6月18日(木)
わかりやすい臨床栄養学(第6版)191頁参照
肝がんの死亡者数は2017年で2万7,114人(国立がん研究センター統計)で、肺、大腸、胃、膵臓に次いで第5位の癌腫です。胃がんと同様に、わが国のがん診療への取り組みが確認できる癌腫であって、肝がんの死亡率は減少傾向です。わが国では原発性癌の90%が肝細胞がんです。
わが国の肝がんの診療および治療には、日本肝臓学会編の「肝癌診療ガイドライン」が広く使用されてきました。なかでも日常診療で最も汎用されるのが「サーベイランス・診断アルゴリズム」と「治療アルゴリズム」です。2017年版からは「肝癌診療ガイドライン」が上梓されました。
肝癌は肝障害を背景として発症することから、根治的に治療が行われた後でも再発率は高率です。肝切除後の再発率は年率10%以上で、5年後に70~80%に達する。
肝細胞癌全症例の累積生存率が3年61.9%、5年46.6%、10年24.7%、
肝切除例では3年75.3%、5年62.8%
局所療法では3年75.0%、5年55.0%
と報告(第20回全国原発性肝癌追跡調査)されています。
肝切除後・RFA後の再発に対する有効な治療法の選択は初回治療と同じく、治療アルゴリズムを適応することが「強い推奨」とされています。
肝癌の検出は「サーベイランス・診断アルゴリズム」に基づいて行われます。
〇 超高危険群(B型肝硬変、C型肝硬変)は、3~4カ月ごとに腫瘍マーカー(保険適応はAFP、AFP-L3、PIVKA-Ⅱ、1カ月に2種類まで)の測定と超音波検査を行い、 6~12カ月ごとにダイナミックCTまたはダイナミックMRI検査を追加します。サーベイランスにはAFPとPIVKA-Ⅱの2種が汎用され、高度に肝細胞癌を疑うときにAFP-L3が使用されています。
〇 高危険群(B型慢性肝炎、C型慢性肝炎、肝硬変)は、6カ月ごとの腫瘍マーカー測定と超音波検査が推奨されています。
古典的細胞癌の診断には、ダイナミックCTが有用であり、動脈相で高吸収域、門脈・平衡相で低吸収域となり、造影剤のウォッシュアウトを認めます。
近年、抗ウイルス新薬による肝炎ウイルスの持続的陰性化(SVR)が得られた後の症例において肝癌発生例が散見されており、このような集団に対するサーベイランスも重要とされています。
肝がんの予防のためには、まず、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスに感染しないことです。このウイルスが発見されていない頃は輸血などで感染することはありましたが、現在はB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスに感染する可能性はほとんどありません。強いていえば血液を介して感染をすることがありますのでB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスに感染している人の歯ブラシやひげ剃りを共有しないでください。最近、肥満や糖尿病の患者さんで肝機能異常を示す非アルコール性脂肪肝炎(NASH)が増えています。このような方から肝癌が発生することもあり注意が必要です。
NASHの予防のためには、自身の体格・体重を確認しましょう。BMI[体重(kg):(身長(m)の2乗)]が25以上になっていないか、ウエスト周囲径が増えていないか(男性85cm以上、女性90cm以上)に注意しましょう。
・血液検査や画像検査を積極的に受けて、ご自身の肝臓の状態をよく知るように心がけましょう。
・食生活を見直しましょう。
1)食べ過ぎに注意し、果糖を多く含む清涼飲料水や缶コーヒー、果物のとり過ぎに注意しましょう。
2)ラードやバターなど動物性の油は飽和脂肪酸が多いので控えるようにしましょう。紅花油、コーン油などリノール酸を多く含む油を使用した揚げものや炒めもの、コレステロールを多く含む卵を使用した料理などもとり過ぎに注意しましょう。トランス脂肪酸を含むマーガリンやショートニングを使用した菓子パンや洋菓子なども避けましょう。
3)多価不飽和脂肪酸を多く含む青魚や、ビタミンEを含む緑黄色野菜を積極的にとるようにしましょう。
・体内の脂肪を燃焼させるため、ウォーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動を週3~4回、30分以上行いましょう。関節に負担をかけない程度の筋肉トレーニングやヨガなどの運動を加えるようにすると、筋肉量が増加して基礎代謝も高まるので、さらに効果的です。
・ダイエットをうたった健康食品やサプリメントなどを安易に長期間使用するのは危険です。使用する場合は前もって医師とよく相談しましょう。健康ドリンクなどもカロリーが高いものがあるので、とり過ぎないように注意が必要です。
出典:
日本消化器病学会 編,日本肝臓学会協力,患者さんとご家族のためのNAFLD/NASHガイド 2016
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