5月8日(金)特集:シリーズ『新型コロナウイルス罹患者の体験から学ぼう』症例3:結婚記念日のクルーズ船旅行が… 夫を失った妻が語る1か月半③

取材報道<NHK特設サイト 新型コロナウイルス>から学ぶ4症例の研究

 

新型コロナウイルスに感染したとき、どんな事態に直面するのか。感染した人や家族の話を通して、その一端を知るため、NHKが行ったインタビューの内容をできるかぎり詳細にお伝えします。

 

以下は、取材記事を下敷きとし、加筆や編集部分は赤い文字として区別しました。

 

症例3:結婚記念日のクルーズ船旅行が… 夫を失った妻が語る1か月半

 

4月4日取材 社会部 山屋智香子
集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に乗船して夫婦ともに感染。夫は発症から1か月半で亡くなりました。妻は「夫の死を無駄にしたくない」と感染症特有の怖さと無念さを明かしました。初めて語ったという経験をできるだけ詳細にお伝えするため、インタビューを一部整理した上で紹介します。

 

症例3(その3)

第3節:緊急搬送 夫と離ればなれに

夫の熱は下がらないまま、2月10日、緊急搬送されることになった。まだ検査の結果は出ておらず、妻は当然、治って帰ってくるつもりで夫を送り出した

 

2月10日13時40分にふたりのお医者さんが来て下さって【指先で酸素濃度】(正式名称は動脈血酸素分圧濃度測定器です。通称ではパルスオキシメーターです。杉並国際クリニックでは、日常診療で測定していますので患者の皆様は良くご存じのことでしょう。)を測って、その時にお医者さんたちの顔色が変わった。

何か、はっという感じ。表情が一変したのが分かったんですよ。

これ容易じゃないなと思って。14時10分に「緊急搬送しますからすぐに支度して下さい」って言われたんですよ。

もちろんそのまま出しちゃっていいんだろうけれども、彼が退院する時に困らないようにと思ってお洋服と靴の1式を持たせて、それで送り出したんですよ。

それで、14時40分ぐらいに担架に乗せられて運ばれて、それを私は廊下で見送るしかなくて。廊下に出ちゃいけないの。廊下に出ると見張りが立っていて「中入れ、中入れ」ってすごいから。

 

それで16時26分。彼から電話が入った。病院に着いて、「ちょっと大変みたい」っていうことを言って。「お医者さんと替わるね」と言って。それでICUの呼吸器内科の先生と話をしました。

そしたらかなり【重篤で人工呼吸器、それをつけなきゃ駄目】だっていうふうに言われて。でも帰らなくなるなんていうことは想像もしなかった。最後だなんて絶対思ってない。  

人工呼吸器付けて少し楽になるんだったらそれでいいわね、ぐらいしかないですよ。

 

<明日に続く>