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骨粗鬆症の予防と効果的な治療の指針となる骨代謝マーカーについて(基礎編)

 

Q6.

骨代謝マーカーの測定値は、年齢や性別によっての推移というのはあるのでしょうか?

 

A6.

性差に関しては各マーカーであります。各マーカーの基準値も性差別に示されています。骨代謝マーカーの評価をするときは基本的に性別ごとの基準値をもとに評価することになります。

 

 

Q7.

骨代謝マーカーの測定は、どのような役にたつのですか?

 

A7.

骨代謝マーカーにはいろいろありますが、これまでの研究結果から、こういった骨代謝マーカー値が上昇した場合には、骨折の予測因子になることや、あるいは骨密度とは独立した骨折の危険因子であることも判明しています。また、骨代謝マーカーと骨吸収抑制薬による骨密度上昇効果との関連性や、非椎体骨折(註)抑制効果との関連性についてもこれまで明らかにされています。

 

註:

骨粗鬆症性の骨折では椎体骨折が最も多く, また薬剤の骨折予防効果の標準的指標であるため, それ以外の骨折を非椎体骨折と呼びます。この非椎体骨折の代表は, 橈骨遠位端骨折, 上腕骨近位端骨折, 骨盤骨折, 大腿骨頚部, 転子部骨折です。

 

骨代謝マーカーを調べる目的には以下の5つが挙げられます。

 

①  骨密度の低下を予測する。

骨代謝マーカーの上昇と骨密度の低下には負の相関があると、複数の研究結果が報告しております。
つまり、マーカーが上昇すると骨密度が低下する可能性があるということができます。

 

② 骨折の発症リスクを予測する。

骨折予測因子(骨折しやすいかどうかに関わる要因)には、年齢、骨密度、既存骨折の有無、が独立した因子として挙げられます。
つまり、年齢が高くなればなるほど骨折しやすくなる、同年齢でも骨密度が低い方は骨折しやすい、と言うことができます。
そして、骨代謝マーカーも(特に女性では)独立した骨折予測因子です。
つまり、骨代謝マーカーの上昇は、骨折リスクを上げることになります。

 

③ 治療効果を調べる。

実際の臨床で骨代謝マーカーを測定する一番の目的は治療効果判定、つまり、現在使用中の薬剤が本当に効いているのかどうかを調べることです。
例えば、亢進した骨吸収を抑制する治療を検討した場合、治療前の骨吸収マーカーの値がどの程度で、治療開始後にその値は正常範囲内に低下したのか、などの検討に用います。

 

④ 患者さんの治療継続に繋がる。

骨粗鬆症の治療において、骨代謝マーカー計測も同時に行いその結果を患者さんにフィードバックすると、特にマーカーが低下した人(=治療効果が出ている人)では、しっかりと治療を継続してくれる患者さんが増えるという報告があります。
このように、骨代謝マーカーで骨代謝回転を評価することによって、治療の必要性や有効性をある程度理解することが可能になります。また、この骨代謝マーカーの値を患者さんに直接示すことで患者さんの病識が高まることになり、服薬アドヒアランスの向上につながるのではないかと考えられています。  
また、しっかりと治療を継続することで骨折予防に繋がり、入院・手術加療が減るため医療費削減効果もあるといわれています。

 

⑤ 休薬後の経過を観る。

治療が効果を発揮し、一時期的に内服などの治療を中止する場合があります。その際に骨代謝マーカーを定期的に計測することで、正常範囲を超えた場合に治療を再開するなどの指標として利用することもあります。

 

 

Q8.

骨代謝マーカーの測定は保険診療で認められているのですか?

 

A8.

骨粗鬆症と診断された患者さんでは、治療開始時と、治療を開始してから6カ月以内と、2回、骨代謝マーカーの測定が保険上は認められています。

 

 

Q9.

実際に治療薬を選択されるとき、 骨代謝マーカーはどのように使われるのですか?

 

A9.

治療薬の選択を行う際には、骨代謝マーカーを測定し、もし骨代謝マーカー、特に骨吸収マーカーが高値であれば、これは骨代謝回転が亢進している、すなわち、骨吸収が亢進していることを意味しています。こういった場合にはビスホスホネートとか、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、あるいは最近ではデノスマブ、そういった骨吸収を抑制する薬を選択することが理にかなっていると考えることができます。

 

 

Q10.

