5月11日(月)胆道癌と膵癌:胆道がんNo1

胆道がんを疑うまで

 

胆道がんと膵臓がんは、発見することが難しいがんです。しかし、少しでも早期発見・早期治療に結び付けていくための工夫と努力は、日常診療においても必要です。

 

胆道がんとは、胆管がん(肝門部領域胆管がん、遠位胆管がん)、胆嚢がん、十二指腸乳頭部がんを含めた総称です。

 

国立がん研究センターの最新がん統計によれば、日本における2016年の胆嚢・胆管がんの罹患数は男性11,641人、女性10,699人で、それぞれ全体の2.1%、2.9%を占めます。

2017年の胆嚢・胆管がん死亡数は男性9,237人(部位別8位)、女性は8,942人(部位別7位)です。

 

胆道癌領域では、その疾患自体の希少性からレベルの高いエビデンスが少ないのが現状です。そのため、実際の診療は施設間格差があります。

 

わが国における「胆道癌診療ガイドライン」は2007年に初版が出版されて以来、2019年に第3版が出版されました。本ガイドラインは臨床質疑形式で、これに対する推奨、その推奨度、推奨に至る過程が解説されています。杉並国際クリニックでも、2019年の最新のガイドラインに基づいて、少しでも胆道癌の早期発見に努めたいと考えます。

 

胆道癌の診断で手掛かりになるのは、ガイドラインに提示されている「胆道癌診断のアルゴリズム」です。

 

まず、胆道癌の存在を疑うことから始めます。その対象は、ハイリスク症例です。胆道癌になりやすい患者さんを選別し、臨床症状を確認することになります。

 

胆道癌の危険因子は、膵・胆管合流異常原発性硬化性胆管炎が挙げられます。とくに、胆嚢がんでは膵・胆管合流異常が挙げられますが、十二指腸乳頭部がんの危険因子は不明です。しかも、膵・胆管合流異常では発見困難な胆道非拡張型が主であるなど、危険因子であるこれらの疾患の存在を確認することは実際上、容易ではありません。そこで、頼りになるのは臨床症状ということになります。

 

胆道がんを疑う臨床症状として、ガイドラインは、黄疸、右上腹部痛、体重減少などが挙げています。しかし、実際の日常診療での客観的所見は、黄疸が最も明らかすが、体重減少は胆嚢がんではその傾向がありますが、その他の胆道癌では、癌が相当進行しない限り、明かな体重減少は認めません。したがって、疸の原因が癌であるとするならば、ほとんどが進行がんであることを覚悟して診療の手続きを踏んでいかなければならないと考えます。

 

また、自覚症状として、胆管閉塞では、黄疸がなくとも痒みが先行することもあり、しつこい痒みを訴える患者さんに対して、胆道系の検査を行うことで胆道癌の早期発見に繋がることがあると考えます。

 

ただし、胆嚢がんの場合は、胆石や胆嚢炎が合併すれば、疼痛を呈することによって、初期段階で発見できた経験があります。その症例は紹介先の病院で胆嚢摘出術のみで完治できました。

 

(明日に続く)