東京歯科大学市川総合病院循環器科の大木先生は、新型コロナウイルスに関して、とてもわかりやすい解説を掲載されています。御経歴からすると私より大分若手であるようですが、見習いたいと思いました。
私は、同市内にある昭和学院短期大学の客員教授として10年ほど勤務していたことがあり、この病院の前は数えきれないくらい通過していたのを懐かしく思い出します。
『知っておきたい新型コロナウイルス感染症COVID-19』
【新型コロナウイルス感染症の症状】
不顕性感染の患者さんが多い一方、発熱、倦怠感、咳、および味覚や嗅覚の低下などの症状を有した顕性患者さんも相当数います。症状は人によってさまざまで、微熱が数日続く人から38℃以上の発熱が1週間も続く人まで、喉が痛くなる人がいたり、咳がひどい人がいたりと、おおむねいわゆる風邪の症状に近いものです。
新型コロナウイルス感染症特有の症状というものはなく、風邪かなと思われて感染に気づかない患者さんを多くしている一つの原因となっています。顕性感染と不顕性感染の割合はわかっていませんが、偶発的に発見される不顕性感染が報告されていることから、全体に対する不顕性感染の割合はかなり多いことが想像されます。
顕性となるのは全体の1割程度、9割、あるいはそれ以上が不顕性である可能性さえあるのです。更に、潜伏期間がどのくらいかもわかっていません。潜伏期間とは、ウイルスが体内に入った時から何らかの症状が出現するまでの時間のことですが、何の症状も出現しない不顕性感染者が多数いる以上、統計さえ取るのは困難です。一説には潜伏期は2週間、あるいはそれ以上とも言われています。
潜伏期間中でも人にうつしてしまうことがあるとも言われていますが、潜伏期なのか、不顕性感染なのかわからないので、それも正しいことはわかりません。正確なことは研究の結果、数年後に判明します。厚生労働省から発表される患者数は顕性患者数ですから、不顕性患者さんはその数倍いて、潜伏期間の患者さんを含めると、全体の感染者数は発表数の数十倍なのかも知れません。
こうしたことが新型コロナウイルス感染症への対応策を難しくさせ、先進国であっても油断をするとパンデミックを生じてしまうのです。現在までの報告から推察すると、症状のある人では潜伏期は平均5日間ほどかと思われます。ウイルスが体内に入ってから約5日で何らかの症状が出現し、風邪かな、と思って医療機関を受診し、その後数日様子を見ているうちに肺炎などを発症し、そこで検査を受けて1〜2日で陽性と判断されているようです。
<参考情報>
WEB医事新報:
インフルエンザの不顕性感染者が感染源となる頻度
No.4715 (2014年09月06日発行) P.66
回答者:高橋和郎 (大阪府立公衆衛生研究所副所長・感染症部長)
Q「不顕性感染のインフルエンザは,ほかの人への感染源となりうるか。」という岩手県の医師からの疑問(2014年)は私も同様に懸念していることです。以下は、その回答の結論部分の抜粋ですが、質問者の懸念はご尤もであり、回答者の考え方も変化してきている可能性があります。
A(抜粋)「インフルエンザ患者からエアロゾルを介した空気感染により感受性者にウイルスが伝播することは可能と考えられる。ただし,不顕性感染者からの感染の成立に関しては,呼気により排出された少量のウイルスがいつまで空気中で活性を保っていられるのかという点も考える必要がある。不顕性感染者がウイルスの高排出者であり,乾燥した環境下で,免疫力の低い感受性者が家族内のように比較的長時間,近距離で接触するような,特別な条件を備えた場合には感染が成立する可能性は否定できないが,現実的には感染が成立する場合は稀であると推測される。この点についてはインフルエンザの公衆衛生上の感染防止対策を考える上で重要であり,今後解決すべき研究課題である。」
<コメント>
例年、インフルエンザワクチンの接種時期になると、「私は罹患したことが無いので」という理由で拒否される方が少なからずいらっしゃいます。
不顕性感染者による感染拡大のリスクは、新型コロナウイルスに限らずインフルエンザでもすでに観察されていました。
ただ、インフルエンザの検査キットで陰性の結果が出たことを理由として油断してしまい、他者への感染を広げてしまう方々も少なくないことでしょう。
少なくとも、自分の利益ばかりでなく、家族や同僚その他、関わりのある多くの人々のためにワクチンを接種するのは社会的マナーとして認識していただきたいと思います。それがひいては新型コロナの社会的問題の早期解決にも役立つものと考えています。
<明日へ続く>
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