道(初代)によって開設され、その前年の4月5日に水戸を訪れた正岡子規が、敷設工事の様子を『水戸紀行』に記しています。那珂川の水運と鉄道輸送の結節点として機能した駅でしたが、1984年(昭和59年)に廃止されました。

 

もう一つが、大洗鹿島線です。これは茨城県水戸市の水戸駅から鹿嶋市の鹿島サッカースタジアム駅に至る鹿島臨海鉄道が運営する鉄道路線です。水戸駅の次の東水戸駅、その次が常澄駅(旧、東茨城郡常澄村)までが水戸市です。路線上の終点である鹿島サッカースタジアム駅を通る水戸方面との列車はすべて鹿島臨海鉄道所有の気動車で運行され、JR鹿島線鹿島神宮駅まで一区間乗り入れます。

 

列車は通常2両編成のワンマン運転で、途中ある13駅のうち、大洗駅と新鉾田駅を除いて無人駅です。つまり、水戸駅の隣駅の東水戸駅も無人駅なのです。なお鹿島サッカースタジアム駅はサッカー開催日のみ営業する臨時駅です。

<はじめに>

 

 

前回は「ドライマウス」に効果のあるツボを紹介しました。

 

 

「少商」は手の親指の爪の生え際の外側にあり、

 

 

「大敦」は足の親指の爪の生え際で人差し指側にあり、

 

 

「頬車」下顎のエラから1cm程上のくぼんだところにあるというお話でした。

 

 

 

今回は「吐き気」に効果のある「大陵(だいりょう)」「中封(ちゅうほう)」「内関(ないかん)」のツボを紹介しましょう。

 

 

<大陵>

Pasted Graphic 3

 

手のひら側で手首のシワの中央にあります。

 

 

<中封>

Pasted Graphic 4

 

内くるぶしの前のくぼみにあります

 

 

<内関>

Pasted Graphic 5

 

手のひら側で手首の中央から指3本分肘側にあります。

 

 

 

杉並国際クリニック 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

 

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Mais à midi, la fièvre était montée d‘un seul coup à quarante degrés, le malade délirait sans arrête et les vomissements avaient repris. Les ganglions du cou étaient douloureux au toucher et le concierge semblait vouloir tenir sa tête le plus possible éloignée du corps. Sa femme étaiet assise au pied du lit, les mains sur la couverture, tenant doucement les pieds du malade. Elle regardait Rieux.

・・・Écoutez, dit celui-ci, il faut l’isoler et tener un traitement d’exception. Je téléphone a l’hôpital et nous le transporterons en ambulance.

しかし、正午になると熱は急に40度まで上がり、うわごとは止まず、嘔吐も再び始まった。首のリンパ節は触ると痛いので、管理人はなるべく頭を身体から離すように伸ばしておこうとしているかのようであった。女房はベッドの足元に座り、病人の両足を毛布の上から両手でそっと抱いていた。彼女はリウに注意を向けていた。
リウは「ご主人を隔離して、特別な手当てを施さなければなりません。病院に電話をするので、救急車で搬送しましょう。」と言った。

 

 

Deux heures après, dans l’ambulance, le docteur et la femme se penchaient sur le malade. De sa bouche tapissée de fongosités, des bribes de mots sortaient: « Les rats!» dissait-il. Verdâtre, les lèvres cireuses, les paupières plombées, le souffle saccadé et court, écartelé par les ganglions, tassé au fond de sa couchette comme s’il eût voulu la refermer sur lui ou comme si quelque chose, venu du fond de la terre, l’appelait sans répit, le concierge étouffait sous une pesée invisible. La femme pleurait.

・・・N’y a-t-il donc plus d’espoir, docteur?

・・・Il est mort, dit Rieux.

