特集:シリーズ『新型コロナウイルス罹患者の体験から学ぼう』、症例9:ECMOの治療で回復の男性「重症になるまでが一瞬」②

6月13日(土)

 

症例9(その2)

 

第2節:1週間にわたるECMO治療

 

男性は別の病院に入院後、4月13日に感染が確認された

 

そこからはめちゃ早かったです。すぐ呼吸のやつ(人工呼吸器)を入れられて、気付いたときにはこの病院にいたという。

「両側肺炎」(註:肺炎はほとんどの場合、片側です。最初から両側に急激に発症するのはCovid19肺炎の特徴です。)って言われて、それを調べるために検査をやらなきゃいけないって言われて、そこから3日間ぐらいは意識あったんですけど、もう(その後)2週間ぐらいは意識もなくなる状態までいったんで。

 

(人工呼吸器をつけるときに)いちばん最初に言われたのが、「目が覚めたら生きてるよ、覚めなかったら死んでるよ」っていうふうに言われた(註:このような説明をする医療従事者がいるとは驚きです。これは、患者の精神力が強く、かつ、救命できる可能性が相当程度高いケースでないとできない発言だと思います)。「あ、人間ってこんな感じで死ぬんやな」って思ったですもん。


急速に症状が悪化した男性は4月20日、福岡大学病院救命救急センターに転院。医師によると、肺炎が悪化し、体内に取り込む酸素の量が一般の人の5分の1以下に低下(註:この状態が続いたのは、ごく短時間だったはずです。さもなければ生還しても脳に障害が残るはずです)していた。


肺の機能を一時的に代行するECMOでの治療が続けられた
正直、どんな装置かよく分かっていないんですよね、そこまで。「志村けんさんが使った」っていうぐらいのイメージしかない。なんかあれですよね、血液を体の外に取り出してきれいにしてみたいなのを勝手にやってくれるから肺を休ましてくれるみたいな。


でも扱える先生がめちゃ少ないとは言ってたんで、だから「運がよかったね」って言われて。僕の親からも「ECMOをちゃんと使える人が少ないよ。ここの先生がすごくECMO使えるっていうので、たぶんこっちに移動したんだと思うよ」って言われて。
その先生がいなかったら、もしかしたら死んでたかもしれないし。その可能性はいっぱいあるんで。そこまで重症になるんだなって。重症になるまでが一瞬なんだなっていうのがいちばんびっくり。怖さというか、たぶん一瞬ですよ。一瞬で死ぬまでいってしまう感じはする。


「持病がある」と言われたことはないです。健康というか、人よりでかいんで、健康ではないかなと思うけれども、ただこんなに簡単に悪くなるんだというのは思ってなかったですね。


1週間にわたるECMO装着で、肺の機能は回復。その後、2度の検査で陰性となった
ここの病院に来てからは、昼間は記憶があいまい、なんかまあ起きたり寝たりというのをずっと繰り返してみたいな感覚で、ちゃんと覚えているのは(人工呼吸器の)管が抜けてからですかね。(それまでは)どこが現実なのか、現実じゃないのかがわからない。そこ(人工呼吸器を外して)からは、早かったんじゃないですかね、体調良くなるの。ちょっと微熱が出たり、熱が上がったり下がったりを繰り返して。体調は全然良くなりましたね。

 

<明日ヘ続く>