4月30日(木)心臓病診療の最前線No4

新型コロナウイルス感染症に関する心不全患者の心構えについての Q&A

 

〇 当クリニックの心臓病患者からの2つの質問

(問1)

国際ウイルス分類委員会(International Committee on Taxonomy of Viruses:ICTV)が2月7日までに、新型コロナウイルスを「SARS-CoV-2」と名付けていました。

しかし、WHOは2月11日に新型コロナウイルスの正式名称を「COVID-19」とすると発表しました。現在では、両方の名称が使われていますが、どちらの方が心臓病へのリスクが大きいのでしょうか。

 

(答)

新型コロナウイルスのウイルス名については、SARS(重症急性呼吸器症候群)を引き起こすウイルス(SARS-CoV)の姉妹種であるとして「SARS-CoV-2」と名付けています。

 

これに対して、「COVID-19」の「CO」は「corona」、「VI」は「virus」、「D」は「disease」の意味となります。これに、コロナウイルス感染症と感染者が報告された2019年を組み合わせたものです。ウイルス名には(SARS-CoV)を、病名には「COVID-19」を用いることになっていますが同じウイルスです。ウイルス名と病名が異なることや、ウイルス名に「SARS」が使われていることついて今後も議論を呼びそうです。

 

 

(問2)

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)はACE2を介して増殖することがわかりました。そして、降圧薬のACE阻害剤やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)はSARS-CoV-2の受け皿であるACE2発現を高めて重度のその感染症COVID-19を生じ易くする恐れがあるとの専門家見解がランセット呼吸器医学誌(Lancet Respiratory Medicin)に最近掲載されました。ACE阻害剤やARB服用を中止してよいですか。

 

(答)

自己判断で中止してはいけません。米国の3学会・HFSA/ACC/AHAの声明では、COVID-19患者は医師からの指示がない限り心不全や高血圧などに対して続けているACE阻害剤やARB服用を中止しないようにとの勧告がありました。

 

杉並国際クリニックでは、降圧薬にACE阻害剤は使用していませんが、ARBは第一選択の一つとして処方しているため、慎重に経過を観察しています。

そして、とくに感染のリスクが高いと判断した方には、他の降圧薬に切り替える方針ですが、幸いにも該当者が出ていません。しかし、いずれにせよ、降圧薬の自己判断による中止は大きな危険を伴いますので、慌てて中止しないようにしてください。