新型コロナワクチンによるアナフィラキシーに対する指針公開(No.6)

 

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コロナワクチン接種の実施のために、日本アレルギー学会が作成


<アナフィラキシーの新しい診断基準と具体的対処法>
 

アレルギー反応が現れた例への対応については、注射部位以外の皮膚・粘膜症状(蕁麻疹、皮膚の発赤・紅潮、口唇・舌・口蓋垂の腫脹や刺激感、眼の痒み・眼瞼腫脹、くしゃみ・鼻汁・鼻の痒み・鼻閉などの鼻炎症状、アレルギー性鼻炎患者は明らかな症状の増強)が出現した場合には「ヒスタミン H1 受容体拮抗薬を内服させて症状が改善するまで観察する」ことを求めています。

 

症状が改善しない場合には最寄りの医療機関受診を指示し、症状が増強してアナフィラキシーが疑われる場合は診断を受け、適切に対応するよう明記しています。

 

一方、ワクチン接種後30分以内あるいはアレルギー反応の観察中に、

 

① アレルギーを疑わせる皮膚・粘膜症状

 

② 気道・呼吸器症状(喉頭閉塞感、呼吸困難、喘鳴、強い咳嗽、低酸素血症)

 

③ 強い消化器症状(腹部疝痛、嘔吐、下痢)

 

④ 循環器症状(血圧低下、意識障害)

 

以上のうち2つ以上の症状が発現した場合にアナフィラキシーの国際基準(定義)『ブライトン分類』に基づくアナフィラキシーと診断するものとしました。

 

 さらに診断後の具体的な対応法も示しています。

 

① 発症時は急に座ったり立ち上がったりする動作を禁止する

 

② 原則として仰臥位で下肢を挙上させるが、嘔吐や呼吸促(窮)拍の場合には、本人が楽な姿勢にする

 

③ アナフィラキシーの第一選択治療はアドレナリン(商品名ボスミン)の筋肉注射であり、「アナフィラキシーが疑われた」時点で可能な限り速やかに大腿部中央の前外側等にボスミンまたはエピペンを筋肉に注射する(誤って血管内投与はしないよう気を付ける)

 

などを行うよう求めました。

 

同時に、酸素吸入と生理食塩水の急速点滴投与、呼吸困難が強い場合は短時間作用性β2刺激薬の吸入も実施し、初期対応で症状が安定しても、二相性反応の発生に備えて入院することを推奨しています。

 

私見:

アナフィラキシー反応を来した接種者が全員救命できたとしても、決して油断してはいけません。今後も引き続き警戒すべきリスクであることには変わりありません。現時点においては、アナフィラキシーに対して高度な警戒感が保持されている模様ですが、今後も安全性の確保が維持されるという保証はどこにもありません。
現時点での私の答えは、「新型コロナワクチンの接種者は、即日入院可能な環境や条件を準備しておくべき」ということです。その理由は、アナフィラキシーの二相性反応の発生を完全に予測できる医師は存在しないと考えるからです。アレルギー学会の指針では、そこまでの提言はしていませんが、その推奨を突き詰めていくならば、本質的には、私の答えに接近するものであると考えることができると思います。