新型コロナワクチンによるアナフィラキシーに対する指針公開(No.5)

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コロナワクチン接種の実施のために、日本アレルギー学会が作成

 

<抗アレルギー薬の予防的投与は避けるべき!?>
 

ワクチン接種を行う場合に準備が必要な医薬品や医療備品もリストとして記載しています。

 

① 血圧計、静脈路確保用品、輸液セット

 

② アドレナリン注射薬0.1%(2本以上)

 

③ 生理食塩水20mL(5本以上)/500mL(2本以上)

 

④ ヒスタミンH1受容体拮抗薬(5錠以上)

 

⑤ 副腎皮質ステロイド薬注射薬(2本以上)

を挙げました。

 

これらに加え、ハイリスク症例に接種する際には標準的な救急カートの他に、

 

① パルスオキシメーター

 

② 酸素ボンベ、経鼻カニューレ、使い捨てフェイスマスク

 

③ 挿管セット

 

④ ヒスタミンH1受容体拮抗薬注射薬(2本以上)

 

⑤ 吸入短時間作用性β2刺激薬とスペーサー(2セット以上)

 

⑥ グルカゴン(β遮断薬を投与中で、アドレナリンが無効の場合に使用)
を備えることが望ましいとしました。

 

 

このうち、代表的な抗アレルギー薬であるヒスタミン H1 受容体拮抗薬の使用の注意点にも触れています。

 

それはヒスタミン H1 受容体拮抗薬の予防的な投与は「かえってアナフィラキシーの初期症状を不明瞭にしてしまう危険性があるため好ましくない」というものです。ただし、「他の疾患に対して投与中のヒスタミン H1 受容体拮抗薬を中止する必要はない」としています。

 

コントロール不良の喘息患者がアナフィラキシーを来した場合には重症化するリスクがあるとして「それに対応できる医療機関での接種が望ましい」と付記しました。
 

私見:

『ヒスタミン H1 受容体拮抗薬を治療薬として継続することは推奨する一方で、アナフィラキシーの予防として使用することは好ましくない』、とする指針は、かえって混乱を招くのではないかと懸念しております。

 

まずアナフィラキシーの初期症状を不明瞭にしてしまう危険性とアナフィラキシー発症を予防するメリットとの比較衡量を検討することが大切ではないかと思います。危険性を減らし、有効性を高めるための手立てがあるのであれば、「ヒスタミン H1 受容体拮抗薬を予防的に投与した上で、十分な経過観察を怠らないようにする」というのが正解ではないかと思います。そして、その場合は、どのように経過観察をしていくべきかを議論すべきではないかと考えます。

 

このような方向性にならないのは、新型コロナウイルスのワクチン接種の安全性を高めるためには、実施医療機関においての労力負担が過大になるからに他なりません。

実際にはそれは難しいので推奨できないという背景があるのであるならば、そもそも安全なワクチンの接種自体が困難であるという事実を秘匿しないことが医療従事者として、あるいは専門の学会として誠実な姿勢ではないかと思われます。