『米国トランプ大統領のCovid-19の病状を診る』No5

前回はこちら

 

トランプ大統領主治医 「治療完了、10日に集会再開可
と発表 

 

以上のNHKその他の報道を参考として、引き続き、前日に改訂した情報分析に、トランプ氏の発言をはじめ更に新たな情報を加えて整理してみました。

 


トランプ大統領が隔離期間(2週間)以内に完全回復するか?
ということが注目されています。

 

以下が、トランプ支持者が期待しているシナリオです。抗体出現というステップを新たに加えました。ただし、ホワイトハウスにおいて新型コロナウイルスのクラスターが発生していることが、さらに大きく問題視されています。


1) このまま順調な回復⇒2)中和抗体獲得(?)⇒3)PCR検査2回連続陰性⇒4)新型コロナを克服して、選挙戦の最前線へ再登場⇒5)新型コロナを克服した大統領は英雄⇒6)アメリカ人は強い大統領が大好き⇒7)トランプ大統領の再選確実!
トランプ氏を支持するかどうかという政治的な問題はさておき、一人の患者としてのトランプさんの経緯をみていきましょう。

 


10月1日(木)

トランプ大統領の最側近の大統領顧問の感染発表

 

この日の夜に、大統領自身のPCR検査でCovid-19陽性の確定診断が出ていました。
新型コロナは感染確認から7~10日間で重症化するリスクがあります。したがって、トランプ氏の場合は、少なくとも11日(日)夜まで経過観察が必要ということになります。この日に採取したトランプ大統領の血液からは、新型コロナウイルスの抗体が検出されませんでした。発症直後から高熱と呼吸困難が発生したようです。

 

 

10月2日(金)

<未明>感染を公表「ただちに隔離と回復のためのプロセスを開始する」(ツイッター)

 

トランプ大統領の新型コロナウイルスPCR検査陽性の結果判明。
同日の症状としては、発熱の他に呼吸困難感はあったものとみられます。
海外メディアの情報によると、検査時点ですでに、全身倦怠感、咳、発熱などの感冒様症状(主に、急性上気道炎)があったようです。
動脈血中酸素飽和濃度(SpO2)が急激に低下したようですが、これは肺などの下気道にまで炎症が急激に波及したことを示唆します。ただし、その際のデータは未詳です。
つまり、急激に肺炎を発症させたとみることができます。⇒ 酸素吸入実施。動脈血中酸素飽和濃度(SpO2)は93%まで低下。その後、解熱したとのことですが、一過性ではない可能性があり、再度発熱する恐れはあります。⇒8日(木)までは再発熱はありません。

 

<夕刻>入院「調子はいいが、問題ないか確認してもらう」(ホワイトハウスにて、報道陣に対して)未承認薬「抗体カクテル」の特例投与
 抗体検査の陽性が判明した数時間後、すなわち2日(金)に、軍の病院に入院する前に、レジェネロン製薬の治験段階の抗体を用いた抗体療法(2種類の抗体カクテル8g相当)をホワイトハウス内で既に開始されていた、とのことです。
これは、実験段階の未承認薬です。日本では絶対に使用できない薬です。これは米国でも一般患者では通常受けられない先端医療ということになります。

 

追加情報:

ホワイトハウス内には医療施設がある
(ピッツバーグ大学医学部ワリド・ゲラッド教授)
 <米メリーランド州ベセスダでコロナウイルス病(COVID-19)の治療を受けている
ウォルター・リード国立軍事医療センターへ移動>

 

 

10月3日(土)

<夜>ビデオメッセージを発表「今後、数日間が正念場だ」

 

トランプ大統領がツイッターで「状態改善」を発表。

 

動脈血中酸素飽和濃度(SpO2)が96%から98%:
このデータが室内大気、すなわち、一切の酸素吸入を行っていない条件下でのデータであれば、正常範囲ですが、トランプ氏は酸素吸入を受けたとの情報もあり、その場合は、全く意味が違ってきます。⇒ この日も前日に続いて酸素吸入が行われたことが、退院時(5日)の記者会見でコンリー氏によって明らかにされました。
肺炎を発症させた翌日に完全に治癒しているとは考えにくいといえるでしょう。
「今後48時間は依然として厳しい状況になる可能性」の指摘は、もっともなコメントです。

