痛風認定医として<痛風>を語る、痛風の基礎病態としての高尿酸血症

お詫び!

予定表では、第3週は「心療内科指導医<消化器心身症>を語る」でしたが、
痛風患者の激増のため、急遽、第4週と第3週のプログラムを交換しました。

 

前回はこちら

 

私は痛風が、単なる生活習慣病としての代謝病であるばかりでなく、心理社会的ストレッサーによって発作を生じやすい疾患であることに気づいていました。

 

しかし、痛風のエキスパート集団である「日本痛風・核酸代謝学会」の認定医は全国で55名に過ぎず、私以外に指導医クラスの心療内科の専門医が不在であるためか、さっぱり議論されていないことが残念です。

 

 さて、痛風の原因となる基礎病態は高尿酸血症です。正常人の体内尿酸プールは成人男性でおよそ1,200㎎、血清中の尿酸濃度はおよそ6.4㎎/dLが飽和濃度です。尿酸産生量はおよそ700㎎/日で、このうち約500㎎/日が尿中に排泄され、約200㎎/日が汗、消化液などに排泄されます。尿酸産生、プールの形成、尿酸排泄は定常状態(一定)なので、尿酸プールが増大して高尿酸血症を惹起する原因は、尿酸産生の増加、尿酸排泄の減少によります。


わが国の成人男性における高尿酸血症の頻度は、30歳以降では30%に達していると推定され、現在も増加傾向にあります。また、痛風の有病率は、男性において30歳以降では1%を超えていると推定され、高尿酸血症の増加に伴い現在も増加傾向になると考えられます。
 

高尿酸血症は、尿酸塩沈着症(痛風関節炎、腎障害など)の病因であり、血清尿酸値が7.0㎎/dLを超えるものと定義しています。
 

これは体内の溶解度を超える血清尿酸濃度から設定されたため、その値は性別や年齢を問いません。近年、尿酸値が生活習慣のマーカーとして、また疾患発症の予測因子として、あるいは病因として重要であることが次々と報告されています。高尿酸血症は男性に見られることが多いですが、女性では、血清尿酸値が7.0㎎/dL以下でも血清尿酸値の上昇と共に生活習慣病のリスクが高くなります。

 

血清尿酸値が高値であること自体は無症状であることも多いため、健康診断や他の診療で医療機関を訪れ血液検査を受けた結果で指摘されることが多いです。しかし、血清尿酸値は、測定誤差や食事、さらには日内変動の影響を受けやすいため、血清尿酸値が恒常的に高値を示すかどうか、複数回測定して、血清尿酸値が7.0㎎/dLを超えているかどうかの結果で高尿酸血症か否かを診断します。

 

高尿酸血症の診断がついたら、二次性高尿酸血症を鑑別する必要があります。薬剤投与や他の病気などに起因する二次性高尿酸血症が除外出来た後は、病型分類に照らし合わせて診断を確定します。

 

高尿酸血症の病型というのは、尿酸排泄低下型、腎負荷型および混合型に3大別します。この分類は、治療、特に薬物選択を行うために有用です。詳細については、明日解説します。

 

<明日へ続く>