5月22日(金)特集:シリーズ『新型コロナウイルスから学ぼう」症例5:ガラス越しに 夫にトランシーバーで呼びかけた ➂



取材報道<NHK特設サイト 新型コロナウイルス>から学ぶ5症例の研究

症例が増え、5症例目となりました。


新型コロナウイルスに感染したとき、どんな事態に直面するのか。感染した人や家族の話を通して、その一端を知るため、NHKが行ったインタビューの内容をできるかぎり詳細にお伝えします。


以下は、取材記事を下敷きとし、加筆や編集部分は緑文字として区別しました。

症例5:ガラス越しに 夫にトランシーバーで呼びかけた

4月7日取材 社会部 山屋智香子

新型コロナウイルスに感染したとき、どんな事態に直面するのか。関東地方に住む50代の男性は新型コロナウイルスに感染し一時、重篤となりました。妻が、夫の発症から治療、そして感染者の家族だからこそ思うことを語りました。

 

症例5(その3)


第3節:検査を受けるために病院に行った夫は即入院となった 

 

入院したときに本人の肺の写真を見せられたんですけど、前の日に近所の内科で撮った肺の写真と比べると、ちょっと進行している、このスピードで進行していくとかなりよろしくないと(医師の判断通りだと思われます)

でもなんだか私は実感がわかなくて。写真を見せられても本人のものなのかな(素人目にも明らかな変化?ならば要注意‼)って、半信半疑というか。

そんなに悪くなっているように見えなかった(自覚症状の変化よりも画像の変化の方が明かなことが多いです!)から、私は。そのときは本人は普通にできているし、苦しくない(毎日のようにジム通いして鍛えている人は、心肺機能にも予備力があるために、かえって気づきにくいことが考えられます。水氣道®のように運動機能だけでなく感覚機能を養うエクササイズであれば、異変に気付きやすくなり、早期の対応が可能になります。)って言っていて。


でも先生たちは「大変だ大変だ」と。「酸素の値(動脈血中酸素分圧濃度:パルスオキシメータ―での酸素分圧%値だと思われます)がこれ以上下がると危ないです」と言うけど、本人は苦しそうにしてない(急性ではありますが、発症から約1週間かけて徐々に身体が低酸素状態に慣れていくと、呼吸不全状態であっても苦しさを感じないこともあるので要注意です)から、なんかちょっと違う人の写真を見せられているんじゃないかという気持ちはありました。


それが入院した初日の夜中に病院から電話があって、「酸素の値がよくないので、ICUに移していいですか」と言われたんです。それからは、あれよあれよという間に悪くなっていってしまった。


ICUに移った直後に陽性と分かり(この事実は、PCR検査は早期に実施しない限り、結果が判明しても個人の治療には役立たないことの証左の一例です。感染拡大を防ぐ意味や、行政判断のための資料には役立つことでしょう。)、別の病院に転院させるという連絡が入る。妻も濃厚接触者として自宅待機となった


「こちらの病院では新型コロナウイルスに感染した重症患者を診られないので、重症患者を診られる病院に搬送します」と。「人工呼吸器は本来は付けないんですが、向こうの病院から『挿管してきてください』と言われているんで挿管します。ただ、その際は意識が飛びますんで」と言われたんですよ。


転院する前に本人とちょっとだけ電話ができて、「挿管するらしいよ、意識が飛ぶらしいよ」と言ったら「そのほうが楽だからいい」って言って。夫は「ごめんね。かかっちゃった」って。ごめんねなんて言わなくていいのにと思うけど。「気をしっかり持って、早く帰ってきてね」って話しました。それが最後の会話です。


運ばれた先の病院名は聞きましたけど、いつ運ばれてどんな状態なのか全くわからなくて。無事に行ったのかなと思いながらいたら、入浴中に留守電が入っていて「留守電には内容は残せません。また電話します」ということばだけあって、先生のお名前を入れてくださっていたので、夜中の12時すぎで申し訳ないなと思ったんですが電話してつないでもらって、転院できたことがわかったんです。


病状の確認などこちらから電話してもいいかと聞いたら、「ばたばたしていることもあるので、何かあればこちらから電話します」ということで、定期的にお電話いただくことになったんですが、かかってくる電話は悪い電話しかなくて。「よくないんです」って。たいてい「よくないんです」「横ばいです」って言われる。「よくないからこの処置をしたいのですがいいですか」という確認の電話が多かった。

 


第4節:見えないところで進む治療 

自宅から出ることができないなか、夫の症状は悪化する。次々に行われる治療の話を電話で聞き続けるしかなかった
「治療法がまだ確立されていなくて、医療業界でもまだ手探り状態だ(その通りです。だから、初期から適切で安全な漢方薬治療を導入すべきなのです。重症化するまで放置された挙句、副作用が大きく有効性の確立が高くない薬で実験されるのはたまったものではありません。)」と。

「なので、あちらこちらで試されているものを試してみたりはします。中国で試されているHIVの薬(中国には、多くの疫病の歴史と共に永年にわたって培われてきた中医薬があります)を投与することもします」と言われて、投与するときもお電話をいただきました。ただ、効果があるかもわからないし、逆に他の機能を弱めることもあり得ると。わりと最初の頃から「最悪の事態もありえます」と言われていて、それは入院したときから言われているんですよね。


薬を投与した翌週くらいに「気管切開したい」と言われたんですね。「切開したほうが楽になるので」と言われて、今度はその翌日に、「やはり状態がよくない。このままだと命を救う自信がわれわれもありません」と。なので「人工心肺をつけさせてください」と。ECMOですね。「治療ではなくて、ご自身の肺を休ませるためのものです。首と股のところに小指くらいのチューブを入れます。この病院は経験があるので大丈夫です。ただ何かしら支障が出ることもあります」と言われました。


本当は私はECMOは嫌だった(よくわかります。医者だって本当は嫌なのですから)。ECMOを自分なりに調べると、すごいたいそうな機械で、血液を外に出して中に戻すなんて、あんなものをつけると聞いて、かなりショックでした。でも私は医者ではないので、プロに任せるしかないので結局お任せしましたけど、その段階まで行っちゃったというのはショックでした。


2週間の自宅待機が終わり、3月中旬、初めて面会が許された
陰圧室のガラス張りの中に主人が入っていますので、面会できてもそこの外からで、コミュニケーションがとれるかどうかわかりませんと、もともと言われていました。鎮静剤で全く寝たままでしたが、生きててよかったなと思いましたね。


ただ、面会の前の日に担当の先生から「ECMOをつけている弊害でばい菌が体に入って(ばい菌というのは素人に説明する一般用語ですが、細菌だけでなく新型コロナウイルス自体がすでに体に入っているためECMOのせいだけではない可能性があります)、熱も出てきて出血しています(敗血症といい、重篤なショック状態に至ることが危惧される状態です。免疫力が低下した状態では敗血症が生じやすくなります。そして敗血症になるとDIC=播種性血管内凝固を来し、出血傾向を来します。)」と聞いていて、私はその出血が大したものではないと思っていたのですが、結構な出血だったようで、面会に行ったら「血が止まらなくて止血剤を入れていたけれど、それでも止まらないのECMOを抜くことにしました」と言われて、ショックでした。

 

<明日へ続く>