前回はこちら

 

<亜鉛による免疫栄養療法における注意点>

  
亜鉛として成人50 ~ 100mg/日,小児1 ~ 3mg/kg/日または体重20kg未満で25mg/日,体重20kg 以上で50mg/日を分2で食後に経口投与する.症状や血清亜鉛値を参考に投与量を増減する.


亜鉛投与による有害事象として,消化器症状(嘔気,腹痛),血清膵酵素(アミラーゼ,リパーゼ)上昇, 銅欠乏による貧血・白血球減少,鉄欠乏性貧血が報告されている.血清膵酵素上昇は特に問題がなく,経過観察でよい.

 

亜鉛投与中は,定期的(数か月に1回程度)に血清亜鉛,銅,鉄を測定する.
血清亜鉛値が250µg/dL以上になれば,減量する.

 

また,銅欠乏や鉄欠乏が見られた場合は,亜鉛投与量の減量や中止,または銅や鉄の補充を行う

 

 


これまでの亜鉛を投与した研究に関する系統的レビュー/メタ解析によると、
  

- 成人における風邪の罹病期間が33%短縮、
  

- 小児5,193 人では肺炎の罹患率が13%低下、
  

- 成人2,216 人での重度の肺炎の死亡率が低下

 

といった亜鉛の効果が見出されました4)。

 

 
さて、肥満や糖尿病、高齢者などは、COVID-19の高リスク群です。

これらの人々では、亜鉛が低値であることがわかっています。またこれらの疾患で服用される薬剤で亜鉛が低下することもわかっています。具体的には、降圧利尿剤、ACE阻害剤、ARBなどの高血圧治療薬、スタチン剤などです。

 

亜鉛不足はCOVID-19 感染の予後が悪くなること、重症化することなどが報告されています4)。

 

それではCOVID-19感染に対する亜鉛投与の有効性はどうでしょうか?
 

亜鉛の単独投与では細胞内の濃度を上昇させるのが難しく、亜鉛イオノフォアの併用投与が必要ですが、米国では、亜鉛+イオノフォアの投与により、COVID-19患者の院内死亡率が24%低下したという報告もあります4)。

 

ただ、亜鉛の単独投与ではもちろん死亡率改善効果はなく、他の薬剤との併用投与で効果が認められていました。現在、亜鉛単独投与ではなく、ビタミンCやビタミンDとの併用投与によるランダム化比較試験が進行中です。

 

亜鉛サプリメントは、適切な摂取量であれば、高い安全性が示されています。免疫能の維持など保健機能のための一般的な亜鉛サプリメントの摂取目安量は、1日あたり10mg~20mg前後です。症状の改善を目的とした場合、予防よりも多い量を数日間、摂取します。

 

例えば、風邪に対する亜鉛の有用性を検証した臨床試験では、亜鉛を1日あたり80mgの用量で、数日間の投与が行われています4)。

 

本邦でも、亜鉛の摂取不足が示されており、特に、COVID-19の高リスク群である肥満や糖尿病などの生活習慣病有病者で顕著です。さらに、亜鉛の免疫調節作用や抗ウイルス作用は確立しており、積極的に摂取する必要があります。亜鉛は牡蠣などの魚介類に多く含まれる他、サプリメントや医薬品からも摂取することができます。

 

しかし、亜鉛のみを補うと銅の吸収が阻害されて銅欠乏症になる可能性があるため、亜鉛をサプリメントや医薬品から補う場合は併せて銅をはじめとした他のミネラルと一緒に摂ることをおすすめします。

 

ただ、市販のサプリメントなど我流で亜鉛を摂取しすぎると銅や鉄が低下することがあります。ですから、医療機関で定期的に血液検査をして医学的にモニターするなどして管理しておく必要があります。

 

参考文献
1)ミネラルの事典.糸川嘉則編.朝倉書店 2003
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と栄養・睡眠・運動


2)東口 髙志ら:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療と予防に関する栄養学的提言 . 日本臨床栄養代謝学会 2020 ; 2 ; 84 – 94 .

 

3)ビタミン D が不⾜すると新型コロナウイルス感染症が重症になる

 

4)蒲原 聖可:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防および治療に関する亜鉛の臨床エビデンス . 医と食 2021 ; 13 ; 51 – 59 .

 

5)医療法人信岡会 菊池中央病院2019、亜鉛と感染症

 

前回はこちら

 

Q6-1.

テレビを見ると毎日コロナの報道ばかりで気が滅入ります。不安で、何を信じてよいのかわからなくなってきた矢先のことでした。

 

そこで元来心配性で取り越し苦労の私は、昨年から飯嶋先生に、いろいろな予測についてお尋ねしようとしました。

 

すると、昨年の先生は「私は及ばずながら科学者の端くれのつもりです。占い師や預言者ではありません!」と冷たいお返事でした。

 

そこで、私は「お医者様でも科学的に予後を占うこともされませんか?」と詰め寄ったところ(大変失礼いたしました!)。

 

「ご尤もです!」と頷いてくださり、その後、先生のいろいろな可能性や予測、考え方について勉強させていただくことができました。先生の予測はことごとく的中して驚いていますが、何か変更点はありますか?

 

 

A6-1.

