特集:シリーズ『新型コロナウイルス罹患者の体験から学ぼう』症例11:医療従事者 非正規雇用 今も続く不安… ③

6月21日(日)


症例11(その3)

 

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第3節:契約終了 労災申請できない

女性は発症から16日後の3月下旬に感染が確認され、1週間余り入院した。職場との契約は3月末で終了した

 


契約社員なのでその後の契約もなく、次の職場に行くめども立たなくなってしまって、これからの生活をどうしようかなと思ったときに、やっぱり職場で感染したというのが私の中ではありますので、これは労災ではないかと思って、そのあたり補償していただけないかと思って労基署に聞いたんですね。


そしたら「明らかに感染が確認された方、罹患していて陽性確認された方を看護していたとか、そういう方に接触したということがはっきりしないと、今までは労災申請しても認められなかったんです」と言われました。そこで(感染経路を)調べていただけたのかなと思って保健所に問い合わせたんですね。


保健所に尋ねると、感染が分かった時点ですでに2週間以上経過し、職場で発熱した人が確認されなかったとして感染経路が特定されないまま調査が終えられていたという


2週間たっているから(経路調査は行わなくても)いいだろうというような、保健所と勤め先の上司が2人で決めたよう(註:医療機関と保健所との間で、このような内々の決着をつけている、というのはあり得る話です。杉並区やその周辺の複数の医療機関で感染者や発症者が出ていますが、公表されているのは氷山の一角だと思います。「当院では、Covid19感染による発症者はゼロです」と公表できる医療機関はどれほどあるでしょうか。)なんですね。

どちらも相手が言ったと言っているんですけども。

「発熱した人がいないから」と私の上司は(保健所に)言ったようですし、保健所の方は「発熱者がいないならいいです」と(会社に言った)。

どちらも相手のせいにしている(註:誰も責任を取ろうとしない。責任回避というか保身というか、そうした体質が当たり前の国民になってしまったとしたら、麻生副総理のいう民度の高い国民は、どこの国の国民のことか、という疑問が生じます)というかですね。


職場の同僚からは、「課内だけで収めるようにということを言われた」っていう連絡が来ているので。どういうことかな。ひとりひとり、きちんと向き合って、発熱があるかどうか確かめていただけたのか…。


陽性が確認されたときに上司にも濃厚接触者を伝えたんですけど、もう何日かで退社するということで検査してもらえないのかな、軽んじられているのかなという気持ちにもなって、非常に不安な気持ちというか嫌な気持ちになりました。

 

厚生労働省は4月28日になって医療従事者は仕事以外で感染したことが明らかな場合を除いて原則、労災と認める方針を示した。しかし、元の職場が協力してくれず、まだ申請に至っていない

 


発症してからさかのぼって2週間、どなたともお会いしてないんですね、会社以外の方に。(感染の)危険をすごく感じていましたので、自分の親や子どもを遠ざけるような形でひとりで生活するようにしていましたので。

あとは、私が住んでいる地域では、私が(感染)第1号(註:発症者ゼロの岩手県では、あえて「感染第1号者を責めない」と宣言していますが、良くも悪しくも、村八分状態を恐れ、同調圧力に過敏なのが日本人の特性なのかもしれません。)なので、近隣のスーパーには買い物行くんですけどそこで罹患した可能性はかなり低いと思います。


まずPCR検査はすぐしていただかないと、その期間が延びてしまえば延びてしまうほど感染のリスクをみなさんに広げてしまうし、経路をたどるのも難しくなっていきますね。

看護師はやっぱり体調不良の方に接するので、優先的に労災は認めていただきたいなと思います。

 

コメント

この看護師の方の仰ることは至極ごもっともなことです。彼女のような人を真っ先に保護するのが社会正義ではないでしょうか。

「他者のためにリスクを負って奉仕する人びと」を見殺しにするような企業や行政は不要です。

また、このような人々を無視する国民も亡国の民です。ましてや、積極的にバッシング行為を煽る人々は犯罪者に匹敵するのではないでしょうか。

 

<明日へ続く>