2時間の後、救急車の中で、医師と女房は病人の上に身を乗り出していた。カビに覆われた彼の口から、「ネズミのやつらめ!」という言葉がとぎれとぎれに発せられた。緑をおびた土気色となり、上下の唇は蝋のように、両瞼は鉛色に、息は痙攣して短く、諸々のリンパ節のしこりによって身が引き裂かれ、寝床の奥に自分の身を畳み込みたがっているのかのように身を押し固め、あるいは、あたかも地底の何者かに絶え間なく呼びたてられているかのように、管理人は目に見えない重苦しさにあえいでいた。女房は泣いていた。

・・・もう助かる見込みはないのでしょうか、先生。

・・・ご臨終です、とリウは言うのであった。

 

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聖楽院主宰 テノール 

飯嶋正広

 

音楽ホールの規模の分類について

 

音楽会に出演したり、主催したりする場合に、予め確認しておきたいのが、演奏会場の規模です。大ホールを擁しているような施設では、ほとんど小ホールも併設されているようですが、大・小ホールの明確な分離基準や定義はなさそうです。
 

私が知っている小ホールの中で、もっとも存在感が大きくインパクトがあるのは、上野の小ホールです。小ホールと名乗っていても649席あり、私にとっては十分に大ホールなのです。ちなみに、東京文化会館大ホールは2303席であり、これは特大ホールといって良いでしょう。
 

以下が、座席数によって、私の勝手な基準で分類したホールの規模の目安です。

 

サロン(100席未満)、小ホール(100~300席未満)、中ホール(300~500席未満)、大ホール(500~1500席未満)、特大ホール(1500席~2500席未満)、巨大ホール(2500席以上)
 

 

<日本の巨大ホールリスト>

東京国際フォーラムホールA:5012席

 

パシフィコ横浜国立大ホール:4538席

 

NHKホール:3400席

 

日比谷野外大音楽堂:3119席

 

名古屋国際会議場センチュリーホール:3012席

 

TOKYO DOME CITYホール:3000席

 

愛媛県民文化会館(ひめぎんホール):3000席

 

河口湖ステラシアター:2991席

 

大阪国際会議場(グランキューブ大阪):2754席

 

大宮ソニックシティー:2505席

 

愛知県芸術劇場:2500席

 

以上、11施設ですが、私がステージに立ったことがあるのは、大宮ソニックシティーのみです。

 

「浜辺の歌」(林古渓作詞、成田為三作曲の歌曲)を歌いました。

 

そして、以下が、私がステージで歌ったことがあるホールの一覧です。

 

杉並区勤労福祉会館(西荻地域区民センターと併設)

住所:杉並区桃井4丁目3番2号

ホール(定員366:303席)

<大ホール(500~1500席未満)>2施設

 

江東区文化センターホール(511席)

*フェリスホール(約500席)

⇒第3回山手の丘音楽コンクール本選会場

 

 

<中ホール(300~500席未満)>10施設

府中グリーンプラザけやきホール(494席)

⇒第22回日本クラシック音楽コンクール(声楽部門)予選会場(予選通過)

 

 

四谷区民センター(452席)

 

 

*横浜みなとみらいホール小ホール(440席)

⇒第22回日本クラシック音楽コンクール(声楽部門)準本選会場(准本選通過)

 

 

イタリア文化会館アニェッリホール(370席)

⇒第3回東京国際声楽コンクール本選会場(5位入賞、男声1位)

 

 

杉並区勤労福祉会館(366席)

 

江戸川区小松川さくらホール(351席)

 

文京シビック小ホール(341席)

 

 

旧東京音楽学校奏楽堂(310席)

⇒奏楽堂日本歌曲コンクール予選会場(予選敗退)

 

 

*西宮市フレンテホール(300席)

⇒日伊声楽コンコルソ一次予選会場(予選敗退)

 

 

*和光市民文化センターサンアゼリア小ホール(229~300席)

⇒全国「叱られて」歌唱コンクール予選会場(予選敗退)

 

 

 