ご質問ありがとうございます。あなたの突っ込みには参りました。とても説得力があり、私も覚悟を決めた次第です。

 

ただし、私は予言者でも超能力者でもないので、予測がことごとく的中しているわけではありません。皮肉なことに、悪い予測ほどよく当たっていたようです。気が付くと、昨年から結構な数の予測的発言をしてきたことに驚いています。
 

 

列挙してみたところ課題は1)から22)に上りました。

 

そこで、本日を含めて、5回に分け、それぞれに対して、<昨年公表済みの私の予測>と<現状>とを併記しましたので、比較しながらお読みいただけると思います。


ただし、これらは現時点における経過報告にすぎません。全容の解明にはほど遠いのが実情です。不十分な点は多々ありますが、ご了承ください。

 

 


1)ウイルスの発生源: 
<昨年公表済みの私の予測>

発生源は中国武漢ウイルス学研究所(ノーベル賞受賞者の山中教授、米国民主党支持者の多くは否定的見解だった模様!)この説を唱えると、<陰謀論者>というレッテルまで貼り付けられるほどでした。 


⇒ <現状>欧米ともに私と同様の見解に傾きつつある

 

 

2)ウイルスの素性:      
<昨年公表済みの私の予測>

加工(半人口)ウイルス 


⇒ <現状>未解明(早期の解明が待たれる)

 

 

 

3)感染拡大は夏季になれば収まるか?
<昨年公表済みの私の予測>

終息しない(夏季の南半球、亜熱帯地方でも発症しているため。人口ウイルスであることを前提とするならば、猶更収拾しないのではないか⁉)


⇒ <現状>今年も、夏季に蔓延した。楽観的な見通しのために、水際作戦に失敗し、感染を拡大させてしまった。

 

 

4)感染様式:         
<昨年公表済みの私の予測>
接触感染⇒飛沫感染⇒飛沫核感染⇒空気感染のすべて


⇒<現状>当初は、「ヒト・ヒト感染はしない」とする専門家?さえ存在。しかし、上記の⇒の方向(接触感染⇒飛沫感染⇒飛沫核感染⇒空気感染)へ次々と、なし崩し的に修正され、対策が後手後手となってしまった。

最近になって、「デルタ変異株の感染力は水痘(空気感染)並み」ということが国際的常識となった。 

 

 

 

5)ウイルスの変異:
<昨年公表済みの私の予測>

RNAウイルスの性質上、変異は不可避


⇒ <現状>α株から始まり、現在でもデルタ株、ラムダ株、・・続々と発生している。

 

<亜鉛による免疫栄養療法の実際>

 

亜鉛は鉄に次いで多く体内に存在するミネラルで、体内の様々な酵素を正常に働かせるために必要な栄養素です。しかし、加齢による吸収率の低下や、リン酸塩などの食品添加物による吸収率の低下、多剤内服やアルコールの過剰摂取により消費される等といった理由から亜鉛は欠乏しやすい栄養素です。亜鉛は欠乏すると免疫力の低下、味覚障害、嗅覚障害、多彩な皮膚疾患、食欲不振など様々な症状が現れるようになります。


亜鉛は味覚障害を改善し、傷口(皮膚)や消化管粘膜の治癒を促進する他、
肝硬変、糖尿病(インスリンの合成・分泌を促進)、腎性貧血(ヘモグロビン合成促進)など多数の病気を改善します。それは、亜鉛の持つ抗酸化作用や免疫力向上作用など命の維持に深く関わっています。

 


それでは、亜鉛欠乏状態はどのようにして評価するのでしょうか?

 

亜鉛欠乏状態のスクリーニング検査法

 

採血をして血清の亜鉛とALP濃度(亜鉛酵素)の濃度を測定します。

 

血清亜鉛の血清濃度は日内変動があります。午前中は高く、午後には約20%低下すると言われています。また、食後にも低下するため、より厳密に血清亜鉛値を測定する必要がある際には、早朝空腹時に採血をする必要があります。 

 

 

亜鉛欠乏症の診断のためには、血清の亜鉛と共にアルカリフォスファターゼ(ALP)の濃度の低下を確認する必要があります。

 

・60µg/dL未満:亜鉛欠乏症

・60 ~ 80µg/dL未満:潜在性亜鉛欠乏

・80µg/dL以上:亜鉛充足

 

亜鉛欠乏症もしくは潜在性亜鉛欠乏と評価された場合には、どのような対応が必要ですか?

 

血清亜鉛が欠乏する原因となる疾患があれば、原因疾患の治療を優先的に行ないます。

 

 

 

亜鉛欠乏の治療指針

亜鉛欠乏の程度にしたがって食事による亜鉛補給か経口亜鉛製剤の併用を検討します。

 

まず、潜在性亜鉛欠乏の場合は、食事療法から開始します。

 

・亜鉛を多く含む食品は、牡蠣、肉類、種子類(ごま・ナッツ・ココア)、卵、小魚、甲殻類などです。
 

食事療法で改善しない場合や、亜鉛欠乏症の症状が現れている場合は、食事療法に加えて経口亜鉛製剤(プロマック®、ノベルジン®)の併用を開始します。

 

なお、慢性肝疾患、糖尿病、慢性炎症性腸疾患、腎不全では、しばしば血清亜鉛値が低値を示します。血清亜鉛値が低い場合、亜鉛投与により基礎疾患の所見・症状が改善することがります。したがって、これら疾患では、たとえ亜鉛欠乏症状が認められなくても、亜鉛補充が考慮されます。

 

当クリニックにおいては、亜鉛の補充は新型コロナ感染症予防するための基本的な戦略の一つに位置付けています。なぜならば、亜鉛などの必須ミネラルが不足した状態では、ビタミン類の効果も十分に発揮できず、漢方薬の効き具合でさえ低下してしまうことを経験してきたからです。

 

次回は、明日(9月8日)、免疫栄養療法(その4)では、

<亜鉛による免疫栄養療法における注意点>を取り上げます。亜鉛による感染症予防のための医学管理の実際について紹介します。

前回はこちら

 

Q5.

