『抜毛症の患者さん』を支援する、杉並国際クリニック版 抜毛症診療マニュアル (令和3年3月9日初版)

 

第1回:抜毛症とは何か

 

はじめに:

抜毛症と脱毛症とを混同している方のために

 

脱毛症とは異なり、抜毛症は、自己の毛髪を強迫的に抜去する疾患です。
抜毛症の患者さんは、頭髪の他、眉毛、睫毛、腋毛、恥毛などを抜去することがあります。学童期後半~思春期前半にみられ、女性に多い疾患です。

 

一言で言えば、行動の異常ですが、抜毛の他の異常行動としては、毛かみ、爪かみ、夜尿、チックを合併することがあります。

身体玩弄癖・自傷の延長にあると考えられています。

 

 

疾患の特徴と概要 

抜毛症は、自身の毛髪を抜くこと繰り返し、それによって毛髪が喪失することにより特徴づけられます。

 

抜毛症の患者さんは,美容以外の理由で毛髪を繰り返し引っ張ったり,引き抜いたりします。最も多いのは頭皮,眉,および/または眼瞼からの抜毛ですが,あらゆる部位の体毛が対象となりえます。

 

また抜毛の部位は時間の経過とともに変化することがあります。
この行動を若干自動的に(すなわち,十分に意識することなく)行う方もいれば,この行動をより意識している方もいます。

 

抜毛は強迫観念または外見に関する悩みに誘発されるものではないとされてきましたが,緊張感または不安感が先行して,それが抜毛により軽減することがあり,しばしばその後に満足感を覚えることがあります。

 

典型例では,抜毛は思春期の直前または直後に始まります。本疾患の時点有病率は約1~2%で、約90%は女性です。

 

 

症状の経過

無治療の場合は、通常、抜毛は慢性に経過し、症状は一進一退を繰り返します。これは背景となることが多い強迫症と同様の経過であり、治療しなければ慢性的な経過を取り、増悪と軽快を繰り返します。