『聖楽院』便り:通りすがりの「水戸芸術館」と初訪問の「水戸奏楽堂」No1

 

10月31日(日)の昼下がりは、音楽が霧雨に近い小雨が降る、いささか肌寒い水戸の街に活気を与えていました。

 

家内と共に初めて訪れた「水戸奏楽堂」でのコンサートから水戸駅に向かう道すがら、水戸芸術館の傍らを通ると、水戸室内管弦楽団(MCO)第108回定期演奏会を聴き終えた大勢の聴衆が続々と館外へ出てきているところに遭遇しました。

 

国内外で活躍を重ねてきた指揮者・広上淳一さんが、水戸室内管弦楽団(MCO)のステージに6年ぶりに登場するということでたくさんの観客を集めていた模様です。

 

広上さんは、水戸室内管弦楽団の公式サイトに掲載されているインタビューの中で、このように言っています。

「水戸室内は国際色が豊かであるのはもちろん、小澤征爾先生や吉田秀和先生のレガシーというか、意志と遺産によって築き上げられた楽団だと思うんです。そういう楽団が、歴史的にも、思想的にも、学術的にもひとつの世界がある水戸という土地を選んで作られた。そこで、土地に根付いた活動をゆっくりと地道に積み重ねてきたことが、これだけの楽団になったひとつの要因だと思います。」

 

私は水戸市出身であるにもかかわらず、その水戸室内管弦楽団(MCO)はおろか、水戸芸術館で催される一切のコンサートを未だ聴いていないのが残念です。

 

そこで、水戸室内管弦楽団(MCO)の公式サイトから、コロナ禍での音楽活動に言及された広上さんのインタビュー記事の抜粋をご紹介いたします。

 

 

コロナ禍で改めて抱いた感謝の気持ち

 

――日本では感染症収束の兆しがなかなか見えない日が続いていますが、コロナ禍の1年半を過ごされて、今どのような心境でいらっしゃいますか。

 

コロナではっきりわかったのは、お客様の存在がいかに有難いかということ。レストランと同じです。

 

昨年は約半年間、どこの楽団にも仕事がなくなり、私たちは休業状態に追い込まれました。

赤字がどんどん増えて、これから私たちは生きていけるのか、存続できるのかというところまでいった。

 

けれど今は、客席半分くらいであったとしても、演奏会をやれることがまず幸せだなと思います。

 

お客様の拍手から、待ち構えていてくれた気持ちが伝わってくるんですね、どの楽団に行っても、。僕のオーケストラ〔註・京都市交響楽団〕でもそうです。

 

この気持ちをぜったいに忘れてはいけないなと思っています。楽団員が登場すると同時に拍手がある。

演奏する側、料理を作る側は、こうやって待ち焦がれているお客様がいるからこそ成り立ってきた。今は、そのごく当たり前のことに心から感謝しながら仕事しています。
 

 

コロナについては本当に早く終息してほしいです。

飲食業を営んでいる友人も、店を閉じ始めたりして苦しい状況です。

でも、まずは演奏会を続けていくこと。

それから、こうした非常時において、目配りの行き届いた政策が実行できる政治家を、我々がしっかり選挙で選ばないといけないですね。

 

オーケストラのことで言えば、日本の楽団はこの30~40年の間に、欧米の一流の楽団並みに上手くなったわけですから、今の僕にできるのは感謝して演奏することだけ。

いい演奏をすることがお客様へのお返しだから、僕も一生懸命務めようと思います。

 

2021年8月26日

 

聞き手:高巣真樹

 

(協力:株式会社AMATI)

 

__________________

 

水戸室内管弦楽団 第108回定期演奏会

 

2021.10.30土、31日 

15:00開演(14:15開場)

 

水戸芸術館コンサートホールATM

 

指揮:広上淳一

 

曲目:

シューベルト 交響曲 第5番 変ロ長調 D485
メンデルスゾーン 交響曲 第3番 イ短調 作品56「スコットランド」