私は気管支喘息、アレルギー性副鼻腔炎、通年性の花粉症(アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎)、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー(小麦、甲殻類など)で高円寺南診療所の頃から10年以上、先生の御世話になっています。

 

それまでは、眼科・耳鼻咽喉科・皮膚科・呼吸器内科のすべての科を受診し、そのストレスのせいか蕁麻疹で眠れなくなりメンタル科も受診していました。

 

友人の紹介でこちらでお世話になってからは、こちらの受診に一本化することができたため、アレルギー疾患の総合商社のような私も社会復帰を果たし、文字通り外資系総合商社で活躍できるまで元気になりました。

 

先生が準備して勧めてくださった<漢方レシピ>による養生を実践し、お陰様で、風邪一つひくことなく、また抗アレルギー薬の減量にも成功しました。

 

しかし、最近仕事の都合で、どうしてもワクチンを接種しなければならない立場になりました。

そこで、家族の生活を守るためにもワクチンの接種を決断しました。ただし、家族が副反応をとても心配しています。

 

実は、私自身も不安でいたたまれない気持ちで怯えています。アレルギー専門医である先生のご助言ををいただくことはできるでしょうか。

 

 

A5. 

すでに同様の御質問を多数受けているからです。あなたのご心配はよくわかります。

 

ワクチン接種を決断されたとのこと承りました。

 

日曜日(9月5日)の記事をお読みになってもその決意が変わらないのでしたら、あなたの決断を尊重すべきだと考えます。以下それを前提としてコメントしたいと思います。

 

まず安心していただきたいのは、複数のアレルギー疾患の患者でも、ほとんどは新型コロナワクチンを接種することは可能だとされているということです。

 

あなたが、しっかりと治療を継続して安定期を迎えていることは、私がよく存じ上げています。

 

禁煙にも成功され、他の患者さんと比較して特別なリスクはありません。

 

さて当クリニックの患者さんは、アレルギーの患者さんにもインフルエンザワクチンを接種していただいておりますが、30年以上、安全に実施してきました。

 

むしろ、アレルギーの治療をしっかりと行っている方の副反応は、新型コロナワクチンについても、軽く済んでいるくらいです。ましてアナフィラキシー・ショックなどの重篤な副反応の報告は、まだ一例もありません。

 

 

 

ちょうど、最近、私が所属する日本アレルギー学会からの声明が発表されましたのでご紹介しておきましょう。
 

日本アレルギー学会は、ようやくアレルギー疾患を有する一般向けに、新型コロナワクチンの接種に関する声明文を発表しました。

 

アレルギー疾患の患者について、「ほとんどの方でワクチン接種は可能」とし、学会としてワクチン接種を「推奨する」との姿勢を示しています。
 

 

声明では、気管支ぜんそくの他、食物アレルギーやアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などのぜんそく以外のアレルギー疾患がある場合であっても、「接種するワクチン成分以外のものに対してアレルギーを持つ方も接種は可能」との見解を示しています。

 

ワクチン接種を慎重に判断する必要がある対象者については具体的に言及しました。加えて、「ワクチン接種後に軽いぜんそく発作を起こすとする報告があるため、医師から処方された薬剤の吸入・内服を日頃から確実に行い、接種前に体調を整えておくことを薦める」など、注意も促しています。
 

 

原文を添付いたします。

COVID-19ワクチン接種に関する学会声明について Ver.2 0823

 

明日9月7日(火)は、

「Dr.飯嶋の昨年の予測と今年の現状との比較」

を掲載予定です。

前回はこちら

 

日本では、COVID-19対策として、医薬品やワクチン製造には取り組んでいますが、栄養食品やサプリメントの有用性に関する研究はあまりなされていません。しかし、諸外国では、機能性食品成分に関する感染防御の検討がなされており、一定の有用性が示されています。特にビタミンや微量元素の感染防御効果が確かめられつつあります2)。

 

現在、最も明らかなエビデンスがあるのはビタミンDです3)。ビタミンDの投与で感染予防効果や重症化抑制効果が認められています。同様に注目されているのが微量元素の亜鉛です4)。

 

亜鉛(Zn)は古くから注目されてきた微量栄養素です。亜鉛は骨および筋肉に多く含まれています。また、肝臓、脾臓、膵臓などの重要臓器にも存在します。酵素の構成成分および補酵素として、200種類以上の酵素による代謝に大きく関与しています。

 

亜鉛は必須微量元素のひとつで、感染症領域では免疫関係に大きく関与することが解ってきました。亜鉛が欠乏すると、免疫機能が低下します。そしてその免疫不全の特徴は胸腺の萎縮とそれに伴う細胞性免疫の機能低下です。その他にも樹状細胞の活性低下、その他多くの免疫機能に障害が及んできます。つまり感染症に罹りやすくなります5)。

 

実際、亜鉛欠乏では、風邪の原因ウイルス、単純ヘルペスウイルス、C型肝炎ウイルス、HIVウイルスなどのさまざまなウイルスの感染リスクが高まることが示されています。また、亜鉛はコロナウイルスの複製を阻害します4)。

 

