5月18日(月)特集:シリーズ『新型コロナウイルス罹患者の体験から学ぼう』症例4:集団感染 それから起きたこと ③

取材報道<NHK特設サイト 新型コロナウイルス>から学ぶ4症例の研究

 

新型コロナウイルスに感染したとき、どんな事態に直面するのか。感染した人や家族の話を通して、その一端を知るため、NHKが行ったインタビューの内容をできるかぎり詳細にお伝えします。

 

以下は、取材記事を下敷きとし、加筆や編集部分は緑文字として区別しました。

症例4:集団感染 それから起きたこと

 

4月2日取材 北見放送局 関口祥子

新型コロナウイルスに感染したとき、どんな事態に直面するのか。集団感染が起きた北海道北見市の展示会に参加していた60代の男性。激しい症状とのたたかいや感染後の苦境を明かしました。

 

症例4(その3)

 

第3節:「あなたコロナの肺炎になってる」 

展示会の参加者に感染者がいたことを知り、男性はすぐに保健所に電話をした。しかし検査をしてもらえたのは3日後(今では5日以上待たされるようです)。感染確認は発症から10日後(発症後10日に判明したことはラッキーでした)だった


コロナと確信持ったときは、うつるんじゃないかって。保健所への電話でも、なんとかしてくれって懇願しました。自分を早く検査してくれって。

ここ(自宅)からいなくなりたいって。だって一家全滅したら大変(その通りです。5人以上の家族が同居していたとしたら、家庭クラスター発生の可能性もありました)でしょ。

とにかく家族にうつったら大変(<戦略2:『自分を守る最良の方法は、同居の家族を守ることである』ことを理解する>)
だって、ものすごく不安でした。


あれは28日、保健所から電話来て「○○病院の発熱外来行きなさい」って。26日に「病院紹介する」って言われて、なしのつぶてだったんだけど。

 

救急車が入るところの横っちょで血をとられて「待ってなさい」って言われて。そのあと「血液から炎症反応(おそらく、赤沈、CRP=C反応性タンパク、白血球数等の検査)出てるから、別の病院で診察受けなさい」って。

それで別の病院に行ってCTスキャン受けた(北海道の北見市の方が、東京都内よりすぐれた対応を迅速に手際の良い連携プレーで実施できていることに驚かされます!)後、ドクターがバタバタって走って入って来て、ドアをがらっと開けて、「あなたコロナの肺炎になってる」って。


そのときショックを受けました。がーんと頭痛くなって(精神的ショックを受けて頭痛を来すことは、典型的な心身相関の一例です)。疑ってはいたけど、肺炎になってると思ってなかった(予め可能性を疑っていた分だけ、精神的ショックが緩和された可能性があります。まったくの想定外の事態に急激に曝されることによって病状が急激に悪化してしまうことがあります。そして新型コロナに対する医療において、最も遅れている要素の一つは精神的ケアだと思います。私は「精神感染症学」という臨床分野の確立が必要だと考えています。)


「このまま家に帰ったら呼吸不全を起こすかもしれない」(的確な判断です!)と告げられ、男性は北見市外の病院に救急搬送された(とてもラッキーでした‼)


「とにかく今悪いところを探しましょう。コロナ菌(念のためですが、医学の専門家の間では、ウイルスと「菌」を明確に区別しているため、コロナウイルスとはいっても、決してコロナ菌とはいいません)を追い出しましょう(これも、分かりやすく提示していますが、このウイルスを体外に追い出すことは不可能です。)」って。


写真見ると、大腸がばんばんに腫れてる(急性ウイルス性大腸炎を起こして、大腸粘膜に激しい浮腫を来していた可能性が疑われます)のさ。

まず下痢を止めようってなって、点滴に栄養剤入れてもらって、丸2日くらい絶食(消化管の安静のために望ましい対処法です!)したんですよ。

全く口から入れないで、水くらい。それが功を奏して、かなり腸炎のほうが改善されたと。レントゲン見せてもらったら、少しずつ腸が元に戻ってますよって。肺炎のほうもよくなってる(大腸と肺は現代西洋医学では独立して扱っていますが、中医学・漢方では、蔵<臓>としての肺と腑<はらわた>としての大腸は互いに相関するものとして理解されています。だから、肺と大腸の両方を同時に整える生薬処方も考案されていて無理なく良く効くのです!)よって言ってくれた。


絶食終わってからは五分がゆ。体力つけてコロナを体から出すんだって、とにかく食べました。熱が下がったのは3月3日。熱上がるたびに解熱剤(解熱剤の反復内服は、この方のように実証タイプで相当に体力やスタミナがある人でないと危険であることを指摘しておきます。)飲んでさ。

部屋には毛布が1枚しかないから看護師さんに頼んでもう1枚持ってきてもらって。解熱剤飲むと汗かくのさ、だーっと。それが怖いのさ。


熱が上がる、薬飲む、汗かくの繰り返し。あとはけん怠感が強い。熱が下がってもけん怠感が強く(この方が、もし虚証タイプであったならば体力や抵抗力を消耗し、肺炎を増悪させ、敗血症性ショックとなり、命の危険すら招きかねなかったかもしれません。)て、眠い。寝て過ごしていたような感じ。だから不精ひげがぼーぼーでした。

 

いやもう自分は暇持てあまして、詠んだんだ、一句。「陰性となる身は天に舞い上がり」。わはは。へたくそなんですよ。不安打ち消すために、一生懸命考えて、詠んで、直してまた詠んでっていうのを支えにやってました(大変すばらしい養生姿勢です。まさに俳人の正岡子規の現代版です。芸術とユーモアは希望と生きていることの意味を与えてくれるので、確かに、不安や恐怖を克服する力を与えてくれます。未曽有の極限状況にあってユーモアが生命力を支えてくれることを、この方は認識していて実際に体験されたようです。実存分析のフランクル博士にも通じる境地ではないでしょうか!)

 

<明日へ続く>