<小ホール(100~300席未満)>13施設

江東区豊洲シビックセンターホール(298席)

 

かつしかシンフォニーヒルズアイリスホール(298席)

⇒ 第22回日本クラシック音楽コンクール(声楽部門)本選会場

 

ムーブ町屋ムーブホール(296人)

⇒ 第3回東京国際声楽コンクール準本選会場(本選進出)

 

*茨城県総合福祉会館コミュニティーホール(296席)

 

墨田トリフォニー小ホール(252席)

 

ドイツ文化会館OAGホール(250席)

角筈区民ホール(236席)

 

音楽の友ホール(224席)

 

新宿文化センター小ホール(210席)

 

めぐろパーシモンホール小ホール(200席)

 

 

*千葉市ハーモニープラザ分館ハーモニーホール(200席)

⇒第3回山手の丘音楽コンクール予選会場(予選通過)

 

 

杉並公会堂小ホール(194席)

⇒第39回国際芸術連盟新人オーディション会場(オーディション合格)

 

こうとう公会堂(ティアラこうとう)小ホール(140席)

 

 

<サロン(100席未満)>

日本声楽家曲会谷中会館初音ホール

⇒日本声楽家協会オーディション(不合格)

 

同仁キリスト教会礼拝堂(コンサートホール)

 

 

タカギクラヴィア松涛サロン(およそ40席)

⇒及川音楽事務所オーディション会場(オーディション合格、特別賞)

 

荻窪カフェ&ほーるwith 遊ぶ(20~40席)

 

音海(およそ10席)

 

 

 

<音楽大学・音楽学部内施設>

東京音楽大学池袋キャンパスJ館スタジオ

 

東京藝術大学奏楽堂フォアイエ

 

東京藝術大学音楽学部地下教室

⇒東京藝術大学音楽学部別科実技試験(不合格)

 

武蔵野音楽大学モーツアルトホール(リサイタル・室内楽用の約100席)

⇒武蔵野音楽大学別科実技試験(合格)

 

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認定内科医、心療内科指導医・専門医、アレルギー専門医、リウマチ専門医、認定痛風医

 

飯嶋正広

 

賢い選択?<赤旗サイン>(続々)

 

2011年、米国内科専門医機構財団(ABIM)は、「賢明な選択:持続可能なシステムを構築するための医師、患者、医療界の責務」をテーマとしたフォーラムを開催しました。これを発端に、エビデンスに基づいた適切な医療資源の活用を目指した“Choosing Wisely(賢く選択すること)キャンペーン”が世界的に広がり今日に至っています。

 

そこで、科学的根拠に準拠した判断材料とされる<賢明な選択>キャンペーンが強調している10の推奨項目ですが、東京都杉並区の臨床の現場からすると、世界標準として推奨されている項目の中には、いささか現実離れしているものが含まれているといわざるをえません。について、引き続き検討を加えます。

 

5 ハイリスクマーカーが存在しない限り、心臓由来の症状がない患者の初期評価において、負荷心臓画像検査や非侵襲的画像検査を施行しないこと


9 低リスクの外科的処置の前に定例の術前検査を行わないこと

 

10無症候性の患者の定期的なフォローアップとして毎年の負荷心臓画像検査      
を行わないこと

 

 

上記の項目5および9で問題になるのは、リスクをどのように考えるか、と言うことであろうと思います。

また、それをもとにリスクの大きさをどのように評価すべきかも大きな課題です。

 

ハイリスクというのは、一般にはある疾病が発症する頻度が高いことを意味するものであって、必ずしも疾患の重症度を意味していません。

 

5の場合は、「心臓由来の症状」という表現が用いられているため、心不全のリスクを念頭に置くと理解しやすいかもしれません。そして、リスク評価のためには一定の検査が必要です。