コロナウイルスは、インフルエンザウイルスなどと同様にRNAウイルスに分類されます。こうしたRNAウイルスに対して、亜鉛は、RNAウイルスを複製する酵素であるRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)を阻害することでウイルスの複製を防ぐ働きがあります4)。

 

また、亜鉛サプリメントによる風邪や肺炎の感染予防や症状改善効果が示されています。

 

これまでの亜鉛を投与した研究に関する系統的レビュー/メタ解析によると、

 

- 成人における風邪の罹病期間が33%短縮

 

- 小児5,193 人では肺炎の罹患率が13%低下

 

- 成人2,216 人での重度の肺炎の死亡率が低下

 

といった亜鉛の効果が見出されました。

 


 
さて、肥満や糖尿病、高齢者などは、COVID-19の高リスク群です。

これらの人々では、亜鉛が低値であることがわかっています。またこれらの疾患で服用される薬剤で亜鉛が低下することもわかっています。具体的には、降圧利尿剤、ACE阻害剤、ARBなどの高血圧治療薬、スタチン剤などです。

 

亜鉛不足はCOVID-19 感染の予後が悪くなること、重症化することなどが報告されています。

 

それではCOVID-19感染に対する亜鉛投与の有効性はどうでしょうか?
 

亜鉛の単独投与では細胞内の濃度を上昇させるのが難しく、亜鉛イオノフォアの併用投与が必要ですが、米国では、亜鉛+イオノフォアの投与により、COVID-19患者の院内死亡率が24%低下したという報告もあります。

 

ただ、亜鉛の単独投与ではもちろん死亡率改善効果はなく、他の薬剤との併用投与で効果が認められていました。現在、亜鉛単独投与ではなく、ビタミンCやビタミンDとの併用投与によるランダム化比較試験が進行中です。

 

亜鉛サプリメントは、適切な摂取量であれば、高い安全性が示されています。免疫能の維持など保健機能のための一般的な亜鉛サプリメントの摂取目安量は、1日あたり10mg~20mg前後です。症状の改善を目的とした場合、予防よりも多い量を数日間、摂取します。

 

例えば、風邪に対する亜鉛の有用性を検証した臨床試験では、亜鉛を1日あたり80mgの用量で、数日間の投与が行われています。

 

 

本邦でも、亜鉛の摂取不足が示されており、特に、COVID-19の高リスク群である肥満や糖尿病などの生活習慣病有病者で顕著です。

 

さらに、亜鉛の免疫調節作用や抗ウイルス作用は確立しており、積極的に摂取する必要があります。

 

ただ、市販のサプリメントなど我流で亜鉛を摂取しすぎると銅や鉄が低下することがあります。ですから、医療機関で定期的に血液検査をして医学的にモニターするなどして管理しておく必要があります。

 

 

参考文献
1)ミネラルの事典.糸川嘉則編.朝倉書店 2003
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と栄養・睡眠・運動

 


2)東口 髙志ら:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療と予防に関する栄養学的提言 . 日本臨床栄養代謝学会 2020 ; 2 ; 84 – 94 .

 

3)ビタミン D が不⾜すると新型コロナウイルス感染症が重症になる

 

4)蒲原 聖可:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防および治療に関する亜鉛の臨床エビデンス . 医と食 2021 ; 13 ; 51 – 59 .

 

5)医療法人信岡会 菊池中央病院2019、亜鉛と感染症


ワクチン接種の可否について、私はこれまで仮説段階に過ぎない私見を述べることには慎重な立場でした。つまり、ワクチン接種を推奨することも抑止することも差し控えて参りました。


しかし、皆様の健康管理のために必要な医療情報を得るための問診であるとはいえ、クリニックでの診療中にワクチンの接種状況について確認すること自体が、患者の皆様にワクチン接種を間接的に推奨しているかのような影響を与えてしまうことに気が付きました。


しかし、クリニックの場を離れた私的なインテリジェント・エクササイズ集団である水氣道の稽古に参加されている同士(=会員)の皆様にだけは「コロナワクチンは十分には効かないので、仮にワクチンを接種しても油断しないでください!」と控えめにお伝えしてきました。デルタ株が主流になってからは、その他の皆様にも慎重にお伝えしています。


今回は、今年の5月下旬から、わたしが最も注目し続けてきた阪大医学部の荒瀬教授の研究報告をご紹介したいと思います。

 

この間、主要マスコミが積極的に取り上げて、政府においても十分検討され始めることを期待しておりましたが、一向にその気配がないまま解散・総選挙に突入する模様です。残念ながら、厚生労働省の公式サイトの質疑応答の内容でさえ最新の医学情報を反映しているとはいえません。

 

以下の紹介論文は内容が専門的で高度であるため、予め4つのキーワードを提示させていただいたうえで、論文の要約(全文)と考察(抜粋)に解説を試みました。

 

荒瀬論文の婉曲で慎重な言い回しに、真実を伝えることのご苦労のほどが伝わってくるような気がします。

 

用語解説:あらかじめ以下の4つのキーワードを把握していただけると、論文紹介がわかりやすくなります。


*1:ACE2=新型コロナウイルスが細胞へ感染するときの細胞表面受容体。


*2:RBD(Receptor Binding Domain)=受容体結合領域
新型コロナウイルスのスパイクタンパク質(Spike)がACE2と結合する領域。 閉じた構造のRBDはACE2に対する結合性が低いが、開いた構造のRBDが増えるとACE2に対する結合性が高くなり、感染性が高くなる。


*3:NTD(N-Terminal Domain)=N末領域
スパイクタンパク質(Spike)のアミノ酸のN末の領域。
阪大の荒瀬教授がその機能を解明中の領域。


*4: ADE(Antibody Dependent Enhancement)=抗体依存性感染増強
ウイルス粒子に抗体が結合することで感染が増強する現象。

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

COVID-19関連追加(2021年8月25日)
抗NTD感染性増強抗体とDelta 4+について

 

 

★当院HP関連ファイル:

・新型コロナウイルス感染症まとめver3-2(2021年7月7日)ADEについて

 

【SARS-CoV-2 Delta変異は,野生型スパイクワクチンに対する完全な耐性を獲得する準備が整っている】

 

Liu Y,…,Arase H. The SARS-CoV-2 Delta variant is poised to acquire complete resistance to wild-type spike vaccines. bioRxiv. Posted Aug 23, 2021.

