リウマチ専門医として<リウマチ>を語る、関節リウマチの疾患活動性の評価方法

7月8日(水)

前回はこちら

 

関節リウマチの疾患活動性の評価方法

 

慢性疾患においては医師と患者が共同で意思決定を行うことが大切とされます。関節リウマチ診療において、少し古い論文(註)ですが、患者にとっての優先事項と問題が何かを医師が把握する必要性を証明したものがあります。それは関節リウマチ(RA)の疾患活動性を患者自身が評価する全般評価(PGA)と、評価者(医師)による全般評価(EGA)はしばしば食い違うからです。

 

(註)参考文献:
Discrepancies between patients and physicians in their perceptions of rheumatoid arthritis disease activity

Volume64, Issue9.September 2012.Pages 2814-2823


オーストリアVienna大学Daniel Aletaha氏のグループのPaul Studenic氏らは、RA患者の大規模観察コホートのデータベースに登録された情報を利用して、食い違いが何に由来するのかを調べました。その結果、患者は疼痛レベルをより重視し、医師は腫脹関節数(SJC)をより重視して全般評価を決定していることが明らかにしました。著者らは、医療者が患者の痛みを過小評価している可能性を指摘しました。

 

杉並国際クリニックは、戦略的な疼痛診療によって患者さんの痛みに対して真摯に取り組んでいることは多くの皆様の支持をえています。

 

具体的戦術としては、

1)患者さんの痛みの本質を十分に理解すること

2)痛みを含む総合的・複合的な疾患活動性についての評価指標を採用していること

3)治療にあたっては消炎鎮痛剤のみに頼らず、むしろこれらを減らすために漢方を

併用し、また鍼灸療法などの物理療法や水氣道®などの運動療法、環境調整、必要に応じてリラクゼーション法の指導や心身医学的アプローチを最大限に活用すること

 

以上の他に、関節リウマチの診療は食生活を含む全身の健康管理による体質改善やストレスマネジメントが必要なことを理解していただき、良好な成績を得ています。

その結果、当クリニックにおいて、一般的に高価格であるとして知られている生物学的製剤を使用している関節リウマチの患者数はゼロです。

 

 

関節リウマチの疾患活動性の評価には複合的活動性指標の活用が推奨されています。
以下の3つの指標が臨床現場で活用されています。

 

いずれの評価方法でも28の関節診察が基本になります。

1) DAS28(Disease Activity Score)

 

2) CDAI(Clinical Disease Activity Index)

 

3) SDAI(Simplified Disease Activity Index)

 

 

現在、杉並国際クリニックで採用している評価尺度は1)DAS28です。

 

1)DAS28は複雑な計算式を必要とし、日常診療では煩雑であるとされていますが、実際には自動計算ツールもあるため、比較的簡単に計算可能です。

 

DAS28=0.56×√(圧痛関節数(0-28)+0.28×√腫脹関節痛(0-28)+0.70×ln(ESR)
   +0.014×患者全般評価(0-100㎜)

 

 実例を示します。

DAS(

 

 

2)CDAIは28関節(両肩、両肘、両手、母指指節間関節、2~5近位指節間関節、1~5中手指節間関節)を観察対象とします。評価方法は、腫脹関節数と圧痛関節痛、患者による全般評価、医師による全般評価を足し合わせることで計算できます。
  

CDAI=圧痛関節数(0-28)+腫脹関節数(0-28)+患者全般評価(0-10㎝)
+医師全般評価(0-10㎝)

臨床的寛解基準:CDAI≦2.8

 

 

3)SDAIは2)CDAIにCRP(㎎/dL)を足すのみで計算できるので、容易に算出できます。
  

SDAI=CDAI+CRP(㎎/dL)
  

臨床的寛解基準:SDAI≦3.3

 

 

杉並国際クリニックでは、関節リウマチの疾患活動性の評価により、関節リウマチの臨床的寛解を評価することの重要性に鑑みて、今後は、1)DAS28に加えて、2)CDAIおよび3)SDAIを同時に計算して総合評価することにしました。

 

なお、主要28関節以外の骨破壊が進行していないかどうかの評価も重要であり、定期的にその他の関節の診察も行うべきとされます。この複合的活動性指標はとても有用ですが、関節所見はアナログです。これを補完するのが画像診断、とくに関節エコー検査です。

 

これについては、明日説明いたします。

 

<明日へ続く>