こころの健康(身心医学):こころの耳Q&Aから学ぶNo6

 

前回はこちら 

 

 

厚生労働省は、
職場のメンタルヘルスに関するよくある質問と答えをまとめました

として、ホームページで、こころの健康に対してわかりやすいQ&Aを掲載しています。それに私が臨床の立場からCとしてコメントを加えてみました。

 

 

Q.

夫がうつ病で休職中です。小学生の子どもがいるのですが、仕事をしないで家でゴロゴロしている状況や、日によって優しかったりイライラしやすかったりする夫の様子が、子どもに悪い影響を与えているのではないかと心配です。何か気を付けた方がいいことはあるでしょうか?

 

 

A.

うつ病は、自分自身の感情をコントロールできず、思うように行動できなかったり、イライラしたりする病気です。

 

症状の改善のためには、自宅でゆっくり過ごすことが必要で、見守ってくれる家族の存在はとても大きな意味があります。「ご家族にできること」を参考に、お子様と共に、病気への理解を深めて温かく見守っていただくのが理想です。

 

ただし、うつ病の方と一緒にいることで、ご家族自身の負担も大きくなりますので、ご自身やお子様の感情にきちんと向き合うことも必要かもしれません。時にはご主人と距離を置く時間を設けたり、誰かに相談したりすることも検討しましょう。

 

身近に相談相手がいなければ、お住まいの地域の「精神保健福祉センター」にご相談いただくことも一つです。「精神保健福祉センター」では、こころの健康やこころの病気について電話や面談で相談ができ、ご家族からの相談にも対応しています。

 

 

C.

家族の一人がうつ病になると、他の家族も抑うつ傾向になることはしばしば発生します。
 

特にもっとも身近な夫婦間においては、いささか深刻な問題になりがちであるため、回答者も慎重に対応しなければならないと思います。

 

夫がうつ病であるために妻の不安が大きくなることは誰もが理解できることでしょう。

 

父親の精神状態や行動パターンが不安定な場合は、たしかに、子供たちも不安になりがちではあることでしょう。また母親として「子どもに悪い影響を与えているのではないか」と心配するのは、ごく自然なことです。

 

しかし、実際に明らかな悪影響が表れているのであれば「子どもに悪い影響を与えているのではないか」といぶかることはないはずです。

 

実際に両親が子どもに及ぼす影響の程度は千差万別です。たとえ父親の精神状態が不安定であっても、母親が普段通りに接していれば子どもたちにとってはどれだけ救いとなることでしょうか。
 

ですから、「何か気をつけることがあるでしょうか?」とたずねられたら、私であれば

 

1) 夫がうつ病であるため、自分は不安であるという気持ちはそのまま受け止めておくこと。

 

2)その不安な気持ちを子どもたちに投影させていないかを振り返ってみる心の余裕はを保つこと。

 

3) 子どもたちに対しては、なるべく今まで通りの母親として接すること。

 

4) その場合、立派な母親として振る舞う必要はなく、不安を抱えたままのありのままの母親として自然に接すること。

 

5) そのうえで、自らの楽しみを見失わず、また必要に応じてカウンセリングを受けたり、公的なサービス等を積極的に外部資源を活用すること。

 

以上のようにお答えすることになるのではないかと思います。