 

<Abstract(要約)>とその注釈⇒:飯嶋

 

mRNAベースのワクチンは,SARS-CoV-2のほとんどの一般的な変異ウイルス(⇒デルタ変異株以前の変異株)に対して効果的な防御を提供する。


しかし,今後のワクチン開発においては,ブレイクスルー変異ウイルスを特定することが重要である。


本研究では,Delta変異ウイルスが,抗N末端ドメイン(NTD)中和抗体(⇒ウイルスを解毒する抗体)から完全に逃れる一方で,抗NTD感染性増強抗体(⇒感染力を高めてしまう抗体)への反応性を高めることを発見した。


Pfizer-BioNTech社(⇒ファイザー社)のBNT162b2免疫血清はDelta変異ウイルスが,Deltaウイルスの受容体結合ドメイン(RBD)に4つの共通変異を導入すると(Delta 4+),BNT162b2免疫血清の一部が中和活性を失い,感染性が増強(⇒ワクチンが効かないだけでなく、むしろ感染力を高める)された。


BNT162b2免疫血清の感染性増強には,Delta NTDにおいて唯一の変異(unique mutations)が関与していた。


野生型スパイクではなく,Deltaスパイクで免疫したマウス血清は,感染性を高めることなく,一貫してDelta 4+変異ウイルスを中和した。


GISAIDデータベースによると,3つの類似したRBD変異を持つDelta変異ウイルスが既に出現していることから,このような完全なブレイクスルー変異ウイルスを防御するワクチン(⇒現在実施されているワクチンでは防禦できない)を開発することが必要であると考えられる。

 

 

 

<Discussion(考察)>の要点(抜粋・注釈⇒:飯嶋

 

Delta変異(⇒新型コロナウイルスのデルタ株)は感染性が強く,完全ワクチン接種した人へのブレイクスルー感染がしばしば観察される(Lopez Bernal et al., 2021)。

 

このことから,完全ワクチン接種した人(⇒2回のワクチン接種を完了した人)の中和抗体は,Delta変異を防御するのに十分ではないと考えられる。(⇒それならば、3回目のブースター接種をすればよいのか?

 

ほとんどの中和抗体はDelta RBDに結合し,感染を中和した。したがって,RBD変異だけでは,Delta変異に対するBNT162b2免疫血清の中和力価の低下を説明できない可能性がある。

 

Delta変異ウイルスは,広く使用されているmRNAワクチンの抗原成分である野生型スパイクタンパク質によって惹起される抗NTD中和抗体に対して完全に抵抗性(⇒ワクチンはまったく効果が無いということ)であることが示された。

 

一方,ほとんどの抗NTD増強抗体は,Deltaスパイクを野生型スパイクと同じレベルで認識し,一部の抗NTD増強抗体は,野生型疑似ウイルスと比較して,Delta疑似ウイルスによる感染性増強(⇒ワクチン接種でかえって感染力を高めてしまうということ)を示すことがわかった。

 

中和抗体の結合を無効にし,増強抗体の結合を維持するNTDの変異は,ウイルスにとって有益である(⇒人類にとっては有害である)と考えられる。


 
BDに4つの追加変異があるDelta変異は,NTDに唯一の変異(unique mutations)があるため,ほとんどのBNT162b2免疫血清で中和されなかった(⇒効果がなかった)。

 

さらに重要なことは,Delta 4+の感染性は,一部のBNT162b2免疫血清によって増強された(⇒より感染し易くなった)ことである。

 

Deltaスパイクを発現するmRNAワクチンの開発は,新たに出現するDelta変異の制御に有効であると考えられる。

 

しかし,中和抗体ではなく増強抗体のエピトープは,Delta変異を含むほとんどのSARS-CoV-2変異ウイルスでよく保存されている。

 

そのため,野生型のSARS-CoV-2に感染したことがある人や,野生型のスパイクタンパクからなるワクチン(⇒日本国内で接種が推奨されているファイザーやモデルナのワクチン)で免疫したことがある人では,SARS-CoV-2変異ウイルス由来のスパイクタンパクを追加で免疫することで,中和抗体よりも増強抗体が高まる(⇒免疫を得るどころか、かえって感染を招き重症化させてしまう)可能性がある。

 

メジャー変異ウイルスで観察されたRBD変異を含むが,増強抗体エピトープを欠く全スパイクタンパク質(whole spike protein)は,ブースターワクチンとして検討する必要があるかもしれない(⇒現在使用されているワクチンで3回目の追加接種するのは慎重に再考すべき!すでにワクチンを接種した方は、今後、新たに開発されたワクチンの成果を待って追加接種することが必要となる可能性がある!)。
 


 
<はじめに>

 