 

トランプ大統領自身のビデオメッセージの中で「今後、数日間が正念場」というのは率直なメッセージとして受け止めてよいと思います。48時間後である5日(月)には、最悪の厳しい状況を脱して退院しました。今後数日、というのが具体的に何日なのかは不明ですが,その後の情報追加により、5日後の8日(木)も重篤とはならずに済んでいるところから、トランプさんの言う「正念場」は過ぎたということになるでしょう。


5日に退院可能の見込みがある、と発表されていますが、慎重に経過を見守る必要があります。⇒ 予定通り5日夕には退院を果たしました。ただし、事後の情報によれば、この日はまだ発熱があったことになります。

 

 

10月4日(日)

<午前>医師団、トランプ氏の体調が改善したと発表「本で学べないことを実地で学んだ。ここは本当の学校だ」(ツイッター)

 

トランプ氏は、4日(日)から5日間、ジアレド・サイエンス社製のレムデシビルの点滴を開始したとのことですから、点滴が終了するのは8日(木)になるはずです。


トランプ米大統領の医師団は、大統領は低酸素レベルを経験した後、ステロイドを開始したが、彼の状態は改善しており、早ければ5日にも退院できる(ホワイトハウスに戻れる)可能性があるとの見方を示した。⇒5日夕にホワイトハウスに戻りました。
主治医のショーン・コンリー氏はこの日の記者会見でトランプ氏の容体について、2日午前に高熱が見られたほか、血中酸素濃度が一時低下したため酸素吸入を行ったことを確認し、当初の説明より実際には症状が重かったことを認めた。


少なくともこの日から解熱し、以後4日間は発熱は見られなかったようです。


⇒8日(木)も発熱はなかった模様です。

 

Dr. Conley declined to provide a definitive answer on whether Mr. Trump had ever received supplemental oxygen, despite repeated pressing.

(コンリー医師はトランプ氏が酸素補助を受けたかどうかについて再三の質問を受けながら明確な回答をすることを拒んだ)ウォールストリートジャーナルより

 

トランプ氏は、入院先の病院の外に車で短時間出て、支持者に手を振った。
トランプ氏自身がツイッターに投稿した4日の動画では「非常に興味深い体験だ。新型コロナ感染症について大いに学んだ」などと述べていた。

 

 

10月5日(月)

<早朝>ツイート約20通を連投「投票、投票、投票だ!」

 

<夕刻>退院「気分は上々だ!新型コロナを恐れるな」(ツイッター)

 

入院していたワシントン近郊のウォルター・リード軍医療センターを退院し、3日ぶりにホワイトハウスに戻った。
主治医師団(コンリー医師他)「トランプ氏は過去72時間以上にわたり発熱が無く、血中の酸素濃度も正常だった。呼吸障害も訴えておらず、『病院が定める退院の基準を満たした』と記者会見で明らかにした。事後の情報によれば、この日はまだ何らかの症状が残っていたようですが、この日に採取した血液からは抗体が検出されたことが報告されました。しかし、この抗体は、順調な治癒課程の証となる、トランプさん自身の体で産生された「中和抗体」である確証はなく、治療に用いられていた抗体の検出だとすれば、全く意味のない発表と言うことになります。「中和抗体」が産生されるようになるには、一般的には2週間程度を要するため、私は治療用の「抗体カクテル」の抗体を検出したに過ぎないのではないかと考えています。

 

