新型コロナ感染症と免疫栄養療法(その3)

 

<亜鉛による免疫栄養療法の実際>

 

亜鉛は鉄に次いで多く体内に存在するミネラルで、体内の様々な酵素を正常に働かせるために必要な栄養素です。しかし、加齢による吸収率の低下や、リン酸塩などの食品添加物による吸収率の低下、多剤内服やアルコールの過剰摂取により消費される等といった理由から亜鉛は欠乏しやすい栄養素です。亜鉛は欠乏すると免疫力の低下、味覚障害、嗅覚障害、多彩な皮膚疾患、食欲不振など様々な症状が現れるようになります。


亜鉛は味覚障害を改善し、傷口(皮膚)や消化管粘膜の治癒を促進する他、
肝硬変、糖尿病(インスリンの合成・分泌を促進)、腎性貧血(ヘモグロビン合成促進)など多数の病気を改善します。それは、亜鉛の持つ抗酸化作用や免疫力向上作用など命の維持に深く関わっています。

 


それでは、亜鉛欠乏状態はどのようにして評価するのでしょうか?

 

亜鉛欠乏状態のスクリーニング検査法

 

採血をして血清の亜鉛とALP濃度(亜鉛酵素)の濃度を測定します。

 

血清亜鉛の血清濃度は日内変動があります。午前中は高く、午後には約20%低下すると言われています。また、食後にも低下するため、より厳密に血清亜鉛値を測定する必要がある際には、早朝空腹時に採血をする必要があります。 

 

 

亜鉛欠乏症の診断のためには、血清の亜鉛と共にアルカリフォスファターゼ(ALP)の濃度の低下を確認する必要があります。

 

・60µg/dL未満:亜鉛欠乏症

・60 ~ 80µg/dL未満:潜在性亜鉛欠乏

・80µg/dL以上:亜鉛充足

 

亜鉛欠乏症もしくは潜在性亜鉛欠乏と評価された場合には、どのような対応が必要ですか?

 

血清亜鉛が欠乏する原因となる疾患があれば、原因疾患の治療を優先的に行ないます。

 

 

 

亜鉛欠乏の治療指針

亜鉛欠乏の程度にしたがって食事による亜鉛補給か経口亜鉛製剤の併用を検討します。

 

まず、潜在性亜鉛欠乏の場合は、食事療法から開始します。

 

・亜鉛を多く含む食品は、牡蠣、肉類、種子類(ごま・ナッツ・ココア)、卵、小魚、甲殻類などです。
 

食事療法で改善しない場合や、亜鉛欠乏症の症状が現れている場合は、食事療法に加えて経口亜鉛製剤(プロマック®、ノベルジン®)の併用を開始します。

 

なお、慢性肝疾患、糖尿病、慢性炎症性腸疾患、腎不全では、しばしば血清亜鉛値が低値を示します。血清亜鉛値が低い場合、亜鉛投与により基礎疾患の所見・症状が改善することがります。したがって、これら疾患では、たとえ亜鉛欠乏症状が認められなくても、亜鉛補充が考慮されます。

 

当クリニックにおいては、亜鉛の補充は新型コロナ感染症予防するための基本的な戦略の一つに位置付けています。なぜならば、亜鉛などの必須ミネラルが不足した状態では、ビタミン類の効果も十分に発揮できず、漢方薬の効き具合でさえ低下してしまうことを経験してきたからです。

 

次回は、明日(9月8日)、免疫栄養療法(その4)では、

<亜鉛による免疫栄養療法における注意点>を取り上げます。亜鉛による感染症予防のための医学管理の実際について紹介します。