からだの健康(心身医学)

 

内科認定医、

心療内科指導医・専門医

飯嶋正広

 

毎週火曜日は、昨年からの、からだの健康(心身医学)というタイトルを引き継ぎ、上半期は最近、進歩の目覚ましい血液病学、消化器病学、呼吸器病学について、私が気になる話題を取り上げていく予定です。

 

あくまでも医師としての生涯学習が主目的であるため、一般の方には解りにくいかもしれません。そのわかりにくいところをわかりやすく説明できるようにトレーニングすることも臨床医にとって大切な責務であると認識しています。

 

しかし、率直なところ、こうした基礎的なスキルほど生来の才能が求められることもあるような気がします。

私自身は、そのような才覚に恵まれている方ではないことを自覚しているので、今年も、気持ちを新たにして少しずつ精進していきたいと考えています。

 

ところで、からだの健康(心身医学)というタイトルは少し、あるいはかなり、奇妙であり、不可解な印象を持たれる方も少なくないものと拝察いたします。

 

しかし、これには訳があるのです。当クリニックの初診の方の特徴として、からだの症状を主訴とされる方の多くが精神的ストレスをも抱えておられることが少なくないことです。

 

たとえば、線維筋痛症などのように、通常の保険診療での通り一遍の対応のみでは、異常所見が検出されないため、解決のための道筋が見えづらく、そのため難治性の全身性慢性疼痛疾患とされてしまうことがしばしばあります。

 

ただし、線維筋痛症のほとんどは決して難病ではありません。難治化させている最大の原因は、医師も患者も、保険診療を唯一絶対のシステムであると盲信しているからです。

 

発想を変えようとせず、狭い範囲の発想の中で試行錯誤を繰り返してみても、大局的には同じような試みを漫然と繰り返していることと大差ありません。原因不明で難治性とされる身体疾患の中には、精神面からのアプローチも同時並行的に実施していくことによって顕著に改善していくケースも散見されます。

 

 

次週から、約半年の間、このコラムは消化器病、血液病、呼吸器病の領域の病気を取り上げます。心身医学的なアプローチが常に採用されるわけではありませんが、私は、そうした視点を踏まえた上で病態を理解し患者さんの診察にあたることが有用だと考えています。