「大統領は危機を完全に脱したわけではない。12日まで容体が同じか、改善しているのでなければ安心できないが、臨床上の状態から見て安全に帰宅できる状態にある」と述べた。また、「大統領官邸で24時間体制で治療を受けることになるという。⇒12日(月)まで、あと2日程ですが、未だに気がかりです。
ただし、同氏の見解に対しては情報開示が不十分です。この日の記者会見でジャーナリストと押し問答になったのは「胸部CT画像での新型コロナに特徴的な肺炎の所見の有無」でした。軽症であればCT画像で肺炎の所見は見出さないが、逆に、これが見出されれば、大統領は少なくとも中等症以上である可能性が高まるので、これは重要な情報ですが、明確な回答は得られなかった模様です。また、未承認治験薬「抗体カクテル」の特例投与については「少し未知の領域に立ち入った」と率直に話しました。

 

 

10月6日(火)

<夜明け>「今月15日のテレビ討論会を楽しみにしている。すばらしいものになるだろう」(ツイッター)

 

大統領の主治医は、容体について「6日午前の診察では、症状はなく、血液中の酸素濃度も95%から97%で体調は安定している。大統領の体調は全体的に見て引き続き極めて良好だ」と述べています。ホワイトハウスでも酸素吸入は可能なので、引き続きこのデータがどのような条件下でのものなのかが判断の前提となります。95%という好ましいとは言えない数字を発表しているということは、一過性ではなく、実際に、しばしば95%を示すということであろうかと想定できます。その場合、トランプさんの肺炎は完全には治癒していないと考えるべきでしょう。肺炎などの呼吸障害がある場合には、健常者とは異なり、わずかに歩行するだけでも、あるいは精神的な緊張(不安感や高揚感のいずれでも)だけでも、酸素需要が高まることによって、酸素分圧濃度が容易に低下することはあるからです。引き続き要警戒です。

後日、酸素飽和度低下の際にデキサメサゾン(副腎皮質ステロイド)を投与したという新しい情報が入ってきました。呼吸障害の原因は、間質性肺炎類似の病態であったのではないかと推測します。また、この日から少なくとも翌日にかけては症状が出ていなかったとのことですが、それは、酸素とデキサメサゾンの投与後の状態の報告ということになるでしょう。

 

 

10月7日(水)

新しい情報は入手できていません。

本日を無事に過ごせれば、最悪の事態は待逃れるのではないかと考えます。
ホワイトハウスの報道官はトランプ大統領がこの日、退院後初めて執務室に入ったことを明らかにしました。

大統領に発熱はなく、症状も出ていないとした上で、「5日に採取した血液から抗体が検出された」として免疫ができつつあることを示唆し、順調に回復していると強調しました。主治医は、「大統領はけさ、『すばらしく調子がよい』と話していた。血中の酸素濃度や呼吸回数などは正常の範囲内で、4日以上、発熱はなく、24時間以上、症状も出ていない」としています。
 

その上で、「10月1日に採取したトランプ大統領の血液からは、新型コロナウイルスの抗体が検出されなかったが、5日に採取した血液からは抗体が検出された」として、体内で免疫ができつつあることを示唆し、順調に回復していると強調しました。
 

しかし、トランプ大統領の主治医が大統領の血液から新型コロナウイルスの抗体が検出されたと発表したことについて、私以外にも、複数の専門家からは、検出された抗体は大統領に投与された抗体医薬によるものではないかという指摘が出ています。
抗体医薬は、人工的に作りだした抗体を薬として患者に投与するものだからです。
 

また、大統領に投与された薬を開発しているアメリカのリジェネロン社はNHKの取材に対し、「抗体が体内で作られたものか、薬によるものかは区別が難しい」としながらも、「大統領に投与された薬の量や、検査が行われた時期を考慮すると、抗体医薬に含まれる抗体が検出された可能性が高い」としています。
 

トランプ大統領はホワイトハウスに戻って以来、これまでのところ公に姿を見せていませんでしたが、現地時間の7日夕方(日本時間の8日午前7時前)、トランプ大統領は、ツイッターにビデオメッセージを投稿し、退院した5日以来、初めて姿を見せました。
 

この中でトランプ大統領は、冒頭、「みなさんのお気に入りの大統領です」と述べた上で、「薬のおかげで信じられないほど体調がよくなった。私は大統領が受けられる治療を国民全員が受けられるようにしたい」と述べ、薬の効果を強調しました。