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染を原因とするCOVID-19が、パンデミック(世界的大流行)となってすでに一年以上を経過しています。

 

日本ではいわゆる第4波の流行が発生し、第5波の本格的な到来も警戒されています。

 

 

COVID-19対策として

 

① 私たちの身体に本来備わっている自然免疫力を強化する。

 

② 原因ウイルス(SARS-CoV-2)への接触機会を減らす。

 

③ ワクチン接種(人工的獲得免疫)により原因ウイルス感染による重症化や 
死亡者数を減らす。

 

という3つが大切です。

 

 

 

①に関しては忘れられてきた感があります。国や厚生労働省、保健所に至るまで、もっとも基本となる指針を示してこなかったことは残念です。

 

医療崩壊の原因は、この①の不備にこそあるのではないか、と私は考えています。医療崩壊よりずっと前から保険医療制度が崩壊していたことを指摘する識者は非常に限られています。

 

予防が大切であることは国民の常識ですが、予防は保険給付の対象外であるため、国民の行動変容には繋がりにくかったのではないかと残念に思っています。

 

そのうえ、保険医療機関が圧倒的多数であるわが国において、不採算な予防活動に大きな力を注ぐことには限界があることも問題です。

 

 

 

杉並国際クリニックでは、前身の高円寺南診療所30年間に培った診療コンセプトを発展させ、

 

1)生活リズム、

2)栄養、

3)運動、

4)メンタルヘルスを基盤とする自然志向

 

をモットーとしてきました。

自然志向とはいっても、現代医学から全く離れるというのではなく、むしろ、それを最大限活用しています。

 

現代医学を最大限に生かすための条件が、水氣道®の開発・普及、漢方薬や鍼灸療法も含めた自然志向なのです。しかし、予防医学の実践には保険医療のサポートが得られていないことが悩みの種です。

 

 

昨年のPCR検査待ち、今年のワクチン接種まち、感染者の入院待ちなど、待たされ続けですが、その間の養生法についてほとんど納得のいく指針が示されてこなかったことも大問題です。

 

それは、わが国の医療が国民皆保険制度にしたがっているため、感染拡大を防止し、パンデミックを予防するための有効な対策を講じるうえで、かえって大きな障害となっていることを指摘しておきたいと思います。

 

 

 

②に関しては従来から続けられてきた3密対策や、飲食店の自粛などが実践されています。

 

国民も事業者も、すでに最大限の努力を強いられてきました。現実的に物事を考える習慣がついている人であれば、この方法にも限界があることは理解しているはずです。

 

諸外国ではロックダウンまで実施されましたが、成果はあがらず、不満とストレスが増えました。

 

 

人々の行動をいくら制限しても、①自然免疫力を低下させてしまうことに対する対策を講じなければ家庭内感染を増やしてしまうことになることを言及する声が少ないのは残念です。

 

集団発生は5人以上でクラスターとされますので、4人以下の家庭では全員が感染してもクラスター発生として計上されないことになります。わが国の標準家庭は、特に東京などの都市部では核家族化が進行しているため、事実上のクラスターのほとんどが注目されることがないことにも疑問を感じてきたところです。

 

 

適切なサポートなく孤立を余儀なくされた方たちが急速に免疫力を低下させ病状や生命予後を悪化させる可能性が大きいことを懸念する声が医師の側からもほとんど発せられていないことも残念なことです。

 

人間は「世間から見捨てられた、この世には絶望した」という精神状態になると短期間のうちに命を落としていく多数の事例があったことは、アウシュビッツ収容所の生き残りであるフランクル博士の証言や記録によって世界中に知られているはずです。

 

しかし、歴史から学ぶことのできるリーダーがほとんど活躍していないのが現実であり、とても残念です。

 

 

 

③に関しては現在急いで接種が急がれているワクチンが有効であるとされてきました。

 

しかし、現在のワクチン接種により感染そのものを防ぐことはできません。そのうえ現在優勢になっている変異ウイルスに対する有効性が低下していることは続々と発表されつつあります。

 

なお若年者までをワクチン接種の対象とすべきかは依然大きな疑問が残されたまま積極的に奨励されていることも問題です。

また、ワクチンを接種しない人も一定の割合で当然存在していますし、その人たちの意思も尊重されなければなりません。

 

ワクチンは万能ではなく、集団免疫の獲得も期待できません。

 

 

そこで、再度見直さなくてはならないことがあります。

 

ワクチン以外でもヒトの側でのウイルス感染への抵抗性を高める対策が大切です。具体的には、適切な食事・運動・睡眠で、免疫能を整えることです。

 

なお、当クリニック推奨の戦略的漢方レシピの服用者および水氣道®の継続実践者の中で感染者は一人も出ていないことはたびたび御報告してきたとおりです。

 

 

 

次回

週明けの月曜日(9月6日)に、

免疫栄養療法(その2)で微量元素の亜鉛(Zn)を取り上げます。

亜鉛による感染症予防のための理論と実践例について解説します。

 

 

参考文献

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と栄養・睡眠・運動

医療法人信岡会 菊池中央病院2020

<線維筋痛症 JFIQの経過報告>

 

(図1)

スクリーンショット 2021-08-31 15.11.45

 

 

JFIQは線維筋痛症の経過観察に欠かせない指標です。

 

 

最高点が100点で、20点未満が正常値になります。

 

 

 (図1)は左側が初期時の点数、右側が現在の点数でその2点を結んだものです。

 

 

 

 図2)

スクリーンショット 2021-08-31 15.14.51

 