ですから、ハイリスクマーカーとは何かということを明確にしておかない限り、この項目は内部矛盾を呈することになります。

この項目を言い換えれば、心臓由来の症状がない患者は、負荷心臓画像検査や非侵襲的画像検査を行わなくともハイリスクでないことになります。

これは、にわかには同意しかねます。そこで、ハイリスクかどうかは別義として、その指標となると考えられる心疾患マーカーについて説明します。

 

心疾患マーカーを単純に表現すれば、心不全の指標といえるでしょう。心不全とは、生活習慣病や環境要因が誘発した種々の異常によって心臓のポンプ機能が低下し、末梢主要臓器の酸素需要量に見合うだけの血液量を拍出できない結果、生活機能に障害をきたした状態の総称です。心不全は無症候期間の間も病状は進行し、自覚症状が表れてからは数年で死に至る場合もあります。

 

したがって、心臓由来の症状がないということを検査の適応決定において重要な指標にすることは明らかに誤りであると言わざるを得ません。むしろ、より早期に心機能障害を発見し、治療を開始、また治療効果の確認を行うことは生命予後、QOLの向上に欠かせません。

 

心不全の原因疾患の一つに心筋機能障害があげられます。心臓には冠動脈を通じて血液が流れ、栄養分や酸素が供給されています。この冠動脈が動脈硬化やプラークなどによって狭められ、十分な血液が流れなくなった状態を狭心症、さらに冠動脈が閉塞し、その先に血液が流れなくなり、心筋が壊死した状態を心筋梗塞と呼びます。

ともに胸痛を伴い、迅速・的確な処理が施されないと死に至る場合があります。

 

診断を行う上で、かつては発症者の病状や心電図変化が頼りでした。

しかし、加齢や糖尿病などを原因とする中枢神経系の障害は胸痛を自覚しづらいものになります。

その場合でも明確な心電図異常として現れにくい心筋梗塞症例も珍しくありません。

 

このような背景からすれば、心臓由来の症状がないということを検査の適応決定において重要な指標にすることは明らかに誤りであると言わざるを得ません。このような場合、心筋細胞の壊死により血中に流出してくる心筋特異的な蛋白を捉えることで、より早期、確実な診断につながってきています。

その際に利用される心不全マーカーとしては、BNPもしくはANP、心筋マーカーとしては、心筋トロポニンI、CK-MB、ミオグロビンなどです。

しかし、非侵襲的画像診断の中でも心臓超音波検査は心臓由来の自覚症状がなくとも、高血圧や動脈硬化を伴う患者さんの心疾患のスクリーニングに有用であるし、頸動脈超音波検査と共に定期的にチェックすることは一般的になっています。

 

9の低リスクの外科的処置の前に定例の術前検査を行わないこと

という項目も同様です。

定例の術前検査の範囲が明確ではないことも問題です。その場合であっても、低リスクかどうかを判断するための検査を否定するべきものではないことは当然であると理解すべきでしょう。
 

 

以上、<エビデンスに基づいた適切な医療資源の活用>という社会の大義名分が、最終的に個々の患者さんにとって真に<賢い選択>になるかどうかは定かではないということになるのではないでしょうか。医療費の制度的節約が、個々の患者にとっての命や健康の節約に繋がらないことを祈るばかりです。

 

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水氣道実践の五原理・・・集団性の原理(結論)その1

 

(教学不岐・環境創造の原則)

 

所属集団から切り離された「孤」からの復活
 

水氣道の着想は外国からのものではなく、日本的霊性によって生まれました。これは偶然ではなく必然であったように思われます。なぜならば、日本文化の特徴は自然により近づこうという意志、「自然回帰」が強く働いているからです。

 

自然と感じる「もの」や「こと」の中には、自然発生的な家族や共同体という集団があります。

 

