フランス語旅行、パリ協定離脱後の米国CO₂排出削減:昨年1年間で(▲1.7%)減少達成

 

パリ協定に加盟すべき否か、地球温暖化を支持するか否かということは地球の平和と繁栄の維持という目的達成の上で大切な議論であることについては、たしかに争いはないでしょう。

しかし、より本質的な課題は、パリ協定に加盟して、CO₂排出削減による地球温暖化抑止を高らかに宣言している国々の具体的な取り組みの姿勢とその成果であると考えます。

すでに実績を挙げている国の負担がさらに大きくなるばかりであれば、不公平で理不尽である、という考え方も成り立つのではないかと思います。

 

二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出量を2060年までに実質ゼロにすると大見得の宣言をした習近平氏の向こうを張って、何と菅義偉首相は初の所信表明演説で2050年までに実質ゼロにすると表明しました。

 

排出量ゼロの実現には大規模な投資やコストの低減化も併せて必要で、高い壁が立ちはだかる上に、実情としては、CO2排出量ゼロの電源である原子力発電所の増設に向けての先手を打ったに過ぎないように思われてなりません。

 

過大なマニフェストを掲げる前に、現状での実績を反省することから始めるべきではないでしょうか。

パリ協定に加盟していなくとも、また地球温暖化を否定していたとしても、実質的にCO2排出量の削減に成功している国の指導者は正当に評価され、敬意をもって扱われるべきだというのが私の考え方なのですが、皆さまは、どのようにお考えでしょうか。

 

そういえば気候変動への国際的対処について話し合う気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)が2019年12月2日からスペインの首都マドリードで開催されて、ようやく1年を経過したところです。そこで、ここでは、COP25の概要と残された課題をまとめてみました。

なお、参考資料として引用した記事はフランスのル・モンド紙です。

 

 

1)パリ協定6条

COP21(2015年)で採択されたパリ協定では、2020年以降の各国の取り組みに関する基本ルールが定められていますが、それを実施するための詳細ルールが定められていませんでした。そのため、昨年のCOP24では100頁超にわたる実施指針が採択され、パリ協定は予定通り2020年からスタートする準備が整っています。

 

しかし、COP24では、「パリ協定6条」のルールだけは合意できず、先送りとなっていました。6条では、複数の国が協力して両国の合計の排出量を減らしていく制度が想定されています。

国家間の排出量取引制度などの市場メカニズムもここに含まれます。

 

しかし、これにはデメリットもあります。多くの途上国は2030年目標として、排出量を絶対量で掲げておらず、「何も対策をとらなかった時と比べて〇%」や「先進国の支援があればさらに〇%」といった相対的な目標のみを立てています。そうなると、排出削減努力が両国でダブルカウントされ、帳簿上では減っているのに実際の地球全体の排出量は増えるといったことになりかねません。
 

COP25では、6条を積極的に活用して自国の2030年排出削減目標をより達成しやすくしようと試みたブラジルやオーストラリア、中国などと、利用を最小限度に抑えるべきとした欧州や小島嶼諸国等との間で歩み寄りが見られず、来年に持ち越されました。

 

日本はすでに「二国間クレジット制度」(Joint Crediting Mechanism : JCM)という独自の制度を2013年に開始し、モンゴルやバングラデシュなど17か国(2019年6月現在)と署名を交わし、相手国の削減分を日本側にも取り込めることを目指していましたが、この実現も翌年に持ち越しされました。

 

 

2)2030年目標の見直し

パリ協定では、長期的には2℃より十分低い気温上昇幅を目指し、さらに1.5℃に向けて努力することとなっています。今年に入り、2030年目標をより厳しいものに改定すべきだという声が高まっています。

 

COP21決定では、2020年までに、2030年目標を見直すことが求められているため、COP25では、来年に向けてできるだけ多くの国が2030年目標を見直すよう呼びかける文案が議論されました。

ここでも小島嶼国などは、すべての国に対して目標の見直しを強く求める表現を希望しましたが、今から2030年目標を国内で協議する予定がない国も多く、「チリ・マドリード行動の時」と題された最終合意文書では、shall(しなければならない)といった強い表現は用いられず、COP21決定に言及し、目標見直しを推奨するに留まる表現となりました。

