アレルギー専門医が診る皮膚疾患 、湿疹その2(接触皮膚炎)

8月11日(火)

 

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厚生労働省が発表している接触皮膚炎の総患者数は2014年度で195,000人であり、年齢別構成比率では65~69歳が25,000人と最多です。

 

接触皮膚炎は、外来性の刺激物質や抗原(ハプテン)が皮膚に接触することによって発症する湿疹性の炎症反応です。

つまり、アレルゲンが関与する皮膚疾患です。

 

こうした外界よりの異物(接触アレルゲン)に対する生体の異物排除機構の作動に伴い皮膚症状が出現します。

アレルゲンは多数存在し、社会の変化に伴って、新しい化学物質が出現して、その使用頻度が変化することにより変化を遂げています。日本皮膚科学会による「接触皮膚炎診療ガイドライン」は2009年に発表されています。

 

 

平成時代の30年間(旧、高円寺南診療所)は、皮膚科も標榜していた時期は、皮膚疾患の受診者の比率が多かったです。

 

令和に入り、杉並国際クリニックが徐々に予約制診療に移行すると、様相が一変してきました。

ネット予約での問い合わせでは、主訴等ではなく、いきなり、「アレルギーの検査をして欲しい」とか「金属アレルギーを調べてほしい」という御要望が書かれていることが増えてきました。

 

しかも、紹介状なし、です。診療前から一方的に特別な要望が書かれているとケースバイケースなので事前にお約束することは難しくなり残念です。

そのような場合は、予約を行わず、他の専門的医療機関の受診をお勧めすることにしています。その理由を説明いたします。

 

 

接触皮膚炎は原因と推測される物質の特定と、原因物質が含まれる製品を含めて、接触を避けることが基本であると医師は考えます。

 

しかし、患者にとっては、代わり使用できる製品が重要であり、代替品を知ることが必須となる場合が多いです。

最近の患者さんはすでに特定の皮膚科専門医を受診しているにもかかわらず、主治医には相談なく、そのまま他の医療機関を梯子受診したがる傾向があるように思われます。

そのため、当然のことながら「紹介状」はありません。患者さんが、なぜそのような行動をとらざるを得ないのでしょうか。

 

それには、以下のような、いくつかの理由があるようです。

 

① 経過が長く、治らない、もしくは一進一退を繰り返す場合

 

② 局所ではじまったものが、次第に拡大してきた場合

 

③ 顔などの部位に生じた場合

 

④ 職業性に生じた場合であり、職業継続が困難になってきた場合

 

⑤ 診断が不確かで不安な場合

 

 

しかし、以上の理由は、むしろ一般医が皮膚科専門医へ紹介する目安となる基準に重なっています。これが、フリーアクセスの欠点ともいえる現代医療の難しい典型的な局面でもあります。

 

接触皮膚炎は大きく分類して刺激性とアレルギー性に別けることができます。これに、光線の関与したタイプを加え、以下のように分類することが多いです。

 

① 刺激性接触皮膚炎

 

② アレルギー性接触皮膚炎

 

③ 光接触皮膚炎(光毒性接触皮膚炎、光アレルギー性接触皮膚炎)

 

④ 全身性接触皮膚炎・接触皮膚炎症候群、接触蕁麻疹

 

 

初診時に必要な問診:
接触皮膚炎を疑った際には原因を明らかにするために詳しい問診を行います。

その際、時間的経過、部位によりアレルゲンを推測し、光線が関与しない接触皮膚炎のときにはパッチテストを、光線が関与することが疑われるときは光パッチテストを施行することになっています。

 

しかし、判定は48時間後、72時間後、1週間後に行うことが前提であるためか、皮膚科専門クリニックでも日常診療上ルーチンにパッチテストが行われるわけではないようです。

 

 

経過が短期的な場合には毛染めなどの日用品、食物や植物、外用薬や湿布薬(医薬品)などが原因として推測されることが多いです。

 

逆に、経過が慢性的な場合にはアレルゲンの推測は非常に困難です。

しかし、その中でもシャンプーやリンスなどの日用品、化粧品、ニッケル・コバルト・クロムなどを含む装飾品、食物に含まれる金属などに特に注意が必要です。

 

皮肉な話ですが、実際にしばしば遭遇するのは、皮膚科医から処方されている軟膏が接触皮膚炎を難治化させていた例や、点眼液で視力を低下させていた事例も経験したことがあります。

また、仕事の作業内容によっておこる職業性接触皮膚炎が原因だったこともあります。

 

 

問診や発症部位による推定が難しい場合は、標準アレルゲンを添加してあるパッチテストパネルを一緒に貼付試験することにより、広くスクリーニングすることも保険医療上不可能ではありませんが、コストと手数などに見合わないため 、公的医療機関でさえ積極的に実施することは控えているとの情報を得ています。

 

 

鑑別疾患:
境界明瞭な局面形成をする皮膚疾患の鑑別が重要です。

尋常性乾癬、白癬、脂漏性皮膚炎、ボーエン病、乳房外パジェット病などです。また手の領域では、汗疱、異汗性湿疹も鑑別となります。

 

原因除去とステロイド外用薬を主体とした治療法で通常は1~2週間程度で軽快します。軽快しないときは原因特定の検査が必要となります。

 

ただし、原因排除後も警戒しない場合があり、使用しているステロイド外用薬による接触皮膚炎の可能性を疑う必要もあるなどのケースもあります。

 

また、原因アレルゲンが多くの製品に含まれる場合があり、それらとの接触を避ける指導が必要となります。特に「毛染め」は 重症の接触皮膚炎になるにもかかわらず、使用をやめられない方が多く難渋します。

そのような場合はヘアマニキュアやパラフェニレンジアミン未配合の毛染め剤を勧めるなど、具体的な代替品の推奨が不可欠となりますが、「言うは易く行うは難し」、という感は待逃れません。