消化管の癌(食道・胃・大腸)の予防:大腸がんの予防

6月17日(水)

わかりやすい臨床栄養学(第6版)190頁参照

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わが国における大腸がんの予測罹患数(2018年「がんの統計’18」)は15万2,100人(男:8万7,200人、女:6万4,900人で、ともに第2位)で、全癌腫の中で第1位です。予測死亡数は5万3,500人で肺癌に次ぐ第2位です。

欧米では大腸がんは消化器癌の中で最も多い癌腫ですが、わが国でも食生活の欧米化などに伴い、罹患率・死亡率はともに増加傾向にあります。わが国では、「大腸癌治療ガイドライン医師用2019年版」が刊行されています。

 

大腸がん全体の5年生存率(大腸癌研究会全国登録「2000~2004年症例」)は72.1%でした。部位別、ステージ別でみると以下のような結果でした。

 

<結腸がん>  <直腸がん>
ステージⅠ:92.3%  90.6%
ステージⅡ:85.4%  83.1%
ステージⅢa:80.4%  73.0%
ステージⅢb:63.8%  53.5%
ステージⅣ:19.9%  14.8%

 

再発率が高いことも特徴であり、術後3年以内に85%以上、術後5年以内に95%以上が出現しました。

 

再発の傾向として、肝転移に比較して肺再発の出現時期は遅く、腹膜転移再発は結腸がんに多く、局所再発と肺再発は直腸がんに多いという結果でした。

 

予防策は

がんの1次予防とは、がんにならないよう日常生活に注意すること、2次予防とは定期的に検診を受けて、早期発見・早期治療して完治させることを言います。

1次予防の柱は食生活の改善と禁煙です。動物性脂肪を減らし食物繊維の多い野菜などをたっぷり摂ることです。赤肉(牛、豚、羊など)や加工肉(ベーコン、ハム、ソーセージなど)の摂取、飲酒、喫煙により大腸がんの発生する危険性が高まります。

 

ヨーグルトなどの乳酸菌は胆汁酸を酸化させる腸内細菌を減らすし、カリウムはニ次胆汁酸と結合して排出させる作用があり、ともに大腸がん予防効果が期待されます。

また、肥満の男性に大腸がんが多いことから、運動による体重コントロールも重要です。体脂肪の過多、腹部の肥満、高身長といった身体的特徴をもつ人で、大腸がんを発生する危険性が高いといわれています。

 

大腸がんはゆっくり進行するので、早期発見できれば100%完治させることが可能です。発症には遺伝的要因もかかわるため、家族の病歴との関わりもあるとされています。

祖父母・両親・兄弟にがん患者いる人や、特に家族性大腸腺腫症やリンチ症候群の家系では、近親者に大腸がんの発生が多くみられます。40代以上の人は必ず検診を受けましょう。

 

日本人を対象とした研究結果では、がん予防には禁煙、節度のある飲酒、バランスのよい食事、身体活動、適正な体形、感染予防が効果的といわれています。大腸がんを予防するには、食物繊維を含む食品の摂取が効果的であることがわかっています。

結腸がんの予防には、運動も効果的です。大腸がんの発生は、生活習慣と関わりがあるとされています。

 

大腸がん予防のキーワードは、「禁煙・食事・運動・検診」です。