 

 

3)ロス&ダメージに関するワルシャワ国際メカニズム(WIM)

これは、COP19にて気候変動枠組条約の下に設置された組織で、今回この活動のレビューが実施されました。現在すでに海面上昇等の影響で被害(ロス&ダメージ)が出ている小島嶼諸国は、このメカニズムの下で、被害を補填する資金を求めています。

 

また、パリ協定の8条でも、ロス&ダメージ対応としてWIMが言及されていることから、WIMをパリ協定の下に位置づけようとする米国と、条約の下に設立された経緯を重視する途上国との間で、ガバナンスが問題となりました。ロス&ダメージの議論は、原因者(加害者)としての温室効果ガス排出大国(先進国)と、被害を受けている途上国との間の南北問題の性格を有しています。

 

後述のとおり米国は1年後(当時、すなわち今年)のパリ協定離脱を通告しており、過去の最大の排出国である米国としては、ロス&ダメージに関して批判される立場にあるWIMから抜け出せることは望ましいことになります。逆に、途上国からしてみれば、この議論は米国抜きではできず、あくまで条約の下で議論を続けたいということです。

 

 

 

COP25 交渉外の出来事

 

1)市民の声

スウェーデンの16歳少女グレタ・トゥンベリさんの行動が広まり、世界各地で若い世代がスクールストライキや気候マーチを実施しました。COP25でもグレタさんが登壇し、各国の交渉担当者に対して、対策を前倒しするよう呼びかけました。今後、この声はさらに大きくなっていくことが予想されます。

 

 

2)米国のパリ協定離脱通告

COP25が始まる1か月前に離脱を正式に通告しニュースとなりました。交渉会議と並行して行われた様々なサイドイベントでは、パリ協定に賛同する米国議会の議員たちが米国内でのさまざまな取り組みをアピールしていました。米国の離脱は来年の大統領選次第であり、その結果を見てから国際交渉の妥協点を決めても遅くないという気持ちが多くの交渉担当者にあったのではないかと思われます。

 

つまり、トランプ大統領が落選し、民主党政権に移行すれば、米国がパリ協定に復帰する見通しが立つということでしょう。(しかし、これは単純すぎる安易な見通しです。米国の有権者は、日米の主流メディアの偏向報道に騙され続けるほどナイーブではないものと見込んでいます!必要とされるのは、バイデン氏、習氏や菅氏のような、はったりや美辞麗句ではなく、トランプ大統領のような責任感と愚直な実行力だということを彼らは再認識しつつあるからです。)

 

 

3)日本について

日本国内では、国際交渉の争点よりも、日本が2回NGOから「化石賞」(*1)を受賞したことが話題となりました。いずれも日本の石炭火力発電所に対するスタンスが受賞の理由となっています。まず、国内では、新規の石炭火力発電所を建設する計画が多数あります。従来の石炭火力と比べると発電効率が良いということが強調されていますが、いくら効率が高くても石炭を燃やす限り二酸化炭素が排出されることには変わりなく、炭素回収・貯留(CCS)などと併せて進める必要があります。

 

*1)「化石賞」とは?:
地球温暖化対策に前向きな取り組みを見せない国に対して、NGOがバッドジョークとして与える「不名誉な賞」
なので「しょうも無いでしょう」という賞なのです。1999年のCOP5(ドイツ・ボン)において始められ継続的に実施されています。「化石」とは化石燃料を指すとともに、化石のような古い考え方との揶揄も入っています。

 

 

 

La Chine, les Etats-Unis, l’UE et l’Inde ont produit plus de la moitié des émissions de CO2 depuis 2010

 

中国、米国、EU、インドは2010年以降、CO2排出量の半分以上を排出している

 

 

Par Audrey Garric
オードリー・ガリック

 

 

Publié aujourd’hui à 11h00, mis à jour à 12h31
本日11時00分発行、12時31分更新

 

 

 

Centrale au charbon, à Hejin, dans le centre de la Chine, le 28 novembre 2019. Sam McNeil / AP

 

石炭火力発電所、中国中部・河津、2019年11月28日
サム・マクニール/AP

 

 

Les quatre principaux pollueurs – la Chine, les Etats-Unis, l’Union européenne (comptée avec le Royaume-Uni) et l’Inde – sont responsables de plus de la moitié (55 %) des émissions globales de gaz à effet de serre sur la dernière décennie (2010-2019), indique le Programme des Nations unies pour l’environnement. La Chine, qui représente un peu plus du quart du total mondial, a vu ses rejets carbonés augmenter de 3,1 % en 2019, tirés par un usage accru du charbon. La très rapide croissance, dans les années 2000, des émissions de l’empire du Milieu a toutefois ralenti au cours de la dernière décennie.

