5月27日(水)当クリニックでの循環器診療No3

不整脈診療指針の変遷(なぜ心療内科医が不整脈治療を得意?とするのか)

 

わが国における不整脈患者数は増加しています。その中でも最も多くみられる心房細動の患者数は約170人と推定されています。心房細動は特に加齢とともに増加するとされ、欧米では40歳以上になると4人に1人が心房細動を発症するようです。わが国でも高齢化に伴い患者数は増加傾向にあり、この増加の傾向はさらに続くものと予測されています。

 

不整脈の原因として最も多いのは加齢に伴うもの以外には、ストレス、睡眠不足、疲労、アルコール摂取などです。この他には虚血、心臓弁膜症、高血圧、などを含めた心肺疾患、甲状腺疾患を基礎疾患として起こりやすくなります。

 

不整脈治療の原則は正しい診断、病因・誘因への対応、治療適応への判断、治療目標の設定です。原疾患や誘因がある場合には、まずその治療を行うことが第一歩です。
ところで、以前は速やかに不整脈を完全に消失させることを最大の目標に治療を行っていた時期がありました。しかし、その後の大規模研究の結果、軽症の不整脈に対する長期の抗不整脈薬投与は、かえって新たな不整脈を呼び起こし(催不整脈作用)たり、副作用の出現によって長期予後を悪化されることが知られるに至りました。

 

現在では、患者のQOL改善および長期予後の改善を得ることを優先しています。症状が軽ければ生活習慣の改善などの指導を行うだけで積極的な薬物療法は行いません。ただし、心房細動の管理では、不整脈を抑えること以上に脳梗塞の予防が重要となります。

 

杉並国際クリニックでの不整脈診療は、軽症もしくは心房細動であるケースがほとんどです。

私が最も長期にわたって診させていている方は、80歳の男性です。循環器内科の専門医からの紹介で、すでに30年間のお付き合いです。その方は初診のときにすでに心臓弁膜症による心房細動で、かなり進行した左心不全を伴っていました。

当時の私の予後予測は最大で5年でした。念のため精密検査を依頼した東大の循環器内科でも同じ見立てでした。

しかし、その後の医学の進歩により、新しい治療法でタイミングよく幾多の生命の危機を乗り越えてこられました。

定年を延長して75歳まで仕事を立派に全うできたことは何よりもうれしかったとのことです。彼は現在でも大変お元気です。次は90歳を目指して、毎日充実した日々をお過ごしいただいております。

 

繰り返しますが、不整脈治療の原則は正しい診断、病因・誘因への対応、治療適応への判断、治療目標の設定です。

原疾患や誘因がある場合には、まずその治療を行うことが第一歩です。しかし、明らかな原因がみられず、日常生活を注意深く観察することによって、少しずつ誘因が見えてくることが多いです。その誘因というものは、ご本人の性格や無意識の習慣あるいは嗜好と密接に結びついていることがあります。

 

心療内科の指導医である私にとっても手ごわい病気が3つほどあります。

それは慢性不整脈の患者さんに限った話ではないのですが、慢性疼痛性疾患や呼吸器・循環器などで絶えず生命の危機に怯えてきた方に伴いやすい3つの合併症です。

それは心配・貧乏性、潔癖・完璧症、悋気症の3つの病です。超高齢化、不透明な社会経済情勢を反映しているためか、最近増えてきたのが最後の悋気・我儘症です。

最初の二つは根気強くお付き合いすれば何とかなります。また水氣道®で鍛えればさらによくなります。また、聖楽院に入学していただくことによっても改善を確認しています。

しかし、最後の病気の人は、それを受け入れようとすらしないので、全くお手上げの状態です。やむを得ず、お近くの医療機関へご転出願うこともあります。