骨粗鬆症診療における骨代謝マーカーの臨床的意義についてご教示ください ?

 

 

A10.

薬物の投与前に骨代謝マーカーを測定することによって、骨代謝回転の状態を知ることができます。そのデータに基づき、理論上は合目的的な薬物の選択が可能になります。

 

 

治療薬の選択と骨代謝マーカーのまとめ

 

選択する治療薬の特徴に合わせて、計測すべきマーカーを選択します。

 

骨吸収を抑制する治療薬:

カルシトニン製剤、ビスホスホネート製剤、イプリフラボン製剤(オステン®)、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、抗RANKLモノクローナル抗体(デノスマブ)

➡︎ 骨吸収マーカー(NTX)

 

骨形成を促進する治療薬:

活性化型ビタミンD₃、副甲状腺モルモン製剤(テリパラチド) 

➡︎ 骨形成マーカー(BAP)

 

 

骨質を改善する治療薬:

ビタミンK₂製剤(グラケー®)

➡︎ 骨質マーカー(ucOC)

 

のように計測を行なっています。

 

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臨床産業医オフィス
<高円寺南労働衛生コンサルタント事務所>
産業医・労働衛生コンサルタント・第一種作業環境測定士・衛生工学衛生管理者

飯嶋正広

 

 

産業医の企業訪問

 

訪問準備の例(1)

 

嘱託産業医が顧問契約をしている企業を訪問して業務を行うに際して、仲介のマネージメントをしてくれるエージェント企業があります。この仲介エージェントの支援によって、産業医は本来の専門的業務により集中できるというメリットがあります。そのため、産業医が業務を引き受けるに際しては、信頼のおける優秀なエージェントの紹介を通した契約を選択することが大切だと私は考えています。

 

今回は、隔月で訪問をはじめたばかりの企業様のための事前準備の内容を確認するためのエージェントとのやり取りの一例をご紹介いたします。

 

・・・・・・・・・・・・・

 

飯嶋先生 御侍史
お世話になっております。
株式会社MのAでございます。
ご連絡をお待たせしており恐れ入ります。

 

12月訪問では以下内容を想定されているとのご連絡を頂きました。

・ストレスチェック結果のご共有

・健康診断結果の確認方法についてご相談

・衛生委員会の設置に関するご相談

 

お忙しいところ恐れ入りますが、上記内容に関して先生のご経験から
アドバイス等を頂けるようご準備をお願いできますと幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

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今回は、茨城に人気がない理由(その3)の予定でしたが、先週の記事を読んだ方から、是非、五浦訪問のレポートを書いて欲しいというリクエストがありましたので、急遽、番外編を組むことにしました。

 

五浦海岸(いづらかいがん)は、茨城県最北端の海岸で、花園花貫県立自然公園に属し、「関東の松島」の異名を持つ景勝地です。

 

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タイトルの数は将棋の若手ヒーローの藤井聡太さんに負けないくらい多数を数えます。

 

日本の渚百選、日本の音風景100選、茨城百景、日本の白砂青松100選、日本の地質百選、等々。「名は体を表す」と言いますが、五浦に限っては嘘ではありません。

 

名といえば、五浦の名称の由来について、私は今回初めて知ることができました。すなわち、南から「小五浦」「大五浦」「椿磯」「中磯」「端磯」の五つの浦を称して五浦というのだそうです。

 

そして、「浦」というのは「磯」を意味していることも初めて知りました。茨城県には、霞ケ浦や北浦があるため、淡水湖の岸辺や湖のイメージが定着していたため、これも意外な発見でした。

 

 

さて、なだらかで単調である茨城の海岸の中では、ここだけが例外的に複雑怪奇です。大小の入り江や磯、高さ約50mの断崖絶壁などが続くのですが、この地形は、海食崖といって、波による浸食で形成されたものとのことです。

 

この辺りの波だけがとくに強烈なエネルギーを持っている訳ではなさそうに思えます。

そうだとすれば、注目すべきは崖を成している地質にあるのではないかのかと考えた次第です。

 

亀ノ尾層(珪藻質砂岩、珪藻質砂質頁岩)、多賀層群などの地層が見られるのですが、要するに五浦海岸を特徴づけている奇岩を成しているのは炭酸塩コンクリーションであることを現地で確認することができました。