日本人は古代から自然の中に住み、自然の流れに逆らわない生き方をしてきました。

それは人間より自然の猛威の方がはるかに強大で抗うことが不可能であることを謙虚に受け止めなければ生き残ることが難しかったからだと思います。

そして、地縁・血縁という共通の環境基盤によって生成した自然発生的な大家族が、作為的ではない歴史的伝統的な「縁」によって共同体として連合し、その知恵と力を結集し、幾多の試練や危機を乗り越えてきた運命共同体として、この世での適者となって生存を図ってきました。

 

そのため、日本人の祖先たちは、永遠性ということより、有限性、刹那的であること、朽ちてゆくこと、「空」の理論に従い、流れに委ねることが大切であると悟りました。

そして、集団から離れた個人として、全体の大きな流れに抗うとすることを企てることは、孤立を余儀なくされたり、究極の危機的状況から脱出したり、克服したりしなければならないときに限られていました。

 

私たちの祖先は、自然に密着した暮らしの中で、現実の世界を冷静に、しっかりと受け止めてきました。

自然に回帰する思想、無理なく生ききる思想、それが自然とともに生きるという考え方に帰結していきます。ただし、集団の中で社会的な存在としてありながらも、自己実現をはかり、充実した「個」の人生、それ以外に「真理」への道はありません。

 

この考え方は現代を生きる上でも、極めて重要であり、水氣道の本質に繋がるものなのです。ただし、日本的霊性における「個」とは、所属集団から切り離された「孤」ではないのです。

 

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内科認定医、心療内科指導医・専門医 飯嶋正広

血液病学と循環器病学の接点

 

<抗血栓療法の微妙な戦略>No4

 

抗凝固薬の微妙な使い分け

 

急性心筋梗塞、脳血栓症、肺塞栓症などでは、血栓を溶解することにより血流を回復させることが必須になります。そうした治療目的で使われるのが血栓溶解薬です。ウロキナーゼや組織プラスミノーゲンアクチベータ(t-PA)がその代表です。

 

また、形成された血栓の進展防止、血栓症の予防ないしは再発防止の目的でつかわれるのが経口抗凝固約であり、ヘパリンやワルファリンを用います。とりわけ心房細動例では血栓塞栓症予防が重要な管理課題となるため、綿密なリスク評価がなされます。

その際に広く用いられているのがCHADS₂スコアというリスク評価スコアです。年齢以外は、すべて重要な関連をもつ基礎疾患の有無によってスコア化されます。

 

CHADS2

 

このスコアの合計点は抗凝固療法を検討する上で参考にすることができます。

 

スコア2点以上で、抗凝固療法推奨、

 

スコア1点以上で、抗凝固療法を考慮若しくは推奨

 

という基準が広く受け入れられたいます。

 

 

抗凝固療法としてワルファリンを用いる場合は、プロトロンビン時間を指標にします。

それはワルファリンに対する感受性には個人差が大きく、出血リスクが高い場合があり、またワルファリンは他薬の影響を受けやすい特徴をもつからです。

プロトロンビン時間PT(prothrombin time)は、血液の凝固因子に関する指標の一つです。専門的には凝固プロセスの外因系及び共通系の凝固異常を判定する検査として用いられています。

プロトロンビン時間の国際標準比であるINR(PT-INR)が1.6~2.6(ただし、若年のハイリスク症例では2~3)になるよう投与量を調節します。

 

なお、ビタミンK₂投与中の患者さんは、ワルファリンを投与しなければならない場合には、ビタミンK₂を中止しなければならないので、骨粗鬆症の治療のためにビタミンK₂製剤(グラケー®、後発品メナテトレノン®)を内服している方は注意が必要です。ちなみに、杉並国際クリニックでは、骨粗鬆症の治療のためにビタミンK₂製剤を処方する場合には、脳血管系障害リスクが低い方のみに限定しています。
 

ただし、非弁膜性心房細動による脳卒中の予防に用いられる直接経口抗凝固薬(DOAC)は、ワルファリンと比較し、脳出血の品動画少ないというメリットがあり、上記のINRのモニターも不要です。ただし、DOACのなかでダビガトランは活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)のトラフ値が80秒以上、また同じく、リバーロキサンではPT値が20秒以上でそれぞれ出血性合併症が増加します。
 