 

10月8日(木):主治医のショーン・コンリー氏は「トランプ氏の新型コロナウイルス感染症の一連の治療がすべて完了したと発表した。


トランプ氏は入退院後初となるFOXビジネスとのインタビューで、自身について、「人に感染させる状態にはすでになく、選挙運動の集会を再開する用意ができている
と発言。また「免疫が付いたため、再びコロナに感染することもないと付け加えた。

トランプ氏は医師から10日の集会出席について問題ないと伝えられたと説明。「気分はとても良い」とし、「今夜集会をやりたい。きのうもやりたかった」と述べて、選挙活動再開に意欲を示した。

「準備が間に合うなら10日(土曜日)の夜に集会ができるよう試すつもりだ。おそらくフロリダになるだろうが、開催したい。翌日(11日、日曜日の夜にはペンシルベニアでやるかもしれない」と述べた。

ホワイトハウスが8日夜にホワイトハウスが公開したコンリー氏のメモによると、「トランプ氏は非常に良い治療効果を示しており、副作用の兆候はないという。9日に新型コロナ検査を受ける可能性があるとも説明。
ショーン・コンリー氏は、そのうえで、(大統領は)「ホワイトハウスに戻って以降、症状の診察結果は安定しており、症状の進行を示す兆候はないとし、医療チームが実施してきた先進的な診断に基づくなら、トランプ氏は10日にも公的な場面へと安全に復帰できる見込みが大いにあると述べた。


ただし、メモの中では、トランプ氏が最後に陰性と診断されたのがいつなのかは言及されていない。また米疾病対策センター(CDC)によれば、新型コロナ感染者は最初に症状が出てから10日間は他人への接近を控える必要がある。解熱剤無しで24時間発熱しないことも、人と接触する際の条件となる。こうした指針に照らせば、トランプ氏はまだ隔離が必要な状態にあり、選挙活動を行うべきではない。それでも同氏は退院からわずか2日後に、ホワイトハウスでの執務を再開している。

10月9日(金):新型コロナウイルス検査を行うことになっていますが、実施の有無や結果についての詳細は確認できていません。

発症の誘因
1)マスク嫌い、2)大規模集会出席、3)米国全土での移動(気象環境の格差)、
4)季節(夏から秋、急激な気温低下)、5)蓄積疲労、6)精神的ストレス(ストレス性潰瘍、不眠症)、7)ホワイトハウス内部の反トランプスパイの暗躍、

トランプ大統領の死亡リスク因子

1) 高齢、2)肥満(BMI>30)、3)男性、4)基礎疾患
基礎疾患についての背景(トランプ大統領の常備内服薬)

1 アスピリン® サリチル酸系・・・日本では血小板凝集薬として使用される血栓予防(狭心症、一過性脳虚血発作など動脈硬化症を基礎とする疾患に) 


2 リピトール® スタチン・・・抗コレステロール血症治療薬。トランプ氏の血清コレステロールは正常値内にコントロールされているとのことです。

3 亜鉛・・・細胞性免疫を高めるミネラル。

4 ビタミンD・・・骨粗鬆症、副甲状腺機能低下症、慢性腎不全にも用いられますが、おそらくは免疫力強化の目的の他に、転倒による骨折防止も考慮していたのかもしれません。

5 ファモチジン・・・ヒスタミンH₂受容体拮抗薬に分類される消化性潰瘍治療薬の一つ。ガスター®という商品名で日本でも広く用いられています。トランプ氏は胃十二指腸潰瘍(胃潰瘍の可能性が高い)、逆流性食道炎を患っている可能性があります。

6 メラトニン・・・人の脳から分泌される睡眠ホルモンで、加齢により生産が減少します。常習性のない自然の睡眠薬と言われています。認知症の予防にも効果があります。強い抗酸化効果があり、動脈硬化対策にもなります。その他にも免疫力を高める作用や成長ホルモンの分泌を高める作用が報告されています。トランプ氏は単なる動脈硬化の進行防止ではなく、不眠症に悩んでいたか、自らが認知症になることを恐れていた可能性があります。

推定される基礎疾患

1) 肥満症、2)動脈硬化症、
3)脂質異常症(高コレステロール血症);血清脂質は正常範囲にある。
4)心疾患(高血圧、狭心症)

< 慢性の呼吸器疾患や糖尿病はない>ことが発表されました。

治療の内容

主治医:ショーン・コンリー医師
1 安静?