 

これは、海底油・ガス田の硬成分から形成された地層なのですが、こうした地層が波に侵食されて崖の侵食や奇岩が形成されたのではないかと、一応は納得したつもりになりました。それに目をつけて、五浦海岸の沖などで掘削を始めようとする輩が出現しないことを祈ります。

 

崖の上に自生するクロマツも独特の風情を与えてくれているのですが、こうした地層と海辺という環境条件がクロマツを幸せに育んでくれているのかも知れません。
岡倉天心ゆかりの六角堂や茨城県天心記念五浦美術館の素晴らしいさについてもご紹介したいのですが、どうしても話が長くなってしまうので、年明け以降に、改めてご紹介させていただきたいと思います。

<はじめに>

 

前回は「貧血」に効果のあるツボを紹介しました。

 

 

「陽池」は手の甲側で手首の横じわの中央よりやや小指側にあり、

 

 

「太白」は土踏まずから親指に向かって骨に突き当たるところにあり、

 

 

「血海」は膝のお皿の上、内側角にくすり指をおき指幅3本そろえて、人差し指があたっているところにあるというお話でした。

 

 

今回は「ほてり」に効果のある「少府(しょうふ)」「金門(きんもん)」「太衝(たいしょう)」のツボを紹介しましょう。

 

 

 

<少府>

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手を握って薬指と小指の当たるところにあります。

 

 

<金門>

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外くるぶしの下から2センチほど下にある窪みにあります。

 

 

<太衝>

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足の親指と人差指の間をなぞって指の止まるところにあります。

 

 

 

杉並国際クリニック 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

 

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<今回も、新たな登場人物があらわれます。Jean Tarrou (ジャン・タル―)というまだ若い男とRieux(リウー)医師の母親です。リウー医師のファーストネームがBernard(ベルナール)であることは、母親の呼びかけで明らかになります。>

 

 

À dit-sept heures, comme il sortait pour de Nouvelles visites, le docteur croisa dans l’escalier un homme encore jeune, à la silhouette lourde, au visage massif et creusé, barré d’épais sourcils. Il l’avait rencontré, quelquefois, chez les danseurs espagnols qui habitaient le dernier étage de son immeubles. Jean Tarrou fumait une cigarette avec application en contemplant les dernières convulsions d’un rat qui crevait sur une marche, à ses pieds. Il leva sur le docteur le regard calme et un peu appuyé de ses yeux gris, lui dit bonjour et ajouta que cette apparition des rats était une curieuse chose.

17時に医師が新しい往診先に出かけようとすると、階段で、まだ若い男と出くわしたが、その男は重々しい体格、重厚で彫の深い顔、棒のように太い眉毛をしていた。その男とは、ビルの最上階に住んでいるスペイン人舞踊家たちのところで、時々出会っていた。ジャン・タルーは盛んにタバコをふかしながら、足元の階段で瀕死のネズミの断末魔の痙攣を眺めていた。彼は穏やかだが幾分見据えるような灰色の瞳のまなざしで医師を見上げ、挨拶の言葉を述べ、このネズミどもの出現は不思議なことだと付け加えた。

 

 

__ Oui, dit Rieux, mais qui finit par être agaçante.

そうですね。でも、ここまでくると迷惑な話ですよ、とリウーは言うのであった。

 

 

__ Dans un sens, docteur, dans un sens seulement. Nous n’avons jamais rien vu de semblable, voilà tout. Mais je trouve cela intéressante, oui, positivement intéressant.

ある見方をすればということですよ、先生、ただある見方をすれば、と言う意味です。こんなのは皆がまだ見たことない、というだけのことです。でも、私はこれは面白い、そう、本当に面白いことだと思います。
 

 

 

Tarrou passa la main sur ses cheveux pour les rejeter en arrière, regarda de nouveau le rat, maintenant immobile,puis sourit à Rieux:

タルーは髪に手をかけて後ろに流し、動かなくなったネズミをもう一度ながめてから、リューに微笑みかけた。

 

 

__ Mais, en somme, docteur, c’est surtout l’affaire du concierge.

でも、要するに先生、それはもっぱら管理人の仕事なんですよ。
 

 

 

Justement, le docteur trouva le concierge devant la maison, adossé au mur près de l‘entrée, une expression de lassitude sur son visage d’ordinaire congestionné.