いずれにしても、抗血栓薬の重大な副作用は過剰投与による出血です。しかし、どの程度が過剰量になるかは個人差が少なくありません。たとえば、高血圧患者などでは特に注意が必要です。その場合、頻回の凝固学的検査及び貧血の有無の確認のための血算の評価が必要になります。

 

 

 

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臨床産業医オフィス

<高円寺南労働衛生コンサルタント事務所>

 

産業医・労働衛生コンサルタント・第一種作業環境測定士・衛生工学衛生管理者

 

飯嶋正広

 

 

ハラスメント対策の本質論(No3)

 

Ⅲ 各論(防止措置の概略)

「ハラスメント」に対して企業はどのような対策をすべきか

 

職場での「ハラスメント」にどう対処すれば良いのでしょうか。厚生労働省では、その予防から事後対応に至るまでのサポートガイドを出しています。

 

(1)講ずべき措置(義務)
  

A.方針の明確化及びその周知・啓発
(防止規程などを定めて社員に周知すること)

 

A-1法律を周知する
まずハラスメント防止に関連するさまざまな法律が規定されていることを企業内に周知することが対策の出発点として重要となってきます。

1999年、男女雇用機会均等法では職場でのセクシャルハラスメントの防止措置を事業主に義務付けました。また、2017年には男女雇用機会均等法や育児・介護休業法が改正され、妊娠・出産・育児休業などに関するハラスメントの防止措置も事業主に義務付けられています。

こうした法律が、どのような背景が課題となって成立し、どのような目的のために実施されるのかなど、制度の趣旨を理解することが不可欠の準備事項になるでしょう。

 

A-2対処の規定や周知を行う

就業規則の規定やパンフレット、社内報などを通じて職場での「ハラスメント」への対処の仕方を周知するのも上策であるとされます。「どんな行動がハラスメントになるのか」「ハラスメント行為をした場合、どんな処分が下されるか」などを書き記し、社員に徹底を呼びかけることによって、法律より具体的に解説し、身近な問題として認識してもらえるようになることがその目的となります。

 

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一般社団法人 日本温泉物理医学会

認定温泉専門医(登録番号第150号)/温泉療法医(登録番号686号)

 

飯嶋 正広

 

 

「知られざる茨城の名湯・秘境」シリーズ

 

第二弾:常磐うぐいす谷温泉 竹の葉(北茨城市)その6

 

<「常磐うぐいす谷温泉竹の葉」の味わい方・私の温泉養生法>

 

「常磐うぐいす谷温泉竹の葉」は利用場所(住所:茨城県北茨城市磯原町磯原2275)の名称であり、利用源泉名は常磐うぐいす谷温泉、湧出地は北茨城市磯原町磯原2419であることから、湧水地と利用場所は接近していることがわかります。
 

我が家の家族を含め計4名の官能試験で気になった点は、臭気です。娘たちは消毒臭を感じたそうですが、確かに私自身もはっきりと感じました。逆に、硫化水素臭は感知できませんでした。

これは、屋内の大浴場では顕著でしたが、大浴場に隣接した露天風呂では感じ取れませんでした。幸い内湯も半露天風呂であり、風通しが良いためか、入浴してしばらくすると塩素臭は気にならなくなる程度でした。
 

入浴の仕方には、全身浴と部分浴があります。最近では、各地で脚浴(あしよく)が可能な屋外施設が増え、また家庭の浴槽でも半身浴を楽しむこともなされているようです。

 

私は、屋内大浴場の消毒臭を好まないので、短時間の全身浴で温めたあとに、隣接する露天風呂に移動して、ゆっくり入浴することにしました。露天風呂の利点で注目すべきは、体幹と四肢をしっかり温めることができる一方で、頭部・顔面・頸部までが新鮮な外気に触れて適度に冷やされるため、いわゆる「頭寒足熱(上寒下熱)」の状態を維持できることです。

