『抜毛症の患者さん』を支援する、第4回:個別化医療のための医学的配慮と質疑応答

 

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杉並国際クリニック版 抜毛症診療マニュアル
(令和3年3月9日初版)

 

第4回:個別化医療のための医学的配慮と質疑応答

 

 

脱毛パターン

イ)一部分の毛髪が完全に喪失

 

ロ)睫毛および/または眉毛のみが喪失

 

ハ)毛が薄くなるだけ 

 

 

 

脱毛行動のタイプ:脱毛行為に伴う様々な儀式的行動

 

引き抜く対象とする特定の種類の毛髪を入念に探す

 

毛を必ず特定の方法で引き抜こうとする

 

毛を抜いた後に,指に挟んで転がしたり,毛の房を歯に挟んで引っ張ったり,毛を噛んだりすることがある。

 

毛を飲み込む。

 

皮膚をむしる,爪を噛むなど,他の身体集中反復行動も認められる。

 

他者またはペットの毛を引き抜いたり,線維性の物体(例,衣服,毛布)の線維を引き抜いたりする。

 

 

 

背景心理と随伴行動のタイプ

背景心理:自分の外見に当惑したり,恥ずかしく感じたりする。

 

随伴行動:脱毛を隠そうとする。

脱毛部位を覆う(例,かつらやスカーフを着用する)タイプ

広範にわたる部位から毛を引き抜くタイプ

 

他者から脱毛を見られる可能性のある状況を避けるタイプ

 

典型的には,家族以外の他者の前で毛を引き抜くことはない。

 

 

 

病態のタイプ

 

Q1. 抜毛症をどうして繰り返してしまうのでしょうか?

 

DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)では、抜毛症と皮膚むしり症も強迫症の関連障害としてまとめられました。抜毛症は、繰り返す抜毛と、それを減らそう・やめようと試みるものです。また、皮膚むしり症は、皮膚の損傷につながる皮膚むしり行為の繰り返しと、それを減らそう・やめようと試みるものです。

 

 

Q2.強迫症とはどのような障害なのでしょうか?

 

自分の意志に反して、ある考えが繰り返し浮かんできたり、ある行為をやめることができなかったりする障害が、強迫症(強迫性障害)です。
また、そのように浮かんでくる考えを強迫観念、行動を強迫行為といいます。そして、強迫観念とは、何度も繰り返して生じる思考や衝動やイメージで、自分にとって望ましくないものとして体験されます。
一方、強迫行為とは、強迫観念に従って(もしくは守らなければならない決まりとして)繰り返される行動または心の中の行為です。

 

 

Q3.強迫症にはどのような症状がみられるのでしょうか?

 

強迫症に共通してみられる症状に、洗浄、対称、禁断的思考、加害があります。
洗浄は、汚染に対する強迫観念と洗浄に関する強迫行為です。女性に多く見られる傾向があります。

対称は、対称性に対する強迫観念と、繰り返し、配列、数かぞえなどの強迫行為です。男性に多く見られる傾向があります。

禁断的思考は、攻撃や性的、宗教的な強迫観念と、それに関連した強迫行為です。男性に多く見られる傾向があります。

加害は、自分もしくは他者を傷つけることへの恐れと、それに関連した確認行為です。

男性は女性よりも発症年齢が若く、チックの併発が多いと言われます。

 

 

Q4.抜毛行為にはどのような心理が働くのでしょうか?

 

抜毛症では、心理というよりも髪の毛を抜く「直前」と抜いた「後」の感覚の変化に注目されることがあります。

 

当クリニックでは、独自に以下の3つのタイプに分類しています。

 

タイプA: 抜毛症の患者様の多くの方のタイプ
髪を抜くというその瞬間に際して「緊張感の高まり」を経験し、実際に髪の毛を抜いた瞬間に「満足感と開放感」を得ることが特徴です。

 

タイプB:皮膚の違和感やかゆみなどを感じて抜いてしまうタイプ
抜毛症の方の中には、かゆみやうまく表現することができないような皮膚の違和感を感じてしまい、抜毛を起こしてしまうことが特徴です。このような違和感が誘発因子となり、更に抜毛症の症状が継続・悪化してしまうことがあります。

 

タイプC: 無意識のうちに、髪の毛を抜いてしまうタイプ
上記のような感覚とは別に、無意識の行動であるがゆえに、繰り返しに歯止めが効かずに悩まれている方もいらっしゃいます。