『水氣道』週報

 

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水氣道実践の五原理・・・統合性の原理(急論)

(心身統合・心技体の原則)

 

 

私たちは、しばしばスランプに陥ったり、本来の実力を発揮できていなかったりすることを経験します。超一流の競技者でさえ、「心・技・体」、その3要素のどれかに欠陥があるか、あるいはそれぞれの間でのバランスやハーモニーが崩れるか、などによって負のスパイラルが生まれているようです。

 

私たちはコミュニケーションや仕事が上手くいかないとき、相手や組織との共同作業が空回りして相互に補い合ったり助け合ったりすることが困難な場合に、「歯車が噛み合わない」という言葉を使うことがあります。その噛み合わない歯車とは「心・技・体」の3つのことだとも言えます。 その3つが噛み合っていないと相互の歯車が上手く噛み合いません。そうなると自分の歯車も相手の歯車も回らないということになります。
 

これは、相手の存在を前提としない場合でもあてはまります。たとえば、本来一体であるはずの心身がかみ合わなくなった状態で精神と身体を直接再統合させることは簡単ではありません。そこで、両者を繋ぎ一体化させる媒体が必要になってきます。その媒体こそが技なのです。心と体の間に技を置けば、心・技・体になります。逆に、「心と体を統合するために役立つことはすべて技である」、ということができると思います。水氣道の技とは、そのようなものすべてを指しています。したがって、心身医学療法は水氣道の技に含まれると考えてくださって結構です。

 

そもそも「心・技・体(しんぎたい)」とは、心(こころ)技(ぎじゅつ)体(からだ)全てバランスが整ったとき、最大限の力が発揮できるという教訓のための題目です。

 

感覚は人それぞれだと思いますが、共通しているのは「3つの歯車」が噛み合っている状態だということです。「3つの歯車」が噛み合うようになると、エネルギーが損なわれることなく効率よくパフォーマンスに反映されるようになります。そのような状態をしばしば感得できるようになると、日常の生活の中にもそのような状態が生かせるようになります。

 

何か上手くいかない時、どうも自分の持っている実力を発揮できていないと感じるとき、この「心・技・体」のバランスをチェックしてみるのがよいです。

 

実際の方法としては、これら3つの歯車は気持ちよく回っているか、無駄な力が入っていたり、いつもと違った違和感を覚えたりということがないかどうか確認してみることです。これをボディ・スキャンといいますが、水氣道では、稽古中に特別の注意を払わなくとも、これを自然に行なえるようになってきます。


このような習慣が自然に身についてくる頃には、今の自分に足りないもの、やるべきことの課題がしっかりと見えてくるはずです。

 

このような課題を大切にしながら稽古を続けていくうちに、あらゆる状況において、最大のパフォーマンスを発揮することができるようになっていくことでしょう。 水氣道の目指すものは、一般のスポーツや武道とは大きく異なります。水氣道での心技体は、他者との勝負で勝つことを目的とするものではないということをお受け止めください。

 

体づくりや体力というものは徐々に身についていくものであるのに対して、技術の習得、とりわけ「技」の体得は一瞬で得られることがあります。その瞬間の感覚としては、特段の無理をしてないのに全てうまくいく感じです。そのような瞬間は、世俗の雑念が打ち払われ、研ぎ澄まされ突き抜けたような爽快な解放感を伴うものです。このときに、こころとからだが一体になったことを実感することができるのです。ただし、日常の稽古を地道に続けない限り、確かな技を身に着けることはできないのは言うまでもありません。

 

水氣道で、自分の現状を理解し、課題に対する自分なりの対処方法を身につけることができると、生活全般にわたって発揮できる実力(パフォーマンス)の向上につながっていきます。こころも、技術や体力トレーニングと同じように継続的に稽古することが必要です。