2 酸素吸入(2日に実施)⇒2日(金)だけではなく3日(土)にも実施

3 回復患者採取血清抗体療法:
抗体検査の陽性が判明した数時間後、すなわち2日(金)に、軍の病院に入院する前に、レジェネロンという治験段階の2種類の抗体カクテル8g(未承認薬)を用いた抗体療法をホワイトハウス内で既に開始されていたとのことです。
⇒ 何と大胆な!大統領をモルモット代わりにするのは驚き、
それとも大統領がボランティアを買って出たものか!?
レジェネロン社によると、トランプ氏は、他に治療法がない重篤な疾患の患者に未承認の医薬品を使用することを認める「思いやり使用要請」 (a compassionate-use request)のもとで実験薬を受け取ったといっています。

4 レムデシビル® 毎日1回の点滴:
⇒ 新規ヌクレオチドアナログのプロドラッグで、抗ウイルス薬。ギリアド・サイエンシズが開発し、エボラ出血熱及びマールブルグウイルス感染症の治療薬として、後に、一本鎖RNAウイルス(RSウイルス、フニンウイルス、ラッサ熱ウイルス、ニパウイルス、ヘンドラウイルス、コロナウイルス(MERSおよびSARSウイルスを含む))に対して抗ウイルス活性を示すことが見出されました。2020年5月1日、アメリカ合衆国で緊急使用を認めた新薬であり、日本では「特例承認制度」を用いて2020年5月7日に正式に新型コロナウイルスへの治療薬として承認されましたが、特定の医療機関でのみ使用できるに過ぎません。
  

トランプ氏は、4日(日)から5日間、ジアレド・サイエンス社製のレムデシビルの点滴を開始したとのことですから、点滴が終了するのは8日(木)になるはずです。
 ⇒ しかし、その後の公開情報によると実際には、2日(金)から5日(日)までの連続4日間にわたり「レムデシビル」の投与を受けていたようです。最後となる5回目の投与は6日(火)にホワイトハウスで実施する予定であるとのことでしたので、7日(水)には、すでにすべての投与が完了したことになります。

5 デキサメサゾン(ステロイド剤):

⇒ 古くからある薬剤です。重症例で使用されますが、いわゆる急性間質性肺炎に対して処方されることもあります。ロイター通信も、この薬剤は強力な抗炎症薬であり、低酸素血症を伴うような重症例で用いる(ジョンス・ホプキンス大学、感染症専門医アメシュ・アダリャ医師)ことを示唆しています。
  

トランプ氏は日曜日(4日)に低酸素状態に陥ったため、このステロイド剤を投与したところ、反応良好で月曜日(5日)には退院できるかもしれないと報道しています。

⇒ たしかに退院できました。しかし、ホワイトハウスに再入院です。
感染症専門医のダニエル・マッキレン医師は、報道されているような楽観的な見込みより、重症である可能性があることを言及しました。また、米国感染症学会は、この薬剤を中等症以下の患者に用いると、むしろ有害な場合があるという見解を発表しています。

トランプ氏のCOVID-19の深刻さに疑問を呈する専門医たちの見解
治療に関わっていない外部の医師らは、コンリー氏の説明以上にトランプ氏の容体は深刻だとみています。体重や年齢を考慮すると、トランプ氏は重症化のリスクが比較的高いグループに入るからです。