 

国連環境計画によると、過去10年間(2010年~2019年)の世界の温室効果ガス排出量の半分以上(55%)を中国、米国、欧州連合(英国を含む)、インドの4大汚染国が占めている。世界全体の4分の1強を占める中国は、石炭利用の増加に牽引され、2019年の炭素排出量が3.1%増加した。しかし、2000年代の中華帝国からの排出量の非常に急速な伸びは、過去10年間で鈍化している。

 

 

L’Inde (7 % du total mondial) a également connu une hausse de ses émissions mais moins rapide qu’auparavant (+ 1,4 %), grâce au développement des énergies renouvelables, à un recours accru à l’hydroélectricité du fait d’une mousson record et en raison d’une croissance économique qui faiblit.

 

インド(世界全体の7%)もまた、再生可能エネルギーの開発、記録的なモンスーンによる水力発電の利用増加、経済成長の鈍化により、排出量は増加しているが、増加率は以前よりも緩やかなペースだ(1.4%増)。

 

 

A l’inverse, les Etats-Unis, deuxième plus gros pollueur avec 13 % des émissions globales, ont enregistré une légère baisse de leurs émissions depuis dix ans, et particulièrement l’an dernier (− 1,7 %), grâce à la transition du charbon vers le gaz et les renouvelables. Il en est de même pour l’Union européenne et le Royaume-Uni, responsables de 8,6 % des émissions mondiales, qui sont parvenus à diminuer leurs rejets de 3 % en 2019.
Ramenées à la population, les émissions territoriales des Etats-Unis, avec 20 tonnes par habitant, sont toutefois trois fois plus élevées que la moyenne mondiale (6,8 tonnes), et deux fois plus que les émissions chinoises (9,7 tonnes) ou européennes (8,6 tonnes). Surtout, lorsque l’on inclut les émissions de CO2 générées par la production des biens et services que nous importons, un Européen pollue un peu plus qu’un Chinois. Contenir le réchauffement à 1,5 °C impliquerait de réduire les émissions à entre 2 et 2,5 tonnes équivalent CO2 par habitant d’ici à 2030.

 

逆に、世界の排出量の13%を占める第2位の汚染国である米国は、石炭からガスや自然エネルギーへの移行により、過去10年間で排出量が若干減少しており、特に昨年(▲1.7%)は減少している。世界の排出量の8.6%を占める欧州連合(EU)と英国も同様で、2019年にはなんとか3%の削減に成功している。しかし、人口の観点から見ると、米国の領土排出量は住民一人当たり20トンで、世界平均(6.8トン)の3倍、中国(9.7トン)や欧州(8.6トン)の2倍となっている。何よりも、輸入した商品やサービスの生産によって発生するCO2を含めると、中国人よりもヨーロッパ人の方が少しだけ汚染している。1.5℃の温暖化を抑制することは、2030年までに一人当たりのCO2換算で2~2.5トンの排出量を削減することを意味する。

 

 

La grande majorité des émissions de gaz à effet de serre proviennent de la combustion des énergies fossiles (charbon, pétrole et gaz) pour la consommation d’énergie (dans les transports, les bâtiments ou l’agriculture), ainsi que de l’industrie et des cimenteries. Le reste est principalement lié à l’élevage et à la gestion des déchets, ainsi qu’aux changements d’utilisation des terres, comme la déforestation ou l’artificialisation de terres agricoles.

Audrey Garric

 

温室効果ガス排出の大部分は、エネルギー消費のための化石燃料(石炭、石油、ガス)の燃焼(輸送、建物、農業)、産業やセメント工場からの排出だ。残りは主に畜産や廃棄物処理、森林伐採や農地の人工化などの土地利用の変化に関するものである。

 

オードリー・ガリック