5月26日(火)当クリニックでの循環器診療No2

虚血性心疾患は総合的に行なう

 

虚血性心疾患は、おもに冠動脈疾患により心筋の酸素需要に対して供給が不足した際に心筋で「虚血」を生じる病態をいいます。

 

2017年の厚生労働省人口動態統計では心疾患(高血圧を除く)による死亡数は20.5万人で、患者全体の15.3%を占めており、悪性新生物(≒がん)に次ぐ2位です。その中で、急性心筋梗塞は3.5万人、その他の虚血性心疾患は3.5万人と、心疾患の死亡数の中で虚血性心疾患の占める割合は心不全(8.1万人)についで多い数です。

 

虚血性心疾患には、急性冠症候群、安定狭心症、無症候性心筋虚血、陳旧性心筋梗塞が含まれていますが、最近とくに注意しているのは無症候性心筋梗塞です。

これは心筋虚血が生じているにもかかわらず臨床症状としてあらわれないため突然死のリスクが高いからです。

おもに高齢者や糖尿病による神経障害を背景にしています。そのため、すでに陳旧性心筋梗塞を起こしても気が付かないことがあり、とても危うい状況であるといえます。したがって、杉並国際クリニックでは、無症状であっても運動負荷心電図を含めた健康測定を3カ月に1回受けていただくことを推奨し、多くの皆様が計画的に実践されています。

新型コロナウイルス感染症の犠牲者には基礎疾患を持つ方が多いですが、このように、糖尿病と虚血性心疾患には密接な繋がりがあるためハイ・リスクになりやすいことも理解しやすいのではないかと思います。

 

無症候性心筋虚血、陳旧性心筋梗塞では症状が出ないため、おもに二次予防(再発予防)を行います。これは安定狭心症と同様の基準での日常生活管理(禁煙、血圧管理、体重管理、耐糖能障害の是正、脂質異常症の是正、過労や精神ストレスの回避やマネジメント、節酒)が挙げられます。

なお、通常では精神ストレスの回避とされますが、当クリニックでは、むしろストレス・マネジメントを推奨しています。

ストレスの原因をストレッサーといいますが、ストレッサーは回避しようにも回避できない現実が少なくないからです。

回避行動が積み重なってさらに大きな慢性的なストレス要因を育ててしまってはかえって有害だからです。

同じストレッサーに遭遇しても、それをどのように認識し、どのように対処したらよいのか、すなわちストレス・コーピング(ストレス対処法)のスキルをはじめとする心身医学的・心療内科の技法を有効活用していくことが当クリニックでは可能です。

 

心筋虚血は、上記の器質的冠動脈硬化の他に、冠動脈スパズム(冠攣縮)により生じることもあります。

これはわが国を含めたアジア人男性に多いためか、当クリニックでもふつうに診療しています。

この冠攣縮による発作時にはときに心室細動などの致死的不整脈を生じることがあります。他の心臓発作とは異なり、労作・安静と関係なく発作が生じますが、夜間から早朝にかけての時間帯に発作が好発します。

 

外来管理の具体的目標としては、LDLコレステロール値70㎎/dL以下、ヘモグロビンA1c値7.0%未満とします。

日常生活管理や運動耐容能や自覚症状などQOL改善に寄与するものとして心臓リハビリテーションがプログラムされていますが、残念ながら生涯を通して活用することは困難です。

そこで、当クリニックでは独自に水氣道®を開発して積極的な実践を展開しています。