副鼻腔気管支症候群(SBS)
副鼻腔気管支症候群は「慢性・反復性の好中球性気道炎症を上気道と下気道に合併した病態」と定義されています。長引く「狭義の咳嗽」の鑑別診断として重要であり、特に容易に原因が特定できない湿性咳嗽の場合は、第一に考慮すべき病態です。
これは慢性副鼻腔炎に下気道の炎症性疾患である慢性気管支炎、気管支拡張症あるいは瀰漫性(びまんせい)汎細気管支炎が合併した病態です。したがって、診断にあたり、副鼻腔炎、気管支拡張所見ならびに好中球気道炎症の存在を確認することが重要です。
副鼻腔気管支症候群の診断基準
① 8週間以上続く呼吸困難発作を伴わない湿性咳嗽
② 次のうち1つ以上を認める
1) 後鼻漏、鼻汁、咳払いなどの副鼻腔炎様症状
2) 敷石状所見を含む口腔鼻咽頭における粘液性あるいは粘膿性の分泌液
3) 副鼻腔炎を示唆する画像所見
③ 14・15員環系マクロライド系抗菌薬や喀痰調整薬による治療が有効
① ~③のすべてを満たすことが必要である。
慢性副鼻腔炎の症状として、鼻汁、鼻閉、後鼻漏とこれにより生じる咳払いを認めます。
慢性副鼻腔炎も従来型の慢性副鼻腔炎であり、好中球性炎症を特徴とします。
副鼻腔気管支症候群(SBS)を来す代表的な疾患にびまん性汎細気管支炎(DPB)があります。
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びまん性汎細気管支炎の臨床診断基準(第2次改訂)
診断項目
1) 必須項目
① 慢性の咳・痰、および労作時息切
② 慢性副鼻腔炎の合併ないし既往
③ 胸部X線で両肺野びまん性散布性粒状影
2) 参考項目
① 胸部聴診で断続性ラ音
② 1秒率低下(70%以下)および低酸素血症(80Torr以下)
③ 血清寒冷凝集素高値
臨床診断
1) 診断の判断
確実:必須項目①、②、③に加え、参考項目の2項目以上を満たすもの
ほぼ確実:必須項目①、②、③を満たすもの
可能性あり:必須項目のうち①、②を満たすもの
2) 寒別診断
慢性気管支炎、気管支拡張症、線毛不動症候群、閉塞性細気管支炎、
嚢胞性線維症など
病理組織学的検査は本症の確定診断錠有用である
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DPBの原因の詳細は不明で、環境因子と遺伝因子の関与が考えられています。
日本を中心とした東アジアに好発し、発症に男女差はありません。
中枢気道には慢性の好中球性炎症が惹起され、組織傷害に伴い気管支拡張を来すことで病態が進行していきます。慢性気道感染の起炎菌は、増悪時に抗菌薬投与を繰り返すことで、インフルエンザ桿菌等から最終的には緑膿菌へと交代します。
自覚症状:慢性の咳嗽と喀痰、労作時呼吸困難(進行例:Ⅱ型呼吸不全)
聴診所見:断続性ラ音(coarse cracklesやrhonchi)
画像診断:胸部CT所見では、両側肺に、びまん性散布性小葉中心性の粒状影、気管支壁肥厚像、気管支拡張像(進行例)
また鑑別疾患として重要なのが肺MAC症です。肺MAC症の治療において、クラリスロマイシン(CAM)がキードラッグであるため、これを単独投与した場合には耐性が誘導されることがあり、難治化するリスクがあるために、DPBの第一選択薬としてのCAMの使用は避けます。
その代わりにCAMと交差耐性を示さないエリスロマイシン(EM)、14・15員環マクロライド系抗菌薬⁑の治療効果を確認することでSBSの診断的治療にもとなります。
治療の基本はマクロライド系抗菌薬*の少量長期療法です。まず、エリスロマイシンから投与を常用量の1/2あるいは1/3の投与を開始し、有効性が得られない場合や副作用が出現した場合に、他のマクロライド系抗菌薬(CAM,RXM,AZM)を考慮すべきです。
DPBにおいては、診断後早期に治療を開始することで通常2~3カ月以内に臨床効果が得られます。胸部画像所見及び呼吸機能等の検査所見は6カ月で改善が見られ、以降は長期に安定した状態が継続します。
そのため、治療開始後6カ月の時点で総合的な評価を行い、改善を確認します。
安定した状態が継続していれば2年で治療を終了し、もし再発が認められた場合には、同様の治療を再開します。ただし、広汎な気管支拡張症や呼吸不全を認める重症の病態では。2年を超えて治療を継続します。
マクロライド系抗菌薬*
抗菌作用以外に多彩な抗炎症作用・免疫調整作用を有します。
1) 気道上皮細胞の水分・粘液の過分泌の抑制
2) 気道粘膜における好中球集積の抑制
3) リンパ球及びその他の細胞に対する作用
4) 細菌に対する作用
14・15員環マクロライド系抗菌薬⁑
14員環マクロライド系抗菌薬
片頭痛薬クリアミン®との併用禁忌に注意
エリスロマイシン®(EM):安全性が高い
クラリス®(CAM):肝障害・腎障害その他併用禁忌が多いためなるべく使用回避
ルリッド®(RXM):クラリス®より使いやすい
15員環マクロライド系抗菌薬
ジスロマック®(AZM):唯一の15員環薬
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