ちょうどその時、医師はアパートの前で管理人を見かけたが、入口近くの壁にもたれかかり、いつもであれば血の気の多い顔に疲れた表情を浮かべていた。

 

 

__ Oui, je sais, dit le Michel à Rieux qui lui signalait la nouvelle découverte.  C’est par deux ou trois qu’on les trouve maintenant. Mais c’est la même chose dans les autres maisons.

はい、知っていますよ、新たな発見を指摘したリューに管理人のミシェルは言うのであった。それが今では2、3匹ずつで見つかるんですよ。でも、それは他の建物でも同じことなんです。
 

 

 

Il paraissait abattu et soucieux. Il se frottait le cou d’un geste machinal. Rieux lui demanda comment il se portait. Le concierge ne pouvait pas dire, bien entendu, que ça n’allait pas. Seulement, il ne se sentait pas dans son assiette. À son avis, c’était le moral qui travaillait. Ces rats lui avaient donné un coup et tout irait beaucoupe mieux quand ils auraient disparu.

管理人は打ちひしがれて心配そうな面持ちであった。彼は無意識的な仕草で首をこすっていた。リューは、彼の体の具合はどうかを尋ねた。管理人は、体調不良だとはもちろん言えなかった。ただ、彼は気分が優れなかったのだ。彼の意見では、それは気力の問題だった。ネズミ共のために彼は参ってしまったが、ネズミさえいなくなれば万事めでたしなのである。
 

 

Mais le lendemain matin,18avril, le docteur qui ramenait sa mère de la gare trouva M.Michel avec une mine encore plus creusée: de la cave au grenier, une dizaine de rats jonchaient les escaliers. Les poubelles des maisons voisines en étaient pleines. La mère du docteur apprit la nouvelle sans s’étonner.

しかし、翌4月18日の朝、母親を駅から連れてきた医師は、ミッシェル氏の表情が一層冴えなくなっているのがわかった。地下室から屋根裏まで、十数匹のネズミが階段に散乱していたのだ。近所の家々のゴミ箱には、それらでいっぱいだった。医師の母親は、その話題を耳にしても驚かなかった。
 

 

__ Ce sont des choses qui arrivent. 

__ こんなことも起こるものなのね。

 

 

C’était une petite femme aux cheveux argentés, aux yeux noirs et doux.

銀髪の小柄な婦人は、黒い優しい目をしていた。
 

 

__Je suis heureuse de te revoir, Bernard, disait-elle. Les rats ne peuvent rien contre ça.

ベルナール、また会えて嬉しいわ、と彼女は言った。ネズミたちだろうが邪魔だてはできないわ。

 

 

Lui approuvait; c’était vrai qu’avec elle tout paraissait toujours facile.

彼は頷いて納得した。たしかに、彼女と一緒にいると、いつでも万事が丸く収まっていくように思えるのであった。

 

 

註:

多数のネズミ共の出現に対して、人々の受け止め方や行動は各人各様です。リウー医師は、実際のところどのように受け止めているのか、どのような行動を取るのかは、この段階ではよくわかりません。

 

もっとも、人の感じ方や考え方は、直接の体験、周囲の人々の様子や意見、メディアによる事件の扱い方や進展の仕方によって大きな影響を受けてしまうものです。

それは医師とて例外ではありません。

 

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医療以外では、たとえばクラシック声楽のレッスンを受けるためには東京在住は好都合でした。そのために英語以外の外国語(ドイツ語、イタリア語、フランス語、スペイン語など)にも親しむことができ、各国語のスクールも至近距離にありました。

 

診療においてもこうしたバックグラウンドが外国語診療を可能としてくれたのです。今にして思えば、外国人の患者さんは、すべからく私の語学教師でした。いまでも外国人診療は個人レッスンのようなものでもあります。

 

今後私が声楽の修行を深めていくうえで大切なのは、声楽の師よりもむしろ優秀な伴奏ピアニストです。

 

地方にも優秀なピアノ演奏家はいますが、演奏家としての能力と伴奏家としての能力は必ずしも一致しません。

 

