認知症を考える「症例は小説より奇なり」No4(潔の巻)

第4週:神経病・内分泌・代謝病    

 

前回はこちら

 


精神医学と認知科学


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行の影響を受けて政府はオンラインによる遠隔診療を推奨しています。

いわゆるズーム(Zoom)診療ですが、杉並国際クリニックは、この推奨に乗ることは難しいと考えています。

 

互いにマスクを着用しながらの診察ですが、「目は口ほどにものを言う」のは確かですし、患者さんの「声」や「息遣い」を肌で感じることも欠かせないからです。

杉並国際クリニックの診療は五感をフルに活用し、少し気持ちが悪いとお感じになられるかもしれませんが、第六感も不可欠だと思っています。

 

そのうえで、打診をしたり聴診器を当てたり、必要な検査を行ったりなど、直接的に意識的に人間的な交流をすることを通して、一人一人の患者さんの個性を知り関心を持つことが可能になります。

 

こうした親密性は、相手理解に関する潜在的意識の感度を高めます。それが病気の早期発見や早期治療に不可欠な前提であるばかりではなく、どのようにアプローチしていくべきかを選択していくうえでも非常に有用です。

 

高円寺で30年以上の臨床経験を経て私がしっかりと学んだことは、なるべく早めに患者さんの見立てをするということの大切さです。

いくら最新の知識を仕入れて、いつでも活用できるように毎日訓練し、善意で接していても、それが通じにくい方、疑ってかかる方が、値踏みする方、ご自分の大切な命と健康のための最低限の精神的・時間的・経済的投資すらためらってしまう方が、どうしても一定程度はいらっしゃいます。

 

そういうコンビニ受診者の方にも、これまでは譲歩したり、妥協したりして時期を待ちました。しかし、私が待つことができる時間は次第に限られてきました。

 

そこで、今後は、そうした方々のもつ価値観にまでは介入せず、早めに見極めを行い、なるべく早い段階で、その方の価値観に適合した、より相応しい医療機関なり、医師なりに変更していただくこと、つまり、「患者離れの良い医師」となることにしたのです。

むしろ、そのように心がけることこそが、本当の親切であると考えるようになりました。そして、真の意味で杉並国際クリニックの存在意義と役割をご理解いただける一人でも多くの皆様のお役に立てることこそが天から託された私共の使命であることに気が付いた次第です。

そのためには、可能な限り、一人一人の患者さんに全人的に接することができるように、これまで以上に一層の工夫を凝らしていく心がけを忘れないことが大切だと受け止めています。