 

(図2)は線維筋痛症の治療効果の割合を表したものです。

 

 

 50以上点数が下がると「著効」です。

 

 

 20以上50未満点数が下がると「有効」です。

 

 

 20未満の点数の低下は「無効」の判定となります。

 

 

 

<今回の考察>

 

 

正規性の検定で初期値、現在値共に正規性がありました。

 

 

その後、関連2群の検定と推定を行いました。

 

 

1)統計的にみて、JFIQスコアが有意に改善したことが証明されました。P(危険率)=0.001%でした(図1)

 

 

pが0.05以下であれば統計学的優位である。

 

 

pが0.01以下であれば統計学的に極めて優位である。

 

 

 

2)JFIQスコアの判定基準として、20点以上改善されると治療が有効、50点以上改善されると著効となります。

 

 

  今回、9の平均で  29.7点改善していたため、全体として鍼治療は   有効であったと言えます。

 

 

個別でみると、著効1名(11%)、有効5名(55.6%)、無効3名(33.3%)でした。

 

 

 

杉並国際クリニック 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

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Q4.

私は不覚にも、先生が準備して勧めてくださった<漢方レシピ>による養生を実践せず、新型コロナを発症させ、家族にも移してしまい、大変な思いをしました。幸い、その際には先生に連日栄養増強剤を注射していただき事なきを得ました。その後は、家族共々、<漢方レシピ>を実践し、お陰様で元気に過ごしています。それでもワクチンを接種すべきでしょうか。

 

 

A4. 申し訳ございません。残念ながら、私にも確かな答えはありません。
  <ただし、私が昨年の5月下旬ころから注目していた大阪大学の荒瀬尚教授(微生物病研究所 免疫化学分野)の研究成果が有力な手掛かりになる可能性があります。現在熟読考査中ですので、日曜日(9月5日)に改めてご紹介しますので、是非、ご確認ください。>

新型コロナウイルスのワクチンに関して、どうしてもお知らせしておきたい最近の研究!

 

確かな答えのためには正しい判断、正しい判断をするには、正しい情報が必要だからです。その肝心な正しい情報を取得することは容易ではありません。そもそも、正しい情報とは何なのでしょうか?

 

主要各国の政府やWHO、米国疾患予防管理センター(CDC)、米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)などは信頼に足るデータをはじめ科学的証拠(エビデンス)に基づいて方針を決定することになっています。またNature, Lancet, New England Journal of Medicineなどの超一流とされてきた医学雑誌でさえ、新型コロナ関連の論文に関しては、鵜呑みにはできないのが現実です。

 

しかも、実際には世界中の研究者やその他の人々が注目するWHO(事務局長:テドロス・アダノム氏)、CDC(所長:ロシェル・ワレンスキー氏)、NIAID(所長:アンソニー・ファウチ氏)の声明や意見勧告の内容は、この一年間で二転三転しています。エビデンスを論ずる以前に、確かな事実(ファクト)の確認(チェック)作業が必要なのですが、それすら覚束ない段階で断定的な意見を述べる権威者や権力者が世界中にはびこっています。

 

昨年から同じことを懸念し続けている私と比較して、これらの方々の意見が大きく変わるのは、彼らが特別に優秀だからでしょうか。「君子豹変す」という警句がありますが、私はとうてい彼らのような君子にはなれそうもありません。

 

新型コロナウイルスの由来の解明を妨害し故意に遅らせている勢力が現存している限り、検査法や治療法にゴールドスタンダートは見出しにくいことを推測することは難しくありません。

 

このような残念な国際状況ではありますが、私自身は一貫として『既感染者の方は、必ずしもワクチンを接種する必要はないのではないか』と考えてきました。その理由は、一般的に、感染し発症した人の免疫力は、未感染でワクチンを接種した人より強力であると考えることができるからです。しかし、再感染例も報告されていて、なかなか一筋縄ではいきません。 

 

ただし、医師として、より責任をもってお答えするうえでは、あなたの血液中の抗体価を測定してから判断することをお勧めしたいと思います。もし抗体価が低ければワクチンの接種を検討する選択肢が有力になる可能性があります。もっとも、抗体価が高いからといって再感染が免れるかどうかは確実ではありません。抗体は量だけでなく質が問題になってくるからです。現在は、デルタ変異株が主流になっていますが、あなたの初回感染によって獲得した抗体がデルタ株に対応しているかどうかは定かではないからです。

 

あらゆるワクチンは主治医と相談し、十分に納得して覚悟を決めてから接種すべきであり、納得できず不安な状況で急いで接種することは望ましくないと考えます。

 

なお9月6日(月)は、「アレルギー患者のワクチン接種の可否について」を掲載予定です。

 

前回はこちら

 

PCR検査の問題点についてのご質問  

 

Q3.

飯嶋先生は、昨年から、PCR検査は新型コロナ感染症の診断に使用すべきではない、「PCR陽性者=新型コロナウイルス感染者」というメディアの発表は誤りだ、とのご意見でした。

それは、今でも同じお考えでしょうか。朝から晩まで、昨年からはPCR検査、今年はワクチン接種のニュースでもちきりなので、不安な日々です。

 

 

A3. 