自分の表現を極めようとする声楽家は、ある意味で伴奏ピアニストを育て上げるくらいでなければならないのです。それを地方で一からやり直すのはとても骨が折れることですし、人生の時間切れが目に迫ってくるようでもあります。

 

外国語診療は東京でなくとも続けていくことはできるでしょうが、地方都市に転出するとすれば、おそらくは、特定の他の言語(たとえば、ポルトガル語やタガログ語など)に習熟する必要があるでしょう。しかし、近似性のある欧州の言語以外の外国語を新たに習得することは至難の業であるし、実用レベルには届かないことでしょう。

 

ただし、今後、東京でしかできないことを改めて考えてみると、殊の外限られてくることに気が付きました。

 

大規模な事業であるとか、大きな発信力や影響力を発揮させたいとか、そうした志を持っている様な方であれば、確かに、日本において東京は唯一無二の拠点たり得るかもしれません。その方の人生のスケールによっては、日本には収まりきらずに、たとえば米国、とりわけニューヨークを目指すこともあるでしょう。

 

私自身の医学生時代を振り返ってみると、研修医を終えて研究生活に入り、適当な時期に米国留学をすることを何となく漠然とではありますが想定していた時期がありました。実際にはどうだったかというと、ずっと東京暮らしだったわけです。平成元年に開業してしまってから気が付いたのは、今更、留学はできない身の上になってしまったということでした。

 

私は今に至るまで米国の地を踏んだことはありません。米国で開催される内科学会やそれに付随する研修会に参加することを考えていた時期もありましたが、それでさえも、世界的なコロナ禍に見舞われて、意欲が薄らいできました。思えば良い時期にオセアニア(オーストラリア、ニュージーランド)、中国(上海、杭州)、ベトナム(ホーチミン市その他南部地域)、欧州(ドイツ、オーストリア、リトアニア、フランス、イタリア)などを旅行できたものでした。

 

しかし、今後は島国で個人鎖国を続ける住民でいたいと思うようになりました。日本を愛し、日本人を必要とする人々に対しては、誠実に親切にお付き合いさせていただき、平和共存できるように心がけるのみです。

 


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厚生労働省は、

職場のメンタルヘルスに関するよくある質問と答えをまとめました

として、ホームページで、こころの健康に対してわかりやすいQ&Aを掲載しています。

それに私が臨床の立場からCとしてコメントを加えてみました。

 

 

Q.

自殺の原因は精神障害だというのは本当ですか?

 

A.

警察庁の統計では、令和元年中の自殺者総数は20,169人であり、自殺の原因・動機の内訳は、「健康問題」が9,861人、「経済・生活問題」が3,395人、以下、「家庭問題」3,039人、「勤務問題」1,949人、「男女問題」726人、「学校問題」355人、「その他」1,056人でした(複数回答)。

 

これらの原因の結果として、精神障害を発症し、自殺にいたった例も多いものと考えられます。自殺の動機そのものは、必ずしも一つの要因だけで説明できるものではありませんが、精神的に追い込まれた状態で自殺行為がなされることを考えると、うつ病をはじめとする精神障害が自殺の原因となっているとする報告が多数なされています。

 

また、失業や配偶者の死亡などの人生におけるストレスを伴う重大な出来事(ライフイベント)の際に、精神障害を引き起こし、自殺にいたることがあるので、周囲からの十分な注意や配慮が必要となります。

 


C.

「病気の悩み・影 響(うつ病)」を原因・動機とする自殺は、「健康問題」の 中で最も多くいことは確かです。しかし、自殺の原因は精神障害だと決めつけることは論外です。なぜならば、精神障害による自殺は、平成27年においては、原因・ 動機が特定されている自殺の約3割を占めているに留まっているからです。 

 

むしろ、自殺には多様かつ複合的な原因・背景を有するものであることが、自殺対策基本法や自殺総合対策大綱においても指摘されています。自殺対策においては、うつ病の早期発見、早期治療を始めとする心の健康問題に対する働きかけのみならず、心の問題に複雑に絡み合っている社会的要因を含めた様々な問題に対しての働きかけが必要であることがわかります。

 

近年、うつ病や身体の病気を原因・動機として自殺する者の割合は低下しているようです。

こうした「健康問題」による自殺死亡率の減少の背景には、これらの疾病の患者に対する医療の進歩や相談体制の充実が寄与している可能性が示唆されています。

 

