新型コロナワクチンによるアナフィラキシーに対する指針公開(No.4)

 

前回はこちら


コロナワクチン接種の実施のために、日本アレルギー学会が作成

 

<高リスク者をどのように鑑別し、どのように対処すべきか?>
 

指針では、ワクチン接種によりまれに発生し得るアナフィラキシーのリスクを極力減らすための対策を提言しています。

 

具体的には、アレルギー歴や現在の治療内容・重症度などに関する問診を行った上で、接種を避けるべき「接種不適当者」と、慎重な観察や対応を要する「接種要注意者」に該当するかを判断するよう求めました。
 

 

コミナティの接種不適当者としては、

 

② 明らかな発熱を呈している

 

②重篤な急性疾患にかかっていることが明らか

 

③ 同ワクチンの成分に対し重度の過敏症の既往歴がある

 

④ ①~③に挙げた以外に予防接種を行うことが不適当な状態にある
等を挙げ、③以外への対応は「一時的な接種延期でよい」としました。

 

1回目のワクチン接種で重度の過敏症(全身性の皮膚・粘膜症状、喘鳴、呼吸困難、頻脈、血圧低下など)を呈した例やワクチンの成分であるPEGまたPEGと交差反応性があるポリソルベートを含む薬剤に対して重度の過敏症を来した既往がある例に対しては「コミナティの接種を避けるべき」と明記しました。
 

一方、抗凝固療法を受けている人、血小板減少症または凝固障害を有する人、過去に免疫不全の診断がなされている人、心臓血管系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患、発育障害といった基礎疾患がある人などについては、接種要注意者としました。
また、

 

①予防接種の接種後2日以内に発熱が見られた、および全身性発疹などのアレルギーを疑う症状を呈したことがある

 

②コミナティの成分に対してアレルギーを呈する恐れがある-人も要注意者とされた。

 

① と②に該当する人は、アナフィラキシーなど重度の過敏症に対応できる体制のもとで接種し、接種後の観察時間も30分以上が望ましいとしました。
 

接種後の待機時間については、過去にワクチンや他の医薬品による即時型アレルギー反応/アナフィラキシー歴がある場合や、コントロール不良と思われる気管支喘息患者に関しては「少なくとも30分程度の観察が望ましい」とし、それ以外の人は「少なくとも15分間」としました。

 

過去にワクチンあるいは他の医薬品による即時型アレルギー反応/アナフィラキシー歴があり、かつβ遮断薬を投与中の人には医療機関での接種を推奨しています。
 

 

私見:

これだけの注意を払ってはじめて、より安全なワクチン接種を実施することができるということになります。たとえば、厳密な問診だけでも、どれだけの時間と労力を要することでしょうか。

 

アナフィラキシー反応は、2相性の反応を示すことがあり、第2相の出現に配慮するならば、接種後30分では短すぎます。最低でも1時間は確保しておかなければなりません。

 

そして日本人では新型コロナワクチン接種後にアナフィラキシーが起こる頻度が高いのか、については、実のところまだ結論は出ていません。結論を導くためには、少なくとも以下の仮説を検証すべきでしょう。

 

・アナフィラキシーとして報告があがっている件数のうち、半分程度は真のアナフィラキシーではない可能性がある

 

・医療従事者ではアナフィラキシーの頻度が高い可能性がある

 

繰り返しになりますが、『過去にアレルギーを指摘されている人や、過去にアナフィラキシーを起こしたことがある人』は特にリスクが高いことが知られており、接種に当たってはかかりつけ医などに相談することが推奨されます。

 

しかし、かかりつけ医はどのように相談に応じたらよいのでしょうか。かかりつけ医のすべてがアレルギー専門医や救急蘇生の専門医ではありません。とりわけ自らが接種に応じる場合は、それなりの条件や整備された環境が必要となりますから、それが十二分に確保されていない限り、歯切れの良いアドバイスは期待できないのが実情ではないでしょうか。

 

たしかにアナフィラキシーと報告された方々が全員回復しているということは大切なことで注目されています。したがって、アナフィラキシーは適切に対応することで対処可能な病態であると考えられています。しかし、この好ましい結果がいつまで持続するのかについては、懸念が残ります。

 

その理由は、初期にワクチンを接種した医療環境と同等以上の条件を確保しつつ、ワクチン接種の機会を拡大していくことは、それほど容易ではないと考えるからです。