そのために、入浴によるのぼせが生じにくい、ということです。

 

いわゆる更年期障害の女性などは、まさにこの逆の状態、つまり、上熱下寒により心身の不調を来すので、家庭においては半身浴、温泉地では露天風呂を試してみるのが良いでしょう。

 

また女性に限らず、デスクワーク中心で、運動不足となるため、頭痛や肩こりに悩む男性諸君にも、同様にお勧めしたいと思います。
 

 

快適であるため少し長めに入浴してしたために、全身が火照る感じとなったため、客室のテラスの椅子にゆったりと腰をかけてコーヒーを楽しんでいると、渓流からの冷気にさらされ、少しずつ両脚が冷えてきました。

そこで、試してみたのが内湯の露天風呂での部分浴でした。はじめは足だけでしたが、次に膝まで、やがて半身浴、そして再び全身浴で仕上げで上がりましたが、一日中心身か爽やかで、快適に活動を続けることができました。

 

「常磐うぐいす谷温泉竹の葉」の<温泉の成分と使用説明>によると、温泉は加温、循環ろ経過式(循環ろ過装置使用)、消毒(塩素系薬剤使用)、源泉100%使用であることが表示されています。

 

茨城県内において、果たして「源泉かけ流し」式の温泉が存在するのかどうか定かではありませんが、たとえ源泉100%であっても、泉水の再利用をせざるを得ない場合には、消毒は不可避の条件と言うことになります。

その場合の塩素濃度が気になるところですが、表示されていません。また、当然ではありますが、<〇温泉の飲用について この温泉は飲料用ではありません。>つまり、飲泉禁止ということです。

 

飲泉(いんせん)とは、温泉を飲むという行為、またはそのことによって病気の回復などの効能を得ようとすることです。 湯治においては、温泉に入るだけではなく、飲泉を行うことによってさらに回復効果が高まるという考えが日本や欧州にありました。

 

特に炭酸泉などは「霊泉」といわれ、薬効が高いものとして珍重されたほか、嗜好飲料として飲まれることもありました。サイダー飲料の原料として炭酸泉が用いられた代表的事例としては、平野鉱泉の「三ツ矢サイダー」や有馬温泉の「有馬サイダー」などがあります。

 

現在でも、露天風呂の注ぎ口などにコップや柄杓などを設置して利用者に飲ませたり、別途蛇口を設置して、飲泉設備として整備したりしている例があります。

温泉といっても循環風呂の注ぎ口のお湯など衛生上問題がある場合や、保健所に飲泉許可を取得していないために飲泉が禁じられている場合もあるので、温泉成分表の掲示で飲用可能と表示されていない場合には、飲泉をお勧めすることはできません。

なお東京都の温泉では飲泉は許可されていません。なお、全国に名高い箱根温泉でもほとんどが飲泉不可です。

 

温泉が飲泉可能な施設では、温泉分析表別表(温泉適応表)などに「飲泉する場合の適量」が記載されていると存じますので、その記載を見つけて、しっかり読んでから温泉を飲みましょう。

 

かみしめるようにゆっくりと少しずつ、時間をかけて飲むと効果的です。浴室にて飲んでも良い場合は、源泉投入口や、専用の源泉飲泉場所に「コップ」が置いてありますので、新鮮な湯(源泉)を飲みましょう。ただし、湯船の温泉は飲まないでください。 
 

そこで、茨城県内で飲泉可能な温泉を検索したところ、浅川温泉・弁天の湯(茨城県大子町)に辿りついたのですが、閉館してしまったとのことです。とても残念です。私のこの「知られざる茨城の名湯・秘境」シリーズ、もっと早くから始めておくべきだったのかもしれません。