医師たちは、これらの薬はどちらも病気が悪化するのを防ぐために、病気の初期段階では意味があると言ってきたが、米国感染症学会は、デキサメタゾンは一般的に病状が悪化している人のために準備されているものであることを指摘し、トランプ氏の病態が軽くはないことを示す最大の証拠だとしています。また医師たちは、治療に対して良好な反応を示したCOVID-19患者は比較的早く退院することができるが、それでも注意深く観察する必要があると述べました。⇒ まだ確定ではありませんが、トランプさんの初期の病態は軽症ではなく、そのため、デキサメサゾンの適応であり、酸素投与と併用によって、良好な反応を示したパターンのようです。それでも、12日(月)頃までは油断できないと考えます。

ラーヘイ病院医療センターの感染症専門家であるダニエル・マクキレン博士は「報告されているほど楽観視できる容態ではないだろう」と述べました。
ジョンズ・ホプキンス大学の感染症専門医であるアメッシュ・アダルジャ博士は、「トランプ氏が補助酸素を必要としなくなり、通常の活動に戻ることができれば、医師は彼を退院させることができるだろう。ただし、最大の問題は、悪化の危険性があるのか、それとも順調なのかということだろう。」と語りました。⇒ これについては、現時点では判断ができませんが、最悪の事態は免れたように観察されます。


ボストンのマサチューセッツ総合病院の感染症内科医であるラジェッシュ・ガンディ医師は「COVID-19の患者の中には、症状が出てから約1週間後に症状の悪化や息切れ、その他の合併症を発症する人もいます。」といいました。

⇒トランプさんの場合、1日(木)には何らかの症状を自覚していた可能性が高いので、計算上は7日(水)までに再増悪しなければ望ましい予後を期待できることになります。しかし、実際には10日間ないし2週間程度は要観察だと思います。少なくとも、今週末辺りで見通しがつくのではないでしょうか。

⇒8日(木)までに再増悪の兆しがなさそうなので、重篤な合併症を来すリスクは減少しつつあります。ホワイトハウスが8日夜にホワイトハウスが公開したコンリー氏のメモによると、「トランプ氏は非常に良い治療効果を示しており、副作用の兆候はないと発表されました。ショーン・コンリー氏は、そのうえで、(大統領は)「ホワイトハウスに戻って以降、症状の診察結果は安定しており、症状の進行を示す兆候はないとし、医療チームが実施してきた先進的な診断に基づくなら、トランプ氏は10日にも公的な場面へと安全に復帰できる見込みが大いにあると述べました。根拠は必ずしも明らかではありませんが、コンリー医師は慎重に回答するタイプの軍医なので、一定の信頼性は置けるものと推測します。ただし、9日(金)に行われるはずの新型コロナウイルスの検査の内容とその結果はとても重要です。


カリフォルニア州の UC デイビス健康で感染症部長のスチュアート ・ コーエン博士は、「トランプ氏が高リスク群であったため、初期治療としては積極的な方法で行ったのではないかとし、COVID-19はしばしば2つの段階を持つことが特徴である」と説明しました。-❶ ウイルス感染そのものと、❷ 場合によっては臓器障害を引き起こす可能性のある体の免疫システムの過剰反応である。「人々は1週間までは平気でいられるが......その後、すべてが急速に悪化していくケース。それが誰に起こるかを予測するのは常に難しい」」と言います。⇒「初期治療としてはより積極的な方法で行ったのではないか」という見解には賛成ですが、理由は「トランプ氏が高リスク群であったため」だけでなく、「トランプ氏の大統領としての地位と大統領選の期日に間に合わせるため」という要請が強く働いているように思われます。トランプ氏は、勝利のためには、多少の危険を冒しても積極的に賭けに出るタイプのようです。

⇒トランプさんは賭け事に強い人なのかもしれません。❷ 臓器障害を引き起こす可能性のある体の免疫システムの過剰反応(サイトカインストームなど)のリスクは徐々に減少している段階だと思います。⇒8日(木)のコンリー医師の発表によれば、これらの大きなリスクは回避できたものと推定されます。

