COVID-19後遺症診療<ロングCOVID>外来開設の必要性について

 


新型コロナ感染症対策に関する菅首相の最近の発言(詳細は省略)に対して、当クリニック外来受診者の多くの皆様から懸念の声があがってきました。

 

それは、ご自分自身の健康問題というよりも、むしろ日本社会全体の健康課題についてです。

 

なぜならば、当クリニックの継続受診者の皆様は、自身については、すでに、総合的な健康管理を実践され、かつ、予防に努めていらっしゃるからです。

 

それでは、日本社会全体の健康課題とは何かといいますと、

 

1)新型コロナワクチン接種による長期的なリスクへの懸念、および

 

2)COVID-19後遺症に悩む友人・知人からの相談、


などです。

 

実際に、COVID-19が身体面および精神面に長期的な問題を引き起こすことを示す科学的・実証的証拠が相次いで報告されています。最近COVID-19罹患による長期的な後遺症は「ロングCOVID」と呼ばれるようになりました。これが今後の医療システムにおいて次第に大きな問題となりつつあります。


これに対して、今後の医療供給側の最大の問題点としては、真の意味でのCOVID-19診療に関する臨床専門医が存在しないということではないかと言うことです。残念ながら1)新型コロナワクチン接種による長期的なリスクへの懸念、および2)COVID-19後遺症に関しては皆無であるといっても過言ではないのではないでしょうか。

 

それでは、どのような臨床医が対応することが望まれるのでしょうか。

 

それは、従来の細分化された領域の専門医ではなさそうです。

 

身体的後遺症や精神的後遺症について統合的に対応可能な臨床医であることが望まれます。

 

身体的側面に関しては、複数の基礎疾患や併存疾患に対応可能な一般内科・総合内科の医師をはじめ臨床免疫学に造詣が深いアレルギー科やリウマチ膠原病科の医師、精神的側面に関しては、精神科や心療内科の医師が適任ということがいえるような気がします。

 

また、従来の現代西洋医学的アプローチではカバーしきれない諸問題があるため、東洋医学(漢方・鍼灸)などに詳しい医師も活躍することができるのではないかと考えております。

 

しかし、現実の問題点としては、これらの複数の臨床領域ごとの専門医を受診していただくことは、実際上、困難であるということです。継続可能で、無駄や重複が少ない効率的な医療を受けるには、統合的診療の経験と実績がある一人もしくは少数の主治医による全人的に対応することが望まれます。

 

こうした統合的診療が効力を発揮することは、当クリニックの「線維筋痛症」外来や「脱毛症・抜毛症」外来での臨床経験から多くのヒントを得ることができます。

 

以上のような考えを深めていくにつれ、杉並国際クリニックは、今後、COVID-19後遺症診療<ロングCOVID>外来を準備していく必要があるのではないかと想いに至った次第です。

 

ただし、具体的なプランは現時点では策定できていないことは、予めお断りいたしておきます。

 

 

 

それでは、ここで、当クリニックが注目している最近の臨床報告について、ご紹介いたします。

 

チューリッヒ大学(スイス)のMilo Puhan氏らによる「ロングCOVID」に関する調査研究結果が、「PLOS ONE」に7月12日掲載されました。

 

 

今回のPuhan氏らの調査・研究概要は以下の通りです。

 

対象:

COVID-19の罹患者/スイスのチューリッヒで2020年2月27日から8月5日の間にPCR検査で新型コロナウイルス陽性が判明した18歳以上の成人431人(平均年齢47歳、女性50%)。

 

方法:

感染から6〜8カ月が経過した時点での、患者の回復状態や、身体的後遺症(倦怠感、息切れ)および精神的後遺症(抑うつ)の有無について調べた。対象者は、対象者は研究登録後に、年齢や性別などの人口統計学的属性、併存疾患や新型コロナウイルス感染にまつわる詳細、現在の健康状態などに関するオンライン調査に回答した。

 

 

結果:

① 対象者は、研究登録時においてCOVID-19の診断から中央値で7.2カ月が経過していた。

 

② 対象者の89%(385人)はCOVID-19の診断時に症状があった。 

 

③  19%(81人)は診断時に入院していた。

 

④ 診断から6〜8カ月時点で、26%(111人)が「完全に回復していない」と回答した。

 

⑤ 回復が完全ではないことを報告した人の割合は、女性の方が男性より、また、診断時に入院した患者の方が入院しなかった患者よりも高かった。

 

⑥ 感染当初から症状のあった385人を対象にした多変量解析では、重症〜非常に重症な急性期の症状と併存疾患の存在が、完全ではない回復と関連していた。

 

⑦ 後遺症としては、対象者の55%(233人)に倦怠感、25%(96人)に息切れ、26%(111人)に抑うつの症状が認められた。

 

⑧ 40%(170人)の患者が、長引くCOVID-19の症状を理由に、一般医の診察を1回以上受けたと回答した。

 

⑨ 診断時に入院した患者の10%(8/81人)は再入院していた。
⑩ 多変量解析では、回復が完全でないこと、倦怠感や息切れ、抑うつ症状と、医療機関の受診との間に関連が認められた。

 

 

結語:

Puhan氏は、「この研究結果は、COVID-19の後遺症に苦しめられている患者のニーズに合わせて、医療リソースの配分を計画し、サービスを提供する必要があることを明確に示すものだ」と主張している。

 

(HealthDay News 2021年7月16日)

 

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