新型コロナ流行当初から、陽性判定に用いられてきたPCR検査ですが、無条件に信用してはいかないというのが、私の一貫した判断です。

 

PCR検査を巡っては、その正確性を疑問視する声があがっていました。

 

ウイルスの検出に必要なサイクル数(Ct値)に国際的な標準はなく、値が高ければウイルスが少なくても陽性と診断されるからです。

 

また、不活化した(死んで感染性の無い)ウイルスの断片と活性のある(生きた感染性のある)ウイルスを区別できない場合もあり、偽陽性のリスクが高まるという懸念も当初からありました。

 

とりわけ、インフルエンザ感染者やその他の別の感染症をも陽性としてしまうことはないのかという懸念が当初の私にはありました。

 

 

その後、いろいろな情報を得ることができ、少なくともインフルエンザのみの感染者が新型コロナPCR検査で陽性になる可能性は高くないようです。

 

しかし、インフルエンザと新型コロナの両方が循環している場合、現在のPCR検査ではSARS-CoV-2のみは検出できても、インフルエンザは検出できないことにより注意すべきではあると思います。

 

 

インフルエンザの季節が近づくにつれ、呼吸器疾患の症状のある患者はインフルエンザと新型コロナの両方について対応すべきです。

 

新型コロナばかりに気を採られていると、インフルエンザの症例を見逃す可能性が増大します。そのため、検査をするのであれば、新型コロナだけで検査を受けて安心すべきではありません。

 

一般の素人の方ばかりではなく、博士号や専門医を持っているような医師仲間からでさえ、「ニュースや医学論文を見ていないのか!」「多くの人が亡くなっているのになんてことを書くんだ!」「PCR検査で頑張っている保健所や医療従事者に失礼だ!」などなど、不謹慎だと怒られてしまうこともありました。


 

今でも、たまにテレビのニュースを見ると、相変わらず「今日は〇〇人が感染!これまでで最高の発生数」などと発表されます。

<PCR検査陽性≠新型コロナ感染>なのですが、この程度の説明では世間様には全く通用しません。このような状況にあっては、一般の方が、とてつもなく恐ろしいウイルスのように思えてくるのは当然の成り行きです。

 

 

昨年から引き続き多くの人が検査を受けています。

 

しかし、PCRを感染症の診断に使ってはいけないと、警鐘を鳴らす専門家が多数存在しました。わが国でも徳島大学医学部の大橋眞名誉教授をはじめ、ほとんどが現役を離れた(つまり、国に忖度しなくて済む)名誉教授の肩書をもつ方です。

 

 

現役の教授から説得力のある情報を得ることはほとんどありませんでした。大橋先生のご発言に対して、残念ながら、国から予算を得ている徳島大学当局も必死に大橋発言とは無関係であることをアピールております。
 

 

本学名誉教授 大橋眞氏の活動に対する苦情について - 国立大学法人 徳島大学 (tokushima-u.ac.jp)

 

 

もとより最大限に尊重すべきであったのはPCR法(ポリメラーゼ連鎖反応法)を考案した研究者自身の警告であったはずです。

その方こそ、PCR法の開発でノーベル化学賞を受賞した、キャリー・マリス(Kary Banks Mullis)博士です。

博士は残念ながら2019年8月に74歳で死去(死因は肺炎とされますが詳細は不明)されています。

 

実は、この開発者本人が生前に、どのような目的でこの検査を用いるべきかを精力的に講演していました。そのうえで、コロナのような『感染症の診断にPCR検査を使ってはいけない』と警告していました。

 

 

元来、PCR法とは遺伝子(DNAやRNA)配列を可視化するために、遺伝子の一部を数百万から数億、数十億倍に複製する技術です。PCR検査とはウイルスそのものを直接検出するものではありません。

 

それは唾液などのサンプルの中に新型コロナの遺伝子の一部があるかを見て、ウイルスの存在を間接的に判断するという方法です。そのため遺伝子の一部さえ合致していれば、インフルエンザや他のウイルスでも反応して、陽性反応を示すケースがあります。

 

 

なお米疾病管理予防センター(CDC)は7月21日、新型コロナウイルス(中共ウイルス)について、「PCR検査を推奨しない」とする新たなガイドラインを発表しました。今後は新型コロナウイルスとインフルエンザを区別できる「マルチプレックスアッセイ」という検査法を推奨するとしています。

 

それ以前の段階でCDCは昨年11月、PCR検査の基準値について、「患者のウイルス量や感染力、隔離期間を判断するために使用すべきではない」と説明していました。重要なのは今後についてですが、米CDCは2021年12月31日以降、PCR検査の「緊急使用許可申請」を取り下げて、マルチプレックスアッセイを含む新たな検査法に移行するとしています。

 

PCR検査が「緊急使用許可申請」による暫定的な検査法であったことを、ここで改めて認識することができます。

 

 

なお、テドロス事務局長の誤った発言が物議を醸し、世界中の国々の指導者や専門家を混乱させてきた世界保健機関(WHO)ではありましたが、中国に対する認識を含めて少しずつ修正されつつあります。

 

今年1月20日にはすでに、新型コロナウイルスの診断についてはPCR検査と並行して患者の既往歴や疫学的な危険因子も考慮すべきであると伝えていました。

そして、「ほとんどのPCR検査は診断の補助である」とするガイドラインを発表しています。

 

 

わが国では未だにPCR検査を絶対視している方々が大多数のようですが、それは政府も主要メディも、一貫して重要な情報を報道しないのですから、無理もありません。

 

しかし、私自身が主治医として直接的な責任を負ってはいない、そのような人々を一人一人説得して回ることは現実的ではないと考えております。

 

 

明日9月3日(金)は、

「新型コロナ感染症の罹患者に対するワクチン接種について」を掲載予定です。