ニューヨークのノースウェル・ヘルスの最高医療責任者であるデイビッド・バッティネリ博士は、トランプ氏が月曜日に退院する可能性があることは「全くもってあり得る話ではあるが、完全な回復には時間がかかるだろう。そして彼が外出して14日未満で選挙運動の歩道にあることは非常に可能性が低いだろう」と注意を促しました。

⇒ 医師としてはご尤もな見解ですが、退院前から選挙活動に勤しんでいるのが現実のトランプ氏です。とにかく、良くも悪しくも常識を超えた人物です。⇒10日(土)から活動開始が予定されました。

スペインのアルカラ大学のホセ・ミゲル・サンツ・アンケラ准教授は「彼がこれほど多くの薬を投与されているという事実は、トランプ氏が苦しんでいる病気の重症度が、大統領府が当初主張していたような『軽度』ではなく、少なくとも『中等度』である」ということを強調している。「彼の入院は、公式に認められている以上に、大統領の健康へのリスクが大きいことも示している。」と述べている。

杉並国際クリニックの現状分析

昨日の段階で、私が疑問に感じていたことが、少しずつ明らかになってきました。最大の疑問は、トランプさんの主治医であるコンリー氏の説明は矛盾に満ちているということです。

トランプさんの動脈血中酸素分圧濃度(SpO₂)の%濃度のデータがどのような条件下での値なのかが判明しない限り、トランプさんの呼吸障害の重症度は不明です。コンリー医師が明言を拒んたということは、おそらく、酸素供給下でようやく健常者のデータに近づけることができたということなのではないでしょうか。

⇒結局、トランプ氏は2日(金)と3日(土)に2回の酸素吸入を受けていたことが、5日(月)の会見でコンリー医師により、明らかになりました。軍医であるコンリー医師は、大統領の意向に忠実であることは確かです。最初は秘匿したリスク情報を、後日に明らかにするということは、幸いにトランプ氏の回復がある程度順調であることを示唆します。

⇒ 動脈血中酸素分圧濃度が低下した際に、酸素と共に「デキサメサゾン」が投与されていたことが判明しました。その治療によって顕著に改善しているとしたら、予後の見通しとしては、むしろ良い兆しであると考えます。

⇒私のこの推定は、8日(木)のコンリー医師の発表内容により、ある程度裏付けられたようです。9日(金)に実施したとされる検査の結果が注目されます。

通常、酸素供給重症患者のみに通常使用されるステロイド薬「デキサメタゾン」を治療に取り入れていることもその有力な傍証であるという意見を述べる米国の専門医も複数登場してきました。また、4日に投与を開始したばかりで、投与期間5日の抗ウイルス薬「レムデシビル」を使った治療もまだ2日しか行っていないにもかかわらず、5日に退院可能であるという見解は医師として常識外です。

⇒ 後の公開情報によると実際には、2日(金)から5日(日)までの連続4日間にわたり「レムデシビル」の投与を受けていたようです。これで、謎の一端が解けました。最後となる5回目の投与は6日(火)に医療設備の整ったホワイトハウスで実施できるので、ギリギリ了解可能です。

この点については、米国の複数の専門医も私と同様に考えていることが確認できました。もっとも、ホワイトハウスは医療設備も完備しているとのことから、退院とはホワイトハウスでの入院治療をすることを暗に示しているのかもしれません。肝心の5日の情報がほとんど入ってきてこないのも不穏です。当面の間、新型コロナ感染症に強い関心をもつ医師の一人として目が離せそうにありません。

⇒5日の情報が入り、形としては予測通りの退院でしたが、ホワイトハウス自体が病院機能を持っていることも大事な視点です。米国の危機管理の水準と、大統領選の勝敗に向けての行方を世界各国の首脳が見守っていることでしょう。

⇒今週末から週明け12日(月)の状態で安定回復までの大勢は決することでしょう。
このシリーズについて、初期の予定を渡過しました。今後も引き続きフォローアップしますが、連日ではなく、一定程度の情報がまとまり次第、不定期に掲載する予定です。