痛風認定医として<痛風>を語る、痛風の治療薬の種類とその選択

7月17日(金)

お詫び!

予定表では、第3週は「心療内科指導医<消化器心身症>を語る」でしたが、
痛風患者の激増のため、急遽、第4週と第3週のプログラムを交換しました。


私は痛風が、単なる生活習慣病としての代謝病であるばかりでなく、心理社会的ストレッサーによって発作を生じやすい疾患であることに気づいていました。しかし、痛風のエキスパート集団である「日本痛風・核酸代謝学会」の認定医は全国で55名に過ぎず、私以外に指導医クラスの心療内科の専門医が不在であるためか、さっぱり議論されていないことが残念です。

 


1)痛風の管理・治療目標
 

痛風関節炎を繰り返す症例や、また最近では稀になってきてはいますが痛風結節を認める症例は薬物療法の適応となります。その際には、血清尿酸値を6.0㎎/dL以下に維持するのが望ましいです。

 

 

2)痛風の治療方針

痛風の治療方針は、その基本病態である高尿酸血症の治療に準拠します。つまり、食事療法、運動療法といった生活習慣の改善にあります。薬物療法:無症候性高尿酸血症であっても痛風関節炎、痛風結節、腎障害、尿路結石の発症を防ぐために血清尿酸値を低下させることが望ましいです。

 

 

3)病態別尿酸降下薬

痛風の治療薬は尿酸降下薬で代表されます。尿酸降下薬は、尿酸排泄促進薬と尿酸生成抑制薬に2大別できます。そして現在、わが国で使用できる尿酸降下薬は、既存の尿酸排泄促進薬3種に新たに選択的尿酸再吸収阻害薬1種が加わり4種となり、尿酸生成抑制薬3種、併せて7種が使用可能になりました。

 

尿酸降下薬は高尿酸血症の原因病態のタイプ別に使い分けられます。日本における高尿酸血症の病型頻度は、尿酸排泄低下型60%、尿酸産生過剰型12%、混合型25%であると報告されており、治療ガイドラインでは病型に応じて治療薬を選択することが推奨されています。

 

・尿酸排泄低下型には、尿酸排泄促進薬を選択し、尿路結石の出現を防ぐ目的もあって尿アルカリ化薬を併用します。しかし、腎機能障害が中等度以上である場合や尿路結石の既往ないし合併がある場合は、尿酸生成抑制薬を選択します。

また、臨床現場ではベンズブロマロン(ユリノーム®他)などの尿酸排泄促進薬よりも、フェブキソスタット(フェブリク®)などの尿酸生成抑制薬の使用頻度が高いのが現状です。

この要因として、ベンズブロマロンの副作用として肝障害を呈する場合があることへの懸念などがあると考えられています。これに対して新薬のドチヌラド(ユリス®)は、既存のベンズブロマロンなどに次ぐ新規の尿酸排泄促進薬(選択的尿酸再吸収阻害薬)はベンズブロマロンの肝障害の原因と考えられている、ミトコンドリア毒性や肝薬物代謝酵素CYP2C9阻害による薬物相互作用が少ないという特徴を有しているため期待がもてる薬です。

 

・尿酸産生過剰型には、尿酸生成抑制薬を選択します。ただし、フェブキソスタット(フェブリク®)を投与する場合には、心血管疾患の増悪や新たな発現に注意します。

 

杉並国際クリニックでは、尿酸産生過剰型に尿酸生成抑制薬を使用する場合も、尿の酸性が顕著な場合は、尿酸排泄効率を高める目的で尿アルカリ化薬を併用することがあります。この場合は、患者さんに<尿pHのセルフモニタリング>をしていただいております。

 

 

4)病期による治療法

痛風関節炎発作時

・発作前兆期:発作の前兆がわかる患者さんに対しては、予めコルヒチンを処方して常に携行していただくことがあります。1錠(0.5㎎)を用いて、発作を頓挫させることが目的です。ただし、初回から処方することは少ないです。

 

・発作の極期:NSAIDsパルス療法といって、NSAIDsを短期間(1~2日)に比較的大量投与する方法をとるのが一般的です。
NASAIDsが使用できない、無効もしくは多発性に関節炎を生じている場合などには、副腎皮質ステロイド(プレドニン®など)15~30㎎を経口投与することがあります。

しかし、杉並国際クリニックでは、発作疼痛のため歩行困難な患者さんの安全な帰宅を確保することと、経口ステロイド剤の大量投与をなるべく避けたい意図から、関節超音波検査で確認の後、関節炎局所に少量の副腎皮質ステロイド局所麻酔剤とともに注射するという関節注射療法を独自の方法として実施し好評を得ています。
       

この他に、低用量コルヒチン療法といって、発作12時間以内に1.0㎎、その1時間後に0.5㎎を投与する方法もあります。

 

・再発作予防:コルヒチン・カバー法といって、尿酸降下療法を開始後、痛風発作が頻発する場合、コルヒチンを1日1錠連日服用していただく方法です。しかし、コルヒチンには尿酸排泄作用はなく、長期にわたる予防投与に関しては副作用発現の可能性があるため推奨されていません。また、奇形精子のリスクもあるため避妊の指導が必要です。

 

痛風関節炎間欠期
すでに痛風発作の生じた患者さんに対しては、尿酸降下療法として血清尿酸値を3~6カ月かけて徐々に低下させていきます。尿酸降下薬による治療初期には、血中尿酸値の急激な低下により痛風関節炎(痛風発作)が誘発されることがあります。

そのため尿酸降下薬は痛風関節炎の寛解後に、少量から開始します。その際、血清尿酸値の目標を6.0㎎/dL以下とし、その後も6.0㎎/dL以下に安定するような薬剤の用量を継続的に調整します。
  

尿酸降下薬投与開始後の痛風患者に対して、痛風発作予防のためのコルヒチン長期投与は、ガイドラインでは条件付きで推奨されています。
 

なお腎障害を有する高尿酸血症の患者さんに対して、腎機能低下を抑制する目的で尿酸降下薬を用いることが条件付きで奨励されています。
 

薬物療法開始から6カ月間は、血清尿酸値の推移をみるため、また薬剤の副作用を早期に発見するために、採血検査を毎月実施するのが望ましいとされています。
    

なお、高尿酸血症の放置により、高尿酸血症固有の合併症のみならず、高血圧、メタボリックシンドロームの発症・進行に関連する可能性があることに留意しておくことが大切です。