『聖楽院』便り

 

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第8回なかの国際声楽コンクール応募準備を始めてみたら・・・No2

 

第8回なかの国際声楽コンクールの募集要項をネット検索してみました。


参加資格 18歳以上の男女。

声楽に興味のある方どなたでも

 

演奏曲目 オペラアリア、歌曲

演奏条件 原語で歌唱すること

 

審 査 員 岸本力 (バリトン 二期会ロシア東欧オペラ研究会代表) 他

 

 

懐の広いコンクールですね。しかし、なぜ私が10年間の沈黙を破って、このコンクールに参加する気になったかといいますと、それは審査員の聴く耳に注目したからです。

 

日本歌曲、ドイツ歌曲、イタリア歌曲それにフランス歌曲あたりまではたいていの審査員は適切な判断をしてくださることでしょう。しかし、ロシア歌曲となるとそうは問屋が卸しません。ロシア語とロシア声楽曲の専門家が審査員の中にいなければ難しいのではないかと考えた次第なのです。

 

ですから、私は本選ではロシア声楽曲でチャレンジするつもりなのです。

 

岸本先生は、武蔵野音楽大学声学科の講師です。

 

私は数年前の二期会愛好家クラスの夏季スクールで、はじめてバリトンの岸本力先生のクラスでレッスンを受けました。

そして昨年末の12月12日(日)に、久しぶりに、個人としては初めてのレッスンを受けました。

 

それは、ロシア歌曲やロシア・オペラの専門家である岸本先生が審査員を務める<中野国際声楽コンクール>であれば、ロシア語の歌をきちんと審査していただけると考えたからです。

 

私は、チャイコフスキー作曲、オペラ『エブゲニー・オネーギン』第2幕第2場でレンスキーが歌うアリア「青春は遠く過ぎ去り」の楽譜をもってレッスンを受けました。

 

 

まずは、発声練習からお願いしました。独自のスケールでのレッスンでした。     

 

「もう少し高音がだせれば・・・」

というご評価でした。

 

次にロシア語の歌詞の音読ですが、岸本先生が音読するのを聴かせていただく方法と私自身が音読して直していただく方法のいずれかの選択を与えていただきました。

 

私は後者の方法を選択しました。発音方法が微妙な箇所がいくつかあったのですが、すべてわかりやすく教えてくださいました。私の事前準備の努力を評価してくださいました。

 

その後、アリアを通して歌いました。「声のきれいなテノールです。発声練習の時には出せていなかったA(五線譜の上のラ音)が、歌っているときにはしっかり出ています。」とのコメントをいただきました。

 

2回目を通して歌ったあと、「言葉を明確に発音しようとするあまり、メロディーラインが途切れがちで流れていません(レガートに歌えていない)」とのご注意を受けました。そして3回目を通したところ、「今度は、しっかりと歌えていました。」というご評価をいただきました。

 

そして、このアリアは難度が高い曲であるため、この曲を上達させるために、同じくチャイコフスキーの歌曲「憧れを知る者のみが」をレッスンすることを勧めていただきました。

 

二日後には、私の自宅に、この曲の楽譜を郵送してくださいました。この曲の作詞者はドイツの文豪・詩人ゲーテです。
  

 

参考音源1)

Nur wer die Sehnsucht kennt

作曲:チャイコフスキー「ただ憧れを知る者だけが」

作詞:ゲーテ(ドイツ語歌詞)

エリーザベト・シュヴァルツコップ(ソプラノ)

 

 

参考音源2)

НЕТ, ТОЛЬКО ТОТ, КТО ЗНАЛ...

 

作曲:チャイコフスキー「いいえ、知っているのはただ一人だけ...」    

 

訳詞:ミェーイ(ロシア語歌詞)

 

ガリーナ・ヴィシネフスカヤ(ソプラノ)

 

 

よろしければ是非聴き比べてみてください。

ドイツ語やロシア語の歌詞の意味はわからなくとも、言語によって歌の印象が大きく異なって感じられるでしょうか。ゲーテの詩はドイツ語ですから、ドイツ語で歌う方が良いにきまっている、と考えるのは私の理性です。

 

しかし、実際にロシア語版を聴いてみると、私の感性はロシア語の歌詞の方がチャイコフスキーのメロディーに馴染んでいると言っているのです。もっとも、タイトルからしてニュアンスが大きく違っていることに気づいた次第です。

 

私は、第8回なかの国際声楽コンクールの本選に出場できたとしたら、チャイコフスキーの次の2曲(ロシア語)とすることで岸本先生のご了解を得ました。

 


#1.チャイコフスキー作曲

歌曲「いいえ、知っているのはただ一人だけ...」

 

#2.チャイコフスキー作曲

オペラ『エブゲニー・オネーギン』第2幕第2場より

レンスキーのアリア「青春は遠く過ぎ去り」