特集:シリーズ『新型コロナウイルス罹患者の体験から学ぼう』症例8:感染した20代女性「検査を拡げてほしい」 ④

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取材報道<NHK特設サイト 新型コロナウイルス>から学ぶ5症例の研究

症例が増え8症例目に入ります。

新型コロナウイルスに感染したとき、どんな事態に直面するのか。感染した人や家族の話を通して、その一端を知るため、NHKが行ったインタビューの内容をできるかぎり詳細にお伝えします。

以下は、取材記事を下敷きとし、加筆や編集部分は赤もしくは緑文字として区別しました。


第4節:感染を拡げないために

若いからこそ、検査を受けさせてほしいと女性は考えている。

 

私みたいな20代だと特に持病もないので、悪化したりとか呼吸苦が出たりとかはしないんですけど、高齢者とか重症化しちゃうような人たちに、知らないうちに広げるっていう怖さはありますね。

広げるリスクがあるということはかなり危険だと思うので、症状が出ているのであれば検査できるようになったらいいなと思います。

 

特に濃厚接触者がいる場合は、必ず検査した方が広めるリスクは少ないかなって思うので、できれば濃厚接触者から先に検査をしてほしいなと思います。

 

(4月15日取材 社会部 金倫衣)

 

 

コメント:

この報告者は、しかりとした判断力と粘り強い対処行動をとることによって、ようやくPCR検査を受けることができ、その後も責任ある社会人として可能な限り望ましい対応を取りました。

 

20代の女性であることが、検査の機会を得ることについて不利な扱いとなった可能性は否定できません。

一方、保健所の職員も公務員としての基準に則って対応をしなければならないという限界があることは確かです。また、臨床的判断は臨床医の得意とするところですが、それすらも保険診療上は『療養担当規則』という、すこぶる柔軟性の欠如した「掟」があるために、必ずしも柔軟な対応ができるかというと、そうとばかりは言えないところが、わが国の医療現場での大きな悩みなのです。

 

さて、濃厚接触といえば、医療従事者は、その最たるものです。私自身も必要になったときにPCR検査を受けることはほとんどできない、という恐ろしい現実に直面しました。

医療従事者は、見えない敵と武器も持たずに素手で戦っているようなものです。しかも、その相手を避けることすらできません。それは、あたかも「特攻隊」のようでもあります。

 

自殺してしまったニューヨークの女性医師の報せにも胸が痛みました。

善意に満ちて医療従事者を励ましてくださる皆様に対してさえ、

「日の丸を手にして千人針の鉢巻きを渡してくれるモンペ姿の帝国婦人会のように見えてしまった」

と述懐する程、複雑な思いをぬぐいきれない医療従事者もあったことも聴いています。

 

それから、世の中にはどうしても不公平というものがあるようです。TV局の有名キャスターや野球選手はPCR検査を容易に受けることができ、しかも、陽性例では陰性になるまで毎日検査を受けることができるようです。一方で28歳の若い某力士は適切な医療アクセスを受けることができず、惜しくも亡くなりました。

 

高齢者はこうした若者の努力や犠牲によって命が守られてきました。ですから、これからも自重を続ける一方で、今後は、若い人たちのためにできることを一緒に考えていかなければ、と思います。

 

<この項終わり>