内科医が診る代表的な泌尿器疾患、尿路結石症

8月6日(木)

 

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わが国における尿路結石症の罹患率は年々増加しており、1965年の調査時より約3倍、1995年の調査時よりも、さらに約1.6倍増加しています。そして最近の尿路結石症全国疫学調査では障害罹患率は男性では7人に1人、女性では15人に1人までにも達しています。しかも再発率は5年で45%、10年で60%と高いことも特徴です。

 

好発年齢は男性で40歳代、女性では50歳代です。結石の疼痛発作は、年齢、性別によらず7~9月に多く、10月には減少します。結石成分はカルシウム結石が90%を超えています。

 

「尿路結石症診療ガイドライン」は、日本泌尿器科学会、日本泌尿器内視鏡学会、日本尿路結石症学会により2013年に第2版が発行されています。しかし、多くの泌尿器科の専門医の見解でも、尿路結石症はメタボリックシンドロームの一疾患と捉えることができ、また結石を予防する意識を持つことは他の生活習慣病の予防にも繋がるとしています。

 

これは尿路結石症の診療に関しては内科医がより積極的に参画すべきであることを意味します。杉並国際クリニックは、とりわけ尿路結石が生じやすい痛風に関して、専門レベルでの診療を行っている立場から、尿路結石の早期診断や予防、治療、再発防止には力を入れています。

 

 

上部尿路結石の罹患率・有病率は、世界的にも増加傾向にあり、食習慣の変化の影響が示唆されています。

肥満、糖尿病、高血圧、痛風といった生活習慣病や、これらのリスクの重複が尿路結石症と関連していることは多くの疫学研究で示されています。

そのため、尿路結石症はメタボリックシンドロームの一疾患群と捉えることができるのです。特に肥満患者や痛風患者では腎結石の発生が有意に多いことが示されています。

 

初診時を含め早期に必要な検査としては、

①尿検査、

②血液検査、

③超音波検査、

④腎尿管膀胱部単純X線(KUB)撮影

などが挙げられます。

 

急性腹症で尿路結石が疑われる場合は、はじめに超音波検査を行うことが推奨されています。X線検査は、大多数のカルシウム結石を検出することはできますが、痛風患者に合併しやすい非カルシウム系である尿酸ナトリウム結石はレントゲン陰性結石なので同定不能です。

 

鑑別疾患としては、急性腹症を来す疾患のすべてが該当します。腎盂腎炎や腎梗塞などの泌尿器疾患にとどまらず、消化器系、循環器系、産婦人科系、整形外科系など広汎な領域に及びます。

 

治療戦略としては、腎結石と尿路結石で区分します。腎結石の積極的治療は泌尿器科専門医に委ねます。尿路結石に関しては、10㎜未満であれば多くの場合自然排石が可能です。

 

尿管結石の自然排石率は、5㎜未満で68%、5~10㎜で47%と報告されています。

ガイドラインでは、1カ月以上排石されない場合には、腎機能障害や感染症併発の危険を回避するために、積極的な結石除去治療の介入を考慮すべきとしています。尿路結石の自然排石を促進できる薬剤としては、ウラジロガシエキス(ウロカロン®)、漢方薬である猪苓湯(ちょれいとう)があります。α₁遮断薬も有効ですが、残念ながらわが国では保険適用がありません。

 

 

結石成分分析は再発予防対策には重要です。

・シュウ酸カルシウム結石では、高カルシウム尿、高シュウ酸尿、高尿酸尿、低クエン酸尿の存在が示唆されます。

 

・リン酸カルシウム結石では、高カルシウム尿、低クエン酸尿、腎尿細管性アシドーシス、副甲状腺機能亢進症の存在が示唆されます。

 

・尿酸結石では、高尿酸血症、高尿酸尿、痛風、尿酸排泄促進薬の使用が原因となっていることが示唆されます。

 

・リン酸マグネシウムアンモニウム結石・カーボネートアパタイトでは尿路感染症が原因となっていたことが示唆されます。

 

・シスチン結石では、シスチン尿症が存在しています。

 

 

尿路結石の再発予防法

1) 水分摂取:再発予防には1日尿量2,000mL以上となるように水分を摂取する。

 

2) シュウ酸摂取を減らす:シュウ酸を多く含む食物(葉菜類の野菜、お茶類など)の摂取を減らす。その工夫として、茹でることやカルシウムと一緒に摂取するなどの工夫をする。

 

3) プリン体摂取を減らす:高プリン食品の過剰摂取は血清尿酸値を上昇させ、高尿酸尿や酸性尿を誘発させる。尿酸代謝異常を有する患者に対して、プリン体摂取や総エネルギー摂取に関する栄養食事指導が勧められる。

 

4) 食塩摂取制限:食塩の過剰摂取は特にカルシウム結石の再発の危険因子になりうる。

 

5) カルシウム摂取:一定量のカルシウム摂取は、制限を行うより勧奨される。

 

6) クエン酸の摂取:クエン酸は尿中pHを上昇させ酸性尿を改善させることによって尿酸結石、シスチン結石の再発予防に有効であり、またシュウ酸カルシウム、リン酸カルシウムの結晶形成を抑制し、カルシウム結石の再発予防に有用である。特に、低クエン酸尿、遠位尿細管性アシドーシスでは有用性が高い。

 

7) 尿酸生成抑制薬の内服:高尿酸尿を伴うシュウ酸カルシウム結石によるイベントが有意に減少した。

「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン」では、高尿酸血症や痛風は、尿酸結石だけではなく尿路結石で最も頻度が高いシュウ酸カルシウム結石形成を促進して尿路結石の頻度を増加させるとしている。

尿路結石を合併する高尿酸血症の治療薬は尿酸生成抑制薬が第1選択で、高尿酸尿を伴うシュウ酸カルシウム結石の再発防止には尿酸生成抑制薬や尿アルカリ化薬が有効である。