リウマチ専門医として<リウマチ>を語る、関節リウマチに有効な診療戦略

7月7日(火)
  
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関節リウマチ(RA)治療は戦略的に行なわれています。日本リウマチ学会(JCR)から2014年に発表された「関節リウマチ診療ガイドライン」で示される治療戦略においては、明確な目標が設定されています。

 

それは、「臨床症状の改善のみならず、関節破壊の抑制を介して長期予後の改善、特に身体機能障害の防止生命予後の改善を目指す」というものです。

 

これを実践するためには4つの戦術が挙げられています。

  • 関節炎を速やかに鎮静化させて寛解に導入し、長期間維持すること
  • 合併症や薬剤副作用の予防や低減、適切な対応をすること
  • 関節破壊に起因する機能障害が発生した際には適切な外科的処置を検討すること
  • 治療方針を患者と情報共有し協働的意思決定を行うこと

 

このようにRA診療上の鍵は、主徴の一つである関節破壊の進行を抑制することが目標となるということです。今日ではRA治療において関節破壊の進行を抑制することができる多くの薬剤(疾患修飾性抗リウマチ薬:DMARDs)が使用可能になっています。これらの薬剤を安全かつ速やかに使用することの必要から、日本リウマチ学会から2014年に「関節リウマチ診療ガイドライン」、2016年に「関節リウマチ治療におけるメトトレキサート(MTX)診療ガイドライン」が発表されています。関節リウマチの患者さんであれば、リウマトレックス®という薬の名前を聞いたことがあると思いますが、これがメトトレキサートです。

 

以下は杉並国際クリニックで使用頻度の高い疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)です。

 

関節リウマチの患者さんは女性が多く、しかも妊娠可能な年代の方が少なくありません。そのため、予め「妊娠や授乳に禁忌とならない抗リウマチ薬をベースにして、アンカードラックのメトトレキサートで補う」という戦略を取っておくことにしました。それよって、いざ結婚準備、挙児希望、という急展開のあったケースの相談にも対応しやすくなってきました。

 

免疫調整薬

サラゾスルファピリジン(SASP):アザルフィジンEN®

 

ガイドラインで強い推奨を受けていますが、わが国の承認用量は海外の半量に限定されています。NSAIDs(註)で十分な効果が得られない場合に使用可となります。

 

なお、サルファ剤・サリチル酸系薬過敏症には禁忌です。

 

 

註:

NSAIDsとは非ステロイド系消炎鎮痛剤で、一般的な「痛み止め」の多くはこれに含まれています。杉並国際クリニックで使用している代表的なNSAIDsは

 

アリール酢酸系(フェニル酢酸系)のジクロフェナクナトリウム:

ボルタレン®

 

プロピオン酸系のロキソプロフェンナトリウム水和物:

ロキソニン®

 

オキシカム系のメロキシカム:

モービック®

 

コキシブ系のセレコキシブ:

セレコックス®

 

消化管障害が少ないのはCOX-2選択性が比較的強いとされるため、モービック®やセレコックス®を使用する症例が増えています。

 

 

免疫調整薬

ブシラミン:

リマチル®

SH基製剤、安全性のため200㎎/日(50㎎錠で4錠)以下の投与が推奨されています。

 

1日3回食後投与が基本であるため、杉並国際クリニックでは150㎎/日(50㎎錠で3錠)から開始しています。なお、血液障害、骨髄機能低下、腎障害では禁忌です。

 

 

 

免疫抑制薬〔代謝拮抗薬(葉酸代謝拮抗薬)〕

メトトレキサート:

リウマトレックス®

ガイドラインで強い推奨を受けている抗リウマチ薬のアンカードラッグ

週に5~6日の休薬が必須(逆に言えば、投与日は週に1もしくは2日)

また、妊婦、授乳婦、肝性肝疾患、活動性結核、骨髄抑制、腎障害、胸水・腹水例では禁忌です。

 

 

今後の候補薬としては

免疫抑制薬〔代謝拮抗薬(プリン拮抗薬)〕

ミゾリビン:

ブレディニン®

 

過去の治療でNSAIDs、抗リウマチ薬の少なくとも1剤により十分な効果が得られない場合のみ使用可能です。

 

妊婦や白血球数3,000/㎜³以下では禁忌で、また生ワクチンは使用できません。

 

 

免疫抑制薬〔代謝拮抗薬(ピリミジン合成阻害薬)〕

レフルノミド:

アラバ®

強力だが間質性肺炎合併では重篤化の恐れがあります。

また、妊婦、授乳婦、肝性肝疾患、活動性結核では禁忌です。

 

リウマチの本格的ガイドラインは、おもに私共のようなリウマチ専門医をおもな利用対象者としたガイドラインです。しかし、実際には専門医向けというより研究者向けであるような印象を受けました。日常診療では、非専門医向けに発表された「関節リウマチ診療ガイドラインJCR2014に基づく一般医向け診療ガイドライン」を十二分に活用することで、ほとんどの場合、対応が可能です。

 

そこで、最近注目されていて、しかも実際的にも有用な新しいツールが2つあります。

 

その一つが、疾患活動性の評価法、もう一つが、関節エコー法による診断です。明日以降、これらを中心にご紹介します。

 

<明日へ続く>