特集:シリーズ『新型コロナウイルス罹患者の体験から学ぼう』症例8:感染した20代女性「検査を拡げてほしい」 ① <差し替え版>


取材報道<NHK特設サイト 新型コロナウイルス>から学ぶ5症例の研究

 

症例が増え8症例目に入ります。

新型コロナウイルスに感染したとき、どんな事態に直面するのか。感染した人や家族の話を通して、その一端を知るため、NHKが行ったインタビューの内容をできるかぎり詳細にお伝えします。

以下は、取材記事を下敷きとし、加筆や編集部分は赤もしくは緑文字として区別しました。

症例8:感染した20代女性「検査を拡げてほしい」(その1)

5月9日、13日取材 社会部 山屋智香子

若者にも新型コロナウイルスの感染者が広がる中、「なかなか検査を受けられない」という声が相次いでいます。4月に感染が確認された20代の女性も、もっと検査の対象を広げてほしいと話しています。

第1節:熱はすぐ下がった 数日後さらなる異変が

神奈川県に住む会社員の女性。最初に症状が出たのは4月1日水曜日だった
夜中に発熱(註1)したので次の日に近隣のかかりつけ医に行ったんですけど、コロナの症状が特になく(註2)発熱だけだったので、インフルエンザを疑われてインフルの検査(註3)をしたんですけど、陰性で。おうちに帰ってそのまま経過観察ってなって、熱はその後すぐ下がったんですね。肺炎も呼吸器症状も特になく本当に発熱だけだったので、ふつうのかぜかなって思ってたんですよ。


(註1)夜中に発熱:

夜間に限らず、休日等ですぐに医療機関を受診することが難しいケースは日常茶飯です。今後も新型コロナ感染症が警戒されている間は、夜間・休日対策が重要です。翌日受診する前に自宅でも直ちに実施できるセルフ・メディケーションが必要となってくることでしょう。ここで体温の記載がありませんが、まず検温が大切です。体温計を持っていない方は意外に多いものです。自宅に体温計を確保しておいてください。予めご自分の平熱を知っておくことも大切です。特に低体温の方は要注意です。発熱に気づきにくいだけではなく、例えば平熱が36.0℃程度の方の体温が37.5℃になっていたら、すでに微熱の域を超えていると判断すべきでしょう。杉並国際クリニック推奨のセルフ・メディケーションを励行されている方でしたら、毎日『玉弊風散』を内服されているので、発熱の段階で『地竜』を追加内服されたことでしょう。


(註2)コロナの症状が特になく:

「コロナの症状」とはいったい何でしょうか。4月に感染が確認されたとのことですから、発熱時にはすでに「コロナ」の情報を得ていらしたのではないかと思います。しかし、<「コロナ」には特徴的な初期症状はない>という知識こそが重要であって、いつもと違った体調の変化があった最初の時点で「コロナ」を警戒しておくということが大切な知恵になります。


(註3)インフルの検査:

インフルの検査はかなり普及していてスタンダードになってきています。そこでインフルの迅速検査は全く無意味とまではいいませんが、問題点もいくつかあります。それは、

1)保険で迅速に検査できるなら、自費で予防ワクチンをすることを控える若者が増えていること、これがインフルエンザ流行の一因になっている可能性があること

2)この検査の精度は一般に公表されているほど確かなものではないこと、

3)検査の結果が陰性である場合はむしろ「コロナ」をより疑うべきなのにもかかわらず、患者ばかりか医師まで警戒を緩めてしまいリスクを高めること、

4)検査の結果が陽性の場合に、ゾフルーザ®という単回投与のみの抗インフルエンザ薬を処方されるとむしろ最悪です。この薬の耐性ウイルスの発生が問題になっています。効かないこともあります。それどころか、1回内服したことで良しとして、十分な養生をしないまま、本人も気が付かないうちに周囲にウイルスを拡散させ続けるというリスクがあること、

5)この検査を実施するにあたって担当医は「コロナ患者と同等の注意を払うべきなのですが、現場では必ずしも徹底しにくく、院内感染を広げてしまいかねないこと、などを挙げることができるでしょう。
当クリニックでは、コロナ以前からインフル検査を実施しない方針を頑なに貫き、臨床判断のみで早期治療介入をしてきましたが、大正解でした。やっと、最近になって、いずれの医療機関でも検査を控えるようになってきています。以前、当クリニックの方針に対して「不勉強だ、時代遅れだ」とあからさまに私を非難していた患者さん達は、今頃どのように過ごされていることでしょうか。コロナ・パンデミックを機会に学習してくださっていれば、と願わずにはいられません。

 

仕事を休んで自宅待機をしたが、週明け月曜日、特に症状はなかった
インフルの症状(註4)もなかったので解熱してから2日たっていたし、お仕事行こうと思って。電車に乗ったら気分が悪くなったので、駅で降りてトイレに行ったら、トイレのにおいがしなく(註5)て。持ってた飲み物を飲んでも味がしなく(註6)て、これはまずいなと思って。どうしようって気持ちでした。急に嗅覚と味覚がなくなってしまったので。徐々にではなく。


(註4)インフルの症状:

「コロナの症状」とか、「インフルの症状」と言った言葉に振り回されないことが大切です。スマホ世代にありがちな思い込みと決めつけは命とりになることがあります。コロナも、インフルも「初期においては非特異的症状といって特徴的な症状に乏しい」ということだけをしっかりと受け止めて警戒をおこたらないでいただくことがとても大切です。


(註5)匂いがしない:

嗅覚障害です。これは、必発ではありませんが「コロナ」に特徴的な症状です。この時点で「コロナ」を強く疑ってよいでしょう。嗅覚を司っているのは第1脳神経です。左右12対ある脳神経は解剖学的には末梢神経に分類されていますが、第1脳神経(嗅神経)は第2脳神経(視神経)とともに実質的には中枢神経としての性質をもっています。つまり、「コロナ」は脳を直撃する可能性があるウイルスであるということになります。


(註6)味がしない:

味覚障害です。味覚は嗅覚の助けが大きい感覚であるため、嗅覚障害が発生すると味覚障害を伴いやすくなります。

 

<明日へ続く>