『嘱託臨床産業医』の相談箱

 


臨床産業医オフィス

<高円寺南労働衛生コンサルタント事務所>

産業医・労働衛生コンサルタント・第一種作業環境測定士・衛生工学衛生管理者

飯嶋正広

 

 

いろいろな産業医面談

個人面談のための事前ガイダンス資料(その1)

 

企業の嘱託産業医をお引き受けすると、産業医として企業に定期訪問するだけでなく、スポットでの相談に乗らなくてはならない事例が発生します。その多くは、いわゆる総合臨床専門医としての相談です。広くかつ深い臨床経験がなければ、企業から信頼される産業医として活躍を続けることは、ますます難しくなっていくことでしょう。

 

今回から、実際のやりとりを紹介します。特定の企業名や個人名を伏せる形でご紹介いたします。

 

 

はじめまして。

私は御社の嘱託産業医の飯嶋正広と申します。

 

本日、御社の担当者様を通して、11月X日にあなたのための面談を担当させていただくことになりました。       

 

私は、日頃、以下のような、あなたと同様の「お悩み」のご相談に対応することがしばしばあります。

 

<手術後の傷の痛み、突っ張り感や傷痕内部のうずくような痛みに悩まされている。>

 

こうした相談には、以下の5つのステップのアドバイスが役に立つことが多いです。簡単にまとめてみましたが、軽く読み流しておいていただくだけでも十分です。面談に先立つ事前の準備のために少しでもご参考になれば幸いです。

 

 

ステップ1

【焦りや混乱状態から脱却しましょう!】

 

手術をした後、しばらくたっても痛みがとれないという患者さんがいます。それを医者に話すと、「手術は成功したし、もう悪いところはない。傷がいえれば痛みも減りますよ」とか、「多少痛みは残ることもあるが、一年もすれば消えますよ」と言われることがありがちです。

 

痛みは主観的なものなのです。そのため、周囲の人にはわかりにくいことがあります。また痛みに伴うつらさは、なかなか人に伝わりにくいともいえます。その理由は、痛みは個人差があり、客観的には判断しにくいものなので、医師などの医療者、家族などに伝わりにくくなりがちだからです。そのため、医師など医療者が判断している痛みによるつらさと、患者さんが感じる痛みによるつらさに隔たりが出ることもあります。

 

しかし、そこで焦ってしまうと混乱や不毛な医療不信に陥ってしまうので気を付けましょう。そうならないための方策を伝授いたします。

 

 

 

ステップ2

【自分の痛みの状況を知りましょう!】

 

焦りや混乱に陥らないようにするために、まず、痛みについて冷静に振り返って整理してみましょう。自分の痛みの性質や特徴について整理できていないと、素人の他人だけでなく、専門の医師の理解や共感を得ることも難しくなるからです。そこで自分の痛みについての整理の仕方のコツをご紹介いたします。

 


痛みを整理してみましょう!

 

(1)どのような時に痛みが出てくるのか、あるいは強くなるのか

例)歩いているとき、動き始めるとき、からだの向きで、からだをひねったとき、重いものを持ったとき、雨の日や湿気の多い時期、下着などで傷跡周辺がこすれたときなど

 

(2)どのあたりが痛むのか

具体例)創(きず)跡全体、創(きず)の左側の奥の方、など

 

(3)どのくらい痛むのか

具体例)数字で表してみる

0-10の数字で表す(0: 全く痛くない.........10: 耐えられないくらい痛い)一日のうち、時刻による変化を数字で表してみる

 

(4)どのように痛いのか

具体例)きりきり痛い、ズキンズキンする、時々ピリッと電気が走るよう、など(動作に伴って痛むときは、体を右にひねったとき、かがんだとき、なども伝える)

 

(5)痛み止めを使っていればその効果はあるか

具体例)

・痛み止めをのむと、1時間くらいでいったん楽になるけれど、6時間くらいでまた痛くなる

・痛み止めを飲んでも、痛くて夜に眠れないときがある

・痛みのために、気分がふさぎがちになったり、イライラしたりすることがある