5月9日(土)特集:シリーズ『新型コロナウイルス罹患者の体験から学ぼう』症例3:結婚記念日のクルーズ船旅行が… 夫を失った妻が語る1か月半 ④

特集:シリーズ『新型コロナウイルス罹患者の体験から学ぼう』

取材報道<NHK特設サイト 新型コロナウイルス>から学ぶ4症例の研究


新型コロナウイルスに感染したとき、どんな事態に直面するのか。感染した人や家族の話を通して、その一端を知るため、NHKが行ったインタビューの内容をできるかぎり詳細にお伝えします。

 

以下は、取材記事を下敷きとし、加筆や編集部分は赤い文字として区別しました。

症例3:結婚記念日のクルーズ船旅行が… 夫を失った妻が語る1か月半

 

4月4日取材 社会部 山屋智香子

集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に乗船して夫婦ともに感染。夫は発症から1か月半で亡くなりました。妻は「夫の死を無駄にしたくない」と感染症特有の怖さと無念さを明かしました。初めて語ったという経験をできるだけ詳細にお伝えするため、インタビューを一部整理した上で紹介します。

 

症例3(その4)

第4節:電話で知らされる容体 悪化の一途

妻も感染が確認され、夫とは遠く離れた病院に搬送された。電話で医師から容体を聞くことしかできない日々が続いた

 

2月24日に病院から電話があって、そのときはもう自律呼吸が止まっちゃったと言われたのよ。
 

その前に ECMOを使う、というふうに言われてそれを夫の兄がOKしたということは聞いたけれども、体外循環装置って普通に言われて分かる? 分かんないでしょう、どういうことなのか。
 

その時はすごくショックでしたね。その前にECMOをつける、そのあとで自律呼吸が止まっちゃったっていうことは自分で呼吸ができないわけだから。

もうどうしようもなくて、私は身動きがとれないわけでしょ。その時に本当に寄り添ってくれたのは病院の看護師たちで。そばに来て背中をなでてくれたりとか、体硬くしてるから「こういう時って肩が凝るんですよね」なんて言って肩もんでくれたりとか。

そういうふうにしてもらったのは本当に慰めになりましたね。うん。「人ってやっぱり人のぬくもりが欲しいんだ」って、そう思ったのね。

解説:エクモ(ECMO:Extracorporeal membrane oxygenation)とは?Extracorporeal=Extra(外部の)+corporeal(身体の)⇒体外の、membrane=膜、膜型
oxygenation=oxygen(酸素)+~ation(~化する装置)⇒酸素化装置
これらをまとめて直訳すると、体外膜型酸素化装置、となります。
これではわかりづらいため、『体外式膜型人工肺』、と呼ばれています。


(ECMO)は急性重症呼吸不全患者に対して,① 従来の人工呼吸管理では生命が維持できなくなった時点,または ② 従来の人工呼吸管理を続けた場合に,自己肺に不可逆的な障害をこうむるおそれがある時点で適応となります。

しかし,実際にはその導入を決めることは容易なことではありません。なぜなら, ❶ ECMOは多大な費用を消耗し,❷ 多くのスタッフの労力を必要とするからです。


2009年のH1N1インフルエンザに対して用いられたECMOの成績では,日本は他の先進国と比べて劣っていたと報告されました。その原因としては,1)専門スタッフの欠如,2)適切な機材の欠如,3)患者の集約化がなされていないことがあげられていました。