4月14日(火)肝臓病診療のトレンドNo2

C型肝炎の最新治療

 

わが国の慢性肝炎や肝硬変・肝癌の原因のほとんどがウイルス性であり、C型肝炎ウイルス(HCV)によるものは約60%です。

C型慢性肝炎の治療は抗ウイルス薬やインターフェロン(IFN)によるウイルス駆除を目標とし、肝炎の鎮静化や肝硬変の進展、肝がんの抑制を目指してきました。そして最近に至るまでC型肝炎の治療方針は、めまぐるしく変化してきました。

それは、治療の中心がIFNから経口抗ウイルス薬へと移行してきたからです。

とりわけ、さまざまな直接型抗ウイルス薬(DAA)が登場によるものでした。これらのDAA製剤は、C型肝炎ウイルス(HCV)増殖に重要な役割を持つHCV蛋白を直接的に阻害します。

 

DAAを分類すると、NS3/4Aプロテアーゼ阻害薬、NS5A阻害薬、NS5Bポリメラーゼ阻害薬などがあり、これらの経口剤のみによる治療が現在では主流となり、「C型肝炎治療ガイドライン」(2018年、日本肝臓学会)に基づくことが最新の標準治療ということになります。

そして現在のDAA治療は副作用が少なく、高齢者でも高い率で治癒が完遂でき治療効果は極めて高いため、非代償性肝硬変を除くすべてのC型肝炎症例が治療の対象となりました。

ですから、ウイルス排除可能な症例であれば、高齢者であっても抗ウイルス療法の速やかな開始が勧められるようになってきました。

 

さて、C型肝炎に関しては、日常診療や健康診断等で偶発的にC型肝炎感染が発見された場合、どの段階で肝臓専門医に紹介すべきか?という問題が以前からあります。

C型肝炎の治療は一般のクリニックでも実施可能です。しかし、現在、杉並国際クリニックでHCV抗体検査が陽性であることを確認すれば、次にHCV-RNAを測定し、これも陽性である場合には速やかに肝臓専門医へ紹介することにしています。

その理由は、ウイルス性肝炎に対する患者の経済的負担も少ない医療費助成制度があるためです。

 

この助成制度の手続き上、薬剤の選択と申請書の作成は専門医に委ねられるために、肝臓専門医以外の医師は肝臓専門医に紹介することになります。そして、治療によるウイルス消失後も肝がんの発症をモニターすることが極めて重要です。

 

 

杉並国際クリニックからのコメント
 

IFNや抗ウイルス薬治療により著効(ウイルス学的著効)が得られて、持続的なウイルス陰性化 (SVR: Sustained Virological Response)を達成したとしても、C型慢性肝炎罹患者には発癌のみられる例があるため、長期的に経過観察が必要であることを患者に説明する必要があるとされますが、中断例が多く心配です。

 

SVR達成後も年単位で肝線維化は緩徐に改善していくため、常に発癌リスクがあります。そこで、SVR達成後も発癌症例があることから、SVR後のスクリーニング検査について、検査の間隔や方法の選択をどうすべきか?という問題があります。

 

杉並国際クリニックでは、慢性肝炎では、年に最低1~2回、肝硬変では2~3回の腫瘍マーカーを含めた血液検査と画像検査を行います。

画像検査の方法は超音波検査でも問題はないと考えられるので杉並国際クリニックで実施することができます。そして、もしCTや造影MRIで確認する必要があると判断されたら、提携医療機関である東京警察病院等で実施していただくことになります。