それでは、精神障害を含む「健康問題」以外の自殺の原因・動機について、近年の傾向を概観してみたいと思います。

 

 経済・生活問題 「経済・生活問題」を原因・動機とする自殺については、その多くが男性によるもので あるという特徴があり、また、これまでも、 景気の動向の与える影響が示唆されてきています。

 

景気動向指数(CI一 致指数)の増減と「経済・生活問題」による男性の自殺者数の増減には、負の相関の関係がある事が指摘されています。

 

 

 

 勤務問題 「勤務問題」による自殺の原因・動機の詳細な内訳をみると、「仕事疲れ」についてはさほど大きく増減していない一方、「職場の人間関係」 や「職場環境の変化」の増減は「勤務問題」 全体の傾向と類似しています。

 

これらによる自殺が増加した時期は、ちょうど職場におけるパワーハラスメントの問題が顕在化した時期と重なることから、この問題に対する予防・ 解決に向けた取組の進展が、職場におけるメンタルヘルス対策の進展と相まって、「勤務問題」を理由とする自殺の減少につながった可能性があります。

 

労働安全衛生法の改正によって、平成27年12月から、職場におけるストレスチェック制度が導入され、集団分析の他、産業医による高ストレス者面談が実施されるようになりましたが、「勤務問題」を理由とする自殺の減少という具体的な成果を今後も引き続き挙げることが期待されています。

 

 

 

 学校問題 「学校問題」による自殺については、学生・生徒等の自殺に限ると、最も多い自殺の原因・動機です。学校の種類別では、大学生と高校生が多くを占めています。

 

一方、原因・動機の内訳では「入試に関する悩み」「その他進路 に関する悩み」及び「学業不振」といった学業や進路に関する問題が年毎の増減がある一方、「教師との人間関係」「いじめ」「その他学友との不和」等の学校における人間関係等 関する原因・動機はほとんど変化がありません。

 

学業や進路の悩みにせよ、学校における対人関係にせよ、学校において、スクールカウンセラー等も活用した児童生徒の日常の生活状況や心身の問題について理解を深めるとともに、児童生徒に対しても、困難を抱えたときに適切に助けを求める方法や相談先を把握しておくことや、つらい時の現実の受け取り方やものの見方を柔軟でバランスの良いものにすることなど、生活上の困難やストレスに直面しても適切な対処ができる力を身に付けるための支援を行うことが重要と考えられています。

 

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トレーニング理論における専門性の原則をより深く理解するためには、専門性の原則がトレーニングの理論と実践の体系の文脈の中で、他の原則とどのような相互関係にあるかを知っておくことが役に立ちます。

 

まずトレーニングは、適切な目標を設定することから始めます。

 

トレーニング目標を設定するには、現状を正確に把握するとともに、その後の未来を予測することが前提tなります。その際に考慮しなければならないのが、

①実現可能性、②時間資源、③個別性と専門性、④アスリート(水氣道においては稽古参加者)の発達段階です。

 

ここで示したように、専門性の原則は個別性の原則との相互関係、すなわち兼ね合いの中で位置づけなければならない相対的な原則であって、独立した絶対的な原則ではないということがいえます。
 

トレーニングにおける設定目標と現状との間には、必然的にギャップが生じることになります。

このギャップを総合的な課題として形成し、その原因をあらゆる視点から専門的に分析究明することがスポーツ界では試みられています。そのうえで、個々の原因を解決するための個別の課題を考慮しながら、それらの中での優先順位を決定して配列していくことになります。
 

スポーツパフォーマンスを向上させるためには、トレーニング手段や測定評価のためのテストにどのような運動を選択するかは大切なポイントです。その場合には、スポーツパフォーマンスの構造モデルに基づく専門的な考え方が必要になります。ただし、高度な医科学テストや、その他の各指標が先行し、この種の科学的な諸要素からトレーニングを組み立てる方法は誤りであるとの意見が主流です。

 

