こころの健康(身心医学)

 

認定内科医、心療内科指導医・専門医、アレルギー専門医、リウマチ専門医、認定痛風医

 

飯嶋正広

 

こころの健康(身心医学)では、精神神経科や心療内科の他に(脳)神経内科やアレルギー膠原病をとりあげることを先週説明いたしました。

 

そこで、今回は、さっそく神経病学から始めてみたいと思います。そのなかでも外来診療でもっとも頻度が多い頭痛について米国のレビューブック(問題集)を参考に検討したいと思います。

 

頭痛とは、頭頚部に限局する痛みの総称ですが、頭頚部とは、頭部のみならず頸部にも及んでいることがポイントの一つです。いわゆる<首こり>も頭痛として認識されていることは実際に少なくありません。<首こり>も長く続くと<肩こり>にまで及んでいることがあります。要所要所に私のコメントを加えました。

 

 

神経病学(Neurology)

 


Headache(頭痛)

 

Name the type of headache (migraine, tension, cluster, or sinus) associated with the following features:

以下の特徴を持つ頭痛のタイプ(片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛、副鼻腔炎による頭痛)を挙げてください。次のような特徴を持つ頭痛の種類を挙げてください。

 

コメント:

上記の4種の頭痛のうち、片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛の3種は、いずれも一次性頭痛といって器質的疾患によらない頭痛ですが、副鼻腔炎による頭痛は副鼻腔炎と伊器質的疾患による頭痛であるため二次性頭痛に分類されます。

 

一次性頭痛は、私が日常の外来診療で遭遇する頭痛のほとんどを占めるのが一次性頭痛です。

上記の他に、三叉神経・自律神経性頭痛などがありますが、心療内科専門医として対応しています。

 

なお、二次性頭痛の中でも副鼻腔炎による頭痛はわが国の頭痛専門外来ではあまり注目されていませんが、基礎疾患としてアレルギー性鼻炎やアレルギー性の慢性副鼻腔炎等があるため、報告されているより多くの症例があると思います。

 

特に内科のアレルギー専門医は主として喘息を対象とすることが多いせいか、鼻鏡検査を省いている方が少なくないのは残念です。幸にも、日本アレルギー学会は、わが国においても総合アレルギー医の養成に力を注いでします。私も定期的に研修を受けることによって、耳鼻科領域、眼科領域、皮膚科領域のアレルギー診療を継続しています。

 

 

Migraine(片頭痛)

 

コメント:

米国のレビューブックが優れているのは、疾患記述の順序です。頭痛の日常診療において、頭痛の鑑別ができることが肝要とされます。最も頻度の多いのは緊張性頭痛ですが、最初に、きちんと片頭痛を診断することができれば、他との鑑別が容易になるので、とても合理的であることを実感しました。精神的なストレスで発症することから、心療内科外来でも多く遭遇します。

 

・Classic symptoms include unilateral frontotemporal cephalgia with aura and visual symptoms(e.g.,scintillating scotoma)

典型的な症状は、前兆を伴う片側前頭側頭痛と視覚症状(例:閃輝暗点)である。

 

・Pulsatile or throbbing headache

拍動性またはズキズキする頭痛

 

・Assocoated with nausea/vomitting(N/V),photophobia,phonophobia

吐き気・嘔吐(N/V)、羞明(光過敏でまぶしい)、羞音(音過敏)を伴う場合がある。

 

・Nonsteroidal anti-inflammatory drugs (NSAIDs),sumatriptans, ergot alkaloids, and opiates may be used as abortive therapy

 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、スマトリプタン、エルゴット・アルカロイド、アヘン剤などが頓挫することがある。

 

・β-blockers, calcium channel blockers,ergots,antidepressants,and anticonvulsants are used for prophylaxis

β遮断薬、カルシウム拮抗薬、エルゴット系薬剤、抗うつ薬、抗けいれん薬などが予防に用いられる。

 

 

・Patients often have a family history(FH)of headaches
患者はしばしば頭痛の家族歴(FH)がある。

 

・4:1 F:M incidence
4:1 の割合の女性:男性比で発症する。

 

・May be precipitated by hormonal factors (e.g.,oral contraceptive pills [OCPs]or menses)and emotional or metabolic stress

ホルモンの影響(経口避妊薬、月経など)、精神的・代謝的ストレスなどにより発症することがある。

 

・Photophysiology may relate to the effect of serotonin on cephalic blood vessels
光生理学は、セロトニンの頭脳血管への影響に関連していると思われる

 

 

Tension Headache (緊張性頭痛)

 

・Most common type of headache in adults
 成人の頭痛の中で最も多いタイプ

 

・Vise-like, tightening bilateral pain associated with photophobia, phonophobia,and neck tightness
万力(締め金)で締め付けられるような両側の痛みで、羞明(光過敏)、恥音(音過敏)、首の締め付けを伴う

 

 

 

Cluster Headache(群発頭痛)

・Unilateral boring periorbital headache worst in the temporo-orbital region
片側性の突き刺されるような眼窩周囲の頭痛で、最悪例は眼窩部に生じる

 

・Ipsilateral tearing,conjunctival injection,Horner syndrome, and rhinorrhea
同側の流涙、結膜充血、ホルネル症候群、鼻汁

 

・Characterized by periods of multiple headaches of the same character alternating with symptom-free intervals
同じ性質の複数回の頭痛が続く期間と無症状の期間と交互に生じることが特徴である。

 

・Approximately 95% of cases are in males
症例の約95%が男性である。

 

・Symptoms are often eradicated by 100% O₂ 
by facemask or serotonin agonists(sumatriptan)

症状はフェイスマスクやセロトニンアゴニスト(スマトリプタン)で100%O₂で消失することが多い。

 

 

Sinus Headache(副鼻腔炎による頭痛)

 

・History of allergy
アレルギー歴

 

・Localized tenderness over sinuses
副鼻腔に限局した圧痛