4月8日(水)昨今の関節リウマチ診療No3 

身体機能評価および目標達成に向けた治療戦略と寛解基準

 

1)関節リウマチ(RA)患者の身体機能評価については、関節特異的QOL評価法として、HAQ-DIが提案され長く使用されています。これはRA治療のアウトカム評価として、関節破壊評価と共に重要な薬効評価の指標です。

 

これは質問票により調査が可能です。日本語版の質問票としてJ-HAQ身体機能障害指数を使用することができます。

 


2)寛解基準については臨床的寛解の基準も改訂されました。

背景としては、効果が非常に高い生物学的製剤が幅広く使用されるようになり、治療のゴール(目標)が以前より高いレベルに設定されるようになったからです。そこで「関節リウマチの治療目標はまず『臨床的寛解』を達成することである」とされました。

 

臨床的寛解の先には、関節破壊が進行しない「構造的寛解」、更に機能障害が進行しない「機能的寛解」といった、より高レベルの寛解があります。

 

従来は、欧州リウマチ学会が提唱した28関節の診察に基づくDAS(疾患活動性スコア)による寛解基準が使用されてきました。

 

このスコアが2.6未満(DAS28<2.6)であれば寛解であるとされてきました。

しかし、DAS28<2.6であっても、特に腫脹関節が残存している場合は、関節破壊の進行を完全には止められないことが分かってきました。

たとえば、メトトレキサート(MTX)治療後1~2年後の関節破壊進行は、DASやDAS28寛解の達成如何に関わらず、両群間に差はありませんでした。

 

すなわち、DAS28による寛解基準は「甘い」ため、関節破壊の進行を止めるために有効な、新しい寛解基準が必要とされ、新しい臨床的寛解基準が発表されました。そのため、DAS28のカットオフ値である2.6を2.0へ切り下げる変更ではなく、CDAI(腫脹関節数、圧痛関節数、医師全般評価ならびに患者全般評価の総和)や、これにCRPを追加したSDAIあるいはBoolean基準(先述の4項目がいずれも1を切る)の3つが新しい寛解基準として満足すべき指標であることが提案され広く用いられています。

 

 

杉並国際クリニックの見解
関節リウマチ(RA)の疾患活動性を日常診療で反復して客観的に評価することは、これまでも容易ではありませんでした。

 

疾患活動性のスコアが寛解の指標になると考えることは自然であり、これまでDAS-28(CRP)を有力なツールとして長く用いてきたのですが、どうやら賞味期限切れのようです。

 

その理由は、関節リウマチ(RA)の治療の進歩により、関節リウマチの関節破壊の進行が抑制できるようになってきたことによるものです。

 

それで明らかになってきたのは、これまでの疾患活動性の指標では関節リウマチの関節破壊の進行抑制の指標にならない、つまり、関節リウマチ治療の質を向上させる上で限界があるということになります。

 

こうした背景を受けて、杉並国際クリニックは、どのような診療選択をしていくべきなのかについての見解を、明日明らかにしたいと思います。