その理由の一つは、実際にそのような方法を採用することが失敗を引き起こす原因となる場合が多かったこと、もう一つは、あるスポーツに必要不可欠なトレーニング手段や方法が、他のスポーツにはマイナスに働くことが頻繁に観察されたことです。スポーツにおける専門性の原則は、スポーツの種目によって、それぞれに求められる必要不可欠なトレーニング手段や方法が異なることを前提として、それぞれの種目に最適なトレーニング手段や方法を選択するための理論的な根拠にもなるものと考えられます。
 

そこで、理想的なトレーニングのモデルの設計のためには、具体的にはどのようにすれば良いのかということが重要な論点になってきます。これに関して、すべてのトレーニングの基礎となる指針として“初めに運動ありき”という標語が知られています。これは、トレーニングを効果的に推進するためには、目指すスポーツパフォーマンスの構造モデルに立ち戻ってトレーニングを開始することを意味しています。

 

ただし、これを実践して行くためには、自らが行うスポーツに関する高度な理解と知識だけではなく、スポーツ実践を通して体得した豊富な経験則と実践的な知恵が要求されます。ですから、初心者や若手で経験の少ないアスリートにとっては、高い成果を獲得している経験豊富な専門性の高いコーチによる指導が必要になってくるのです。
 

ここで、確認しておきたいことは、「高度な医科学テストや、その他の各指標が先行し、この種の科学的な諸要素からトレーニングを組み立てる方法は誤りである」との意見にもう一度注目しておきたいと思います。

 

一般に、高度な戦術や複雑な技術を要求されるような種目については、このような意見は妥当であるように思われます。しかし、体力の維持増進あるいは比較的シンプルな技術の組み合わせによってデザインされている水氣道のようなエクササイズに関してはこの限りではないと考えています。

 

季節ごとに実施されているフィットネス・チェックやメディカル・チェックなしに水氣道の発展は実現できなかったからです。ただし、“初めに運動ありき”という標語は水氣道においても高く評価できます。水氣道では、まず“水に委ねよ”という教訓が“初めに運動ありき”という標語の前提になっているということは、水氣道における専門性の原則の重要な柱であるといえます。
 

水氣道を実践して行くためには、参加者自らが行う水氣道の稽古に関して、徐々に高度な理解と知識を深めていくだけではなく、水氣道ならではの組織的な集団稽古の継続的な実践を通して体得した豊富な経験則と実践的な知恵が要求されます。

 

ですから、初心者(体験生)やまだ経験の少ない参加者(訓練生や修錬生)にとっては、高い成果を獲得していて、自らも長年の稽古を実践してきた経験豊富な専門性の高いコーチ(支援員、指導員、監督指導者)による指導が必要になってくるのです。

 

 

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骨粗鬆症の予防と効果的な治療の指針となる骨代謝マーカーについて(続入門編)

 

前回は、丈夫な骨のためには骨量の他に骨質が大切であることを説明しました。

次に骨粗鬆症は、骨形成が低下し、骨吸収が亢進すると生じるということを説明しました。

さらに、骨代謝マーカーとは、骨代謝の結果作られる物質であり、骨代謝の程度の指標となる物質である、ということでした。

 

骨代謝マーカーの中でも骨形成マーカーや骨吸収マーカーを調べることで、骨粗鬆症になるリクスや骨折リスクを知ることができます。また、その他の骨代謝マーカーに骨質マーカーもあり、骨質を評価することもできるのです。

 

 

骨代謝マーカーには以下の3つの群があります。

 

① 骨形成マーカー

骨形成で中心的な働きをする骨芽細胞と呼ばれる細胞が作り出す物質です。
代表的なものに、BAP、P1NP、OC と呼ばれる物質があります。

当クリニックではBAPを採用しています。

 

 

② 骨吸収マーカー

骨吸収で中心的な働きをする破骨細胞と呼ばれる細胞が作り出す物質、もしくは破骨細胞が骨を破壊するときに作り出される物質です。

 

代表的なものに、NTX 、TRACP-5b、と呼ばれる物質があります。
当クリニックではNTX を採用しています。

 

 

③ 骨質マーカー
骨の強さには、骨密度だけでなく骨質も関係しています。特にビタミンKの欠乏は骨質に悪影響を与え、その結果、低カルボキシル化オステオカルシン(ucOC)という物質の血中濃度が上がります。

 

オステオカルシン(OC)は、ビタミンKの作用により骨芽細胞で産生される蛋白で骨形成に関与します。骨中でビタミンKが欠乏すると低カルボキシル化オステオカルシン(ucOC)が生成されます。このucOCは,ビタミンK欠乏を伴う骨粗鬆症で増加するため、その病態診断や治療効果を判定する際に利用されます。

 

低カルボキシル化オステオカルシン(ucOC)は、骨粗鬆症におけるビタミンK2剤の治療選択目的で行った場合または治療経過観察を行った場合に保険診療で検査可能です。

ただし、保険が効くのは治療開始前においては1回、その後は6月以内に1回に限り、という制約があります。

骨質の評価に関しても骨代謝マーカーの中で骨質マーカーを調べることが有用なのですが、これまで杉並国際クリニックでは実施していませんでした。令和4年を迎えて、新たに骨質マーカーとして低カルボキシル化オステオカルシン(ucOC)を採用する予定です。

 

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臨床産業医オフィス
<高円寺南労働衛生コンサルタント事務所>

産業医・労働衛生コンサルタント・第一種作業環境測定士・衛生工学衛生管理者

 

飯嶋正広

 

 

いろいろな産業医面談

 

個人面談のための事前ガイダンス資料(その2)

 

企業の嘱託産業医をお引き受けすると、産業医として企業に定期訪問するだけでなく、スポットでの相談に乗らなくてはならない事例が発生します。その多くは、いわゆる総合臨床専門医としての相談です。広くかつ深い臨床経験がなければ、企業から信頼される産業医として活躍を続けることは、ますます難しくなってきています。

 

前回から、特定の企業名や個人名を伏せる形で、実際のやりとりを紹介しております。この間にも、相談者や職場からの貴重な情報が次々と到着し、対応に追われています。

 

以下は事前ガイダンスの続きです。

 

ステップ3【自分の痛みをわかりやすく人に伝える工夫をしてみましょう!】

 

伝える時は、相手にわかりやすく伝える工夫をしてみましょう。痛みのために、日常生活上で支障がある場合は、そのことも具体的に伝えましょう。
 

痛みがあることで、生活上困っていることを整理してみましょう!

具体例)家事ができない、食事が取りにくい、洗濯物を干すのが大変、布団を上げられない、パソコンを長い間打てない、体をひねると痛い、重いものが持てない、書き物がしにくい、など
 

長く続く痛みに対処するためには、毎日の生活の中で、痛みを和らげるための自分なりの工夫を取り入れることが有効的な場合もあります。
 

そのためには、

◎どのような時に痛みが楽になったり痛みを忘れたりするときがあるのか

◎どのような姿勢のとき、痛みが楽なのか

 

など『痛みの日記』をつけてみるのもよいでしょう。

 

 

 

ステップ4【痛みの状況の整理と人への伝え方のコツ】

 

以上のステップを踏むことによって、ご自分の痛みについてよく知ることができるようになります。そうすれば、医師や他周囲の人々などにも理解してもらえるような情報が整理されていきます。それに加えて、人にわかりやすく伝えるという、伝える時の工夫も必要です。
 

同じ痛みでも人によってその苦痛は異なります。また痛みに伴うさまざまな生活の支障(動くと痛いので、あまり動きたくない、体をひねると痛いので動作が制限される、手を使うと痛みがひびく、痛みのせいで集中して仕事ができない、など)なども、よく整理して確認したうえで医師に伝えましょう。

 

 

 

ステップ5【痛みのセルフケアをはじめてみる】

 

ステップ4までの過程で気づくことができた経験から、ご自分なりの工夫で痛みをやわらげられることもあります。自分の痛みと生活の過ごし方について、いろいろ検討し、よいと思われることは、生活の中に取り入れてみましょう。
 

具体的な方法は、痛みがやわらぐ状況は、時間帯、そのときしている活動、取っている姿勢など、人によっていろいろなきっかけがあります。『痛みの日記』をつけることで、“痛いところを温めたら楽になった”、“○○さんとしゃべっている時は痛みを忘れていた”、“よく眠った次の日には痛みが減った”、“お風呂で湯船に浸かり、十分温まったあとは楽だった”など、自分自身の痛みがやわらぐきっかけに気づくことができます。その中から、自分にとってよかった対処法を、日常生活に取り入れてみましょう。

 

それではお大事にお過ごしくださいますように。