Covid-19問題で見落とされがちな急性咽頭炎問題点 ③


急性咽頭炎の診断・治療および事後管理に関する問題点と当クリニックの方針
(杉並国際クリニック令和3年初版)その3(全4回)

 

前回はこちら

 


細菌性咽頭炎は、咽頭炎全体の約10%であり、そのうちの10~15%がA群溶連菌(GAS)によるものです。

 

従って咽頭炎全体のうちGASが占める割合は、高々1.0~1.5%に過ぎないことに注意すべきでしょう。

しかし、急性咽頭炎の原因がA群溶連菌(GAS)によるものと推定するための点数化された症状リストであるスコア・システムの存在が知られています。

 

それを以下に示しますが、文中の赤い文字の提案に対して緑の文字が私の考え方です。

 

急性咽頭炎の鑑別推測スコアリング(Centor Score+McIsaac 修正)
<Centor Score>

 

1. 体温38度以上・・・(+1)

 

2. 咳嗽がない・・・(+1)

 

3. 前頸部リンパ節腫脹+圧痛・・・(+1)

 

4. 扁桃の腫脹•浸出物(白苔)・・・(+1)

 

小計    点 ≧2点 

⇒ 迅速抗原検査を施行するべき?感受性検査を行うべき!
 

 

検査陰性であれば抗菌薬不要。

 

コメント

私の考え方としては、迅速抗原検査を実施するだけでは、急性咽頭炎の原因病原体がA群溶連菌(GAS)であるか否かの見当をつけることしかできないからです。

 

しかも、A群溶連菌(GAS)が起炎菌である確率が高いとしても、ただちに確実に有効な抗菌剤を選択することができるとは限らないからです。

 

なぜなら、A群溶連菌(GAS)は一種類ではないからです。

つまり、感受性検査を行わない限り、有効な抗菌剤を処方することはできないということになります。さらにいえば、もし、無効な抗菌剤を処方すれば、耐性菌をもたらすリスクは高くなることも問題であると考えます。

 

 

<McIsaac 修正基準項目>

 

5. 年齢15歳未満(+1)

 

6. 年齢45歳以上(−1)

 

 小計  点、合計   点

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

合計0~1点(2~6%) 

⇒ 検査および抗菌薬不要(ただし、漢方薬は有用!

 

合計2~3点(10~28%) 

⇒ 溶連菌迅速検査・培養検査陽性例のみ抗菌薬治療?

抗菌薬治療(ジスロマック、1回500㎎、1日1回、3日間)

 


合計4点以上(38~63%以上)

⇒ 抗菌薬治療(バイシリンGなどペニシリン系、1回40万単位/g、1日4回、10日間)?
             

培養検査・抗菌剤感受性検査の後、

抗菌薬治療(ジスロマック、1回500㎎、1日1回、3日間)

 

注意:

急性咽頭炎を引き起こす伝染性単核症(註)の場合、上記症状スコアで4点以上と評価してしまう可能性があります。その場合、抗菌薬としてペニシリン系・セフェム系をしてしまうと過敏反応を来してしまことがあるのです。したがって、杉並国際クリニックでは、培養検査・抗菌剤感受性検査なしにこれらの抗菌剤を処方する一般的な方法に対して異議を唱える立場です。

 

(註)伝染性単核球症 infectious mononucleosis

● EB ウイルスの初感染による.春期に好発.

● 高熱,咽頭痛,頸部リンパ節腫脹が特徴的.風疹様,蕁麻疹様,多形紅斑など多彩な皮疹.

● 特別な治療法はなく,安静と対症療法が中心.ペニシリン系・セフェム系抗菌薬は過敏反応をきたすことがあり、アスピリンはReye 症候群の危険性があるため禁忌.また,まれに本症から慢性活動性 EB ウイルス感染症へ移行することがあります.

 

なお、伝染性単核球症のみならず、インフルエンザや新型コロナ感染症などウイルス性感染症では特別な治療法はなく,安静と対症療法が中心とされるが,対症療法について具体的に示されないために,アスピリンその他の解熱剤が誤って用いられることになることが懸念されます.漢方薬を適切に用いることやグリチルリチン・アミノ酸(グリシン・L-システイン)、ブドウ糖(もしくは生理的食塩水)・ビタミンB群(複数種類)等のブレンド・カクテル(50ml)程度を緩徐に静脈注射することで回復を助けることができることが多いことを多数経験しています.杉並国際クリニックは、およそ20年前から、こうしたカクテルを1号から3号まで3種類を準備しています。これらのカクテルは、細菌感染のみでなく、インフルエンザや新型コロナ感染症などのウイルス性感染症に対しても有効であることを確認しつつあります。