5月24日(日)<シリーズ> 新型コロナ解説:私が推薦する わかりやすいガイダンスNo6

東京歯科大学市川総合病院循環器科の大木先生は、新型コロナウイルスに関して、とてもわかりやすい解説を掲載されています。御経歴からすると私より大分若手であるようですが、見習いたいと思いました。

 

私は、同市内にある昭和学院短期大学の客員教授として10年ほど勤務していたことがあり、この病院の前は数えきれないくらい通過していたのを懐かしく思い出します。

 

『知っておきたい新型コロナウイルス感染症COVID-19』

 

【新型コロナウイルス感染症重症化】

ウイルス性肺炎は新型コロナウイルスに限らず、細菌性肺炎や誤嚥性肺炎と異なり、今のところ特効薬がありません。

感染が持続するとは肺機能が低下して体内へ酸素の取り込みができなくなり、低酸素血症を生じ、重篤化すると酸欠のため死亡します。

新型コロナウイルス肺炎では低酸素血症の程度が重症度と言って良いでしょう。

 

空気中には約21%の酸素が存在して、普段ヒトはそれを吸って生きていますが、21%の酸素では足りなくなると、鼻に付けたカヌラというものから高濃度の酸素を補充します。

それでも足りなくなると酸素マスクにすると、より高濃度の酸素が補充できます。それでも足りなくなると人工呼吸器を装着します。

人工呼吸器は口から気管に直径7㎜ほどの太い管を挿入し、管を通して肺に圧力をかけて酸素を投与することで、高率的に肺に高濃度酸素を送り込むことができますが、通常気管に管を入れていることに人は耐えられません。

そこで麻酔薬を使って眠った状態にしておきます。人工呼吸器装着には気管に管を挿入する技術、人工呼吸器装置の取り扱い、麻酔薬の調整など、一気に人手が必要になります。人工呼吸器で100%の酸素を与えても低酸素となってしまう場合、もはや肺には酸素を取り込む能力がなくなったと判断され、人工肺を装着します。

太い血管に管を入れて血液を吸い出し、人工肺にその血液を通して血中酸素濃度を上昇させ、もう一本太い血管に入れられた管を通して体内に戻します。

人工肺(ECMO)の取り扱いは人工呼吸器より遙かに高度で、専門的技能を必要とします。

重症化は多くの症例で非常に早く、朝は酸素不要であったのに、夕方には人工肺が必要となる人もいます。

一般に高齢者や持病がある人は重症化しやすい傾向にあると言われています。

免疫力、体力が低下していると重症化する可能性があるという意味ですが、重症化した人は免疫力、体力が低下しているため自然治癒する力が低く、必然的に死亡率が高いということになります。

若くて体力があっても、ウイルスの抵抗力がない人は治癒力が低く、重篤化します。高血圧や糖尿病といった生活習慣病の方は、健常な方と重症化のリスクはほとんど変わりないと推察されますが、狭心症、心筋梗塞、不整脈といった心疾患をお持ちの方は重症化のリスクが高く、重症化すると死亡率が高いことになります。感染しないことが最大のリスク軽減の方策です。
  

 

コメント:

新型コロナウイルスに感染して入院した場合、現状では、症状が落ち着いてからPCR検査で2回続けて「陰性」と判定されないと退院できません。自宅やホテルでの療養者や、患者の濃厚接触者は、原則2週間の待機が求められます。

ウイルスの診断は、元来、綿棒でのどをぬぐってとった液体などからウイルスを分離して確認していました。

細胞を培養中のフラスコ内に、ウイルスが含まれていると思われる検体を加え、細胞が変化するのを顕微鏡で観察します。

煩雑なので、簡便なPCR法がとって代わりましたが、感染力がある生きたウイルスがいるかどうかは、この方法に頼らなければなりません。

PCR法では、感染力のない死んだウイルスも併せて検出されるので、感染する力があるかどうかは、ウイルスの分離培養の結果を待たなければなりません。

 

<明日へ続く>