5月12日(火)胆道癌と膵癌:胆道がんNo2

胆道癌を疑った場合の検査手順(第1・第2段階)

 

「胆道癌診療ガイドライン第3版(2019)」によると、胆道がんの検査手順としては3段階が提示されています。

 

第1段階

まずは、1)血液検査と2)腹部超音波検査を行います。

 

1)血液検査では、おもに肝胆道系酵素の上昇が認められます。
その際に、腫瘍マーカーとしてCEAやCA19-9が用いられます。

 

2)超音波検査では、胆管がん、十二指腸乳頭部がんは腫瘍そのものの描出が困難なことが多いです。その場合でも、腫瘍による上流側胆管拡張を捉えることが重要です。
  

これに対して、胆嚢がんは超音波検査による描出率が高いため有用性が高いです。ただし、胆嚢結石により胆嚢壁の観察が困難な場合もあります。その場合は別の方法での検査が必要になります。

 

 

杉並国際クリニックでは、この第1段階までの検査を実施することができます。

 

1)血液検査で、確認すべき肝胆道系酵素の項目は、肝臓関連酵素(ALT、AST)、胆道系酵素(ALP、γ-GTP)ですが、黄疸を来している場合には総ビリルビン(とくに直接ビリルビン)は必須です。腫瘍マーカーはCA19-9の方がより重要ですが、いずれにしても初期では変化が乏しく癌が進行しないと上昇しません。閉塞性黄疸を来していない限り、これらの検査所見が明かでないことが多いことが課題だと考えます。

 

2) 超音波検査が力を発揮するのは胆嚢がんの診断です。胆嚢壁の不均一な肥厚や辺縁不整な腫瘤が形成されていないかどうかを確認します。胆管がんでは、胆管の拡張や閉塞部が同定を目的としますが技術的にはもっとも難しいです。乳頭部がんの場合は胆管が拡張するだけでなく、胆嚢が顕著に腫大すれば発見しやすいです。

 

 

第2段階
この段階では、1)CTや2)MRIが行われます。

 

1) CTは多列検出器CT(MDCT)によるダイナミック・スタディという検査法が特に有用性が高く、薄いスライスで撮影し、他断面再構成画像を構築することが強く推奨されています。詳細なCT画像により、腫瘍の局在をはじめ進展度診断、癌の脈管や他の臓器への浸潤の評価も可能で、手術切除を検討するうえでCTの果たす役割はとても大きいといえます。

 

2) MRI(MRCP)は非侵襲的に胆管の描出が可能です。胆管狭窄の評価や拡散強調画像による病変の質的診断、リンパ節転移の評価に有用(推奨度2)とされています。

 

 

ガイドラインでは以上のように推奨されています。

しかし、胆道癌症例では3)内視鏡的胆管膵管造影(ERCP)を行える施設であれば、必ずしも2)MRI(MRCP)は必須でないようです。

閉塞性黄疸を来している場合には、胆道ドレナージという黄疸を改善するために胆汁の流を改善させる治療を行います。

その治療ではカテーテルを使用するため、胆管壁が影響を受けて、胆道壁の進展度診断が困難となってしまいます。

そのため、胆道ドレナージを実施する場合には、事前にCT、MRIとともに3)ERCPを行っておくことが望ましいでしょう。

また、十二指腸乳頭部癌が疑われる場合には、CT、MRIに加えて4)上部消化管内視鏡検査を行い、腫瘍が疑われた場合には5)生検を行います。これらの検査は、第3段階での検査に含まれます。

 

ガイドラインは有用であり尊重すべきですが、個々の症例においては必ずしもベストな指針ではないこともある、ということです。

 

(明日に続く)