第1週:呼吸器・腎臓病、咳嗽の臨床No2

遷延性・慢性咳嗽

 

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呼吸器内科やアレルギー科では、しつこく続く咳を訴える患者さんが来院されます。胸部レントゲン検査や身体所見の異常を伴わず生命の危険は伴わないものの、咳を唯一の症状とする慢性咳嗽を訴える方は近年増加しています。

 

「咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019」によると、咳の持続期間により、急性・遷延性・慢性に分類しています。

 

・急性咳嗽:3週間まで⇒感染症による咳嗽が多い

・遷延性咳嗽:8週まで

 

・慢性咳嗽:8週以上⇒感染症以外の原因による咳嗽が多い

 

 

慢性咳嗽の原因としては、本邦では、咳喘息(過半数)、GERD(胃食道逆流症:増加傾向)ならびに副鼻腔気管支症候群が3大原因疾患です。

 

遷延性・慢性咳嗽の患者が来院した場合、まずは非感染性の主要な原因について鑑別診断を進めることになりますが、百日咳や肺結核・非定型感染症等の慢性経過を呈する呼吸器感染症には留意が必要です。

 

 

 比較的容易に原因特定ができる遷延性・慢性咳嗽

 

まず咳嗽が喀痰を伴う湿性咳嗽であるか、伴わない乾性咳嗽であるかを確認します。

 

湿性咳嗽では、3週間以上咳嗽が続き、下気道からの気道内分泌物が喀痰として核出されているのであれば、下気道における病原微生物の存在を想定し、喀痰培養検査を行います。

喀痰好酸球増多の所見は、狭義の遷延性・慢性咳嗽に分類される咳喘息、アトピー咳嗽、慢性高等アレルギーに特徴的に観察されます。その他、特に患者さんの免疫状態を確認した上で、肺結核の他真菌感染や日和見感染等も視野に入れて鑑別をすすめます。

また、血痰がみられなくとも、喀痰細胞診が必要です。それは閉塞性肺炎を併発するような肺腫瘍、粘液産生性の肺腺癌、気管癌といった悪性疾患も考慮しておく必要があるからです。

 

乾性咳嗽で頻度の高い原因疾患は、咳喘息、アトピー咳嗽/慢性喉頭アレルギー、胃食道逆流症ならびに感染後咳嗽があります。
 

 

まず、診察中に咳嗽が出ている場合には、その咳が気管支拡張薬(β刺激薬)で著効するかどうかを確認します。β刺激薬を処方し、夜間に出現する咳嗽への効果を数日後に確認します。効果があった場合は、咳喘息の可能性が高いため、2年程度の吸入ステロイド薬治療が必要です。精密検査としては、気道過敏性検査や呼気中一酸化窒素濃度測定等があります。
 

診察中に咳嗽が出ていない場合にも咳喘息の可能性を完全には排除してしまわずに、原因が複数あることも留意しながら総合的に原因を評価します。

 

 容易にその原因が特定できない<狭義の>遷延性・慢性咳嗽

狭義の遷延性・慢性咳嗽とは、遷延性・慢性咳嗽のうち、容易にその原因が特定できないものとは、診察所見や胸部エックス線写真で原因が特定できないものを特に指します。

 

そのような場合で湿性咳嗽であれば、副鼻腔炎、気管支拡張所見ならびに好中球性気道炎症の有無を確認する必要があります。喀痰塗抹・培養(一般細菌、抗酸菌)、細胞診や副